BUMP OF CHICKEN 『orbital period』
昨日の記事で「詩」についてちょっと考えてみましたが、書いてみてからやっぱりいろいろと迷うこともありました。そんな簡単に答えは出ませんよね。あたりまえです。
ただ、私にとって、こいつは真性の「詩人」だなと思わせる人がいることは確かです。私は音楽が好きなので、どちらかというと「歌詞」の中に「詩」を見ることが多い。たとえばこのバンプの藤原基央くんなんかかなりいい詩人だと思います。彼の言葉にはいつも何かを発見させられます。そして、本来の「歌」…日本古来の歌ですね、言葉と旋律とリズムの一体になったメッセージのあり方を考えさせてくれます。
このニューアルバム、前作「ユグドラシル」が超名作だっただけに、そしてそこから3年以上も経っていることもあって、ファンの間でも期待や不安が高まっていました。実際、リリースされてから、聴いた人たちが語る語る(笑)、Amazonのレビューの数の多さは異常ですよ。つまり、みんな詩人になっちゃうんですね。それぞれのリスナーがみんな言葉を発したくてしかたなくなるんですね。そこが彼らの音楽や言葉の力だと思います。
私なんかは、もういい歳なんで、それなりにいろいろな音楽を聴いたり演奏したり、またいろいろな言葉に接してきたり、こうして書いたりしてきたわけですし、まあいちおう人生経験もいろいろと積んでいるしですね、彼らの若々しい叫びにちょっと恥ずかしさを感じる時もあるんですけどね、それでもやっぱり魂が揺さぶられたり、なぜか涙が出てしまったり、頭で解釈しようとしたり、自分もこうやって表現ができたらいいなとか、いろいろと動き出すんです。
で、このアルバムです。この前、『メーデー』&『花の名』の記事の中で「なんとなく日常が生きにくいと思っている人、そういう意味では実は人生や世の中の本質をわかってしまっている人への応援歌」というようなことを書きましたね。全く偶然ですが、今回「才悩人応援歌」という曲が入っていました。その歌詞が彼ららしいですね。こちらで読めます。パラドクシカルな応援歌です。時々こういう厳しい言葉も吐く彼らですが、それがなんというか、こちらだけに投げかけられるんでなく、いっしょに痛みを背負ってくれるんですね。そしてまた優しい言葉に帰って行く。そんな大きな波のようなものが、彼らのアルバムの良さです。シングルでは味わえない大切な部分です。シングルの寄せ集めだとか、作品としてのコンセプトが見えないという方は、おそらくその本質を読み落としてると思いますよ。
そう、今回痛感したんですけど、彼の言葉って聖書的ですね。音楽的にもゴスペルっぽいし。実際藤原くんはブルーグラスやカントリーが好きなようだし、コード進行や演奏の形態にもその影響が聴いてとれます。
つまり、日本語と音楽による福音なのかもしれない。彼らの言葉や音楽に救われる人、勇気づけられる人、きっとたくさんいることでしょう。こういう、豊かだけれどどこか欠落感を抱いてしまう世の中で、なんとなく不安になったり、孤独感を味わったりする人たち…きっと自分もちょっぴりそういうところがあるんでしょうね…と苦しみや悩みを共有し、そして一緒に頑張って行こうと励ましてくれる、そういう言葉や音楽なんでしょうね。
おそらく藤原くんはそういうところを意識しているというか、自分自身もきっと何かの音楽や言葉にそうしてもらってきたんでしょうね。だから自分たちの音楽活動の意味もそこに見出しているんでしょう。商業的なことよりも、もっと深いところで歌い続けている彼らの姿勢には私も共感しますし、これからもずっとそういうバンドであってほしいと心から願います。
それぞれの楽曲については、もっともっと聴き込まないと語れません。何度も聴いて噛みしめて分かるのがバンプですからね。今日はとりあえず全体的な感想だけということで。とにかくいいアルバムであることは確かですよ。
Amazon orbital period
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