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2007.11.28

『爆笑問題のニッポンの教養 「この世はすべて錯覚だ~知覚心理学 北岡明佳」』(NHK)

Sakushi 何を信じればいいかシリーズ。昨日録画した「爆笑問題のニッポンの教養」を観ました。今回のテーマは「錯視」です。立命館大学で知覚心理学を研究する北岡明佳教授が登場しました。
 北岡さんの錯視のホームページをよく見ていましたので楽しみにしていました。まず面白かったのは、北岡センセイのキャラが想像と全く違ったということ。私の勝手なイメージはそれこそ錯視であったのか。爆笑問題も何度もツッコミを入れてたりいじったりしてましたけど、なかなか動じませんでしたね。なんだか番組を見ているうちに北岡センセイが作り物に見えてきたのは私だけでしょうか(笑)。
 さて、北岡センセイも良かったけれど、今回もまた太田の天才ぶりに脱帽させられましたね。後半はほとんど彼の独演会でした。
 北岡センセイの「ある意味私たちが見ている世界は全て錯視で成り立っている」というような話を聞いて、太田は「自分の見ている世界は実は自分自身、私たちは自分自身という束縛から抜け出せない、そこにオナニー的な虚しさを感じる」というような哲学を語り出します。途中谷崎の春琴抄が出てきたり、山月記を思わせる自分の中の「猛獣」が登場したりと、明らかに北岡センセイの上空をぶっ飛んでいきます。
 北岡センセイはなんでも論理的に分析しようとするんですが(真面目なんで)、どうにも理解できていない状況です。なんとか説明にこぎつきますが、太田はさらにその先に進んで行ってしまいます。その時の北岡センセイの表情がなんとも可愛かった(笑)。この人はいい人だ。わからないことはわからないと言える人だ。
↓click!
Rotsnake まさに錯視のメカニズムが解明されないのと同じなんでしょうね。そこに厳然と「ある」太田の思考ですが、それが理解や日常や常識を超えている。しかし、何かそこに真実があるのではという予感だけは確か。それを処理し切れない北岡センセイの表情こそがこの世の善的真実だと思いました。
 私も思いましたけど、これは視覚だけの問題ではありませんね。我々は全てをイメージ化して捉えていますので、私たちの認知しているこの世界は全てニセモノであり、また、どれ一つとして他者と同じイメージを共有していないわけですね。しかし、それをそう考えてしまうと、我々は誰とも共感し合えなくなってしまいます。ですから、それを乗り越えてしまう「錯視」や「錯覚」や「幻想」や「妄想」という機能も持っているのが私たち人間です。
 そう考えてみますと、昨日、一昨日の話もまた違った捉え方ができるかもしれません。つまり、そうした人間の持っている機能、錯視の機能とイメージの共有機能を利用して、金もうけをしようとする人が今も昔たくさんいるということです。金だけじゃないな、権力とかもね。たまにバレるとそれが偽装とか捏造とか詐欺とか違反とかになる。つまり、我々は常に錯視の最先端で生きているわけです。ちょっと先に進めば谷底に落ちてしまうような、そういう共同幻想の崖っぷちを日夜さまよっているんですね。
 そういう崖っぷちの意識を忘れているとバカな目に遭い、あまり意識しすぎると鬱になったりする。どちらにしろ落ち込んじゃうわけですな。そのへんのかじ取り加減こそが処世術であり、唯一の幸福への現実的方策なのかもしれません。あとはそういう面倒くさいことを楽しめるかどうかですね。それを楽しめないと、それこそ八方塞がり、自分の居場所はなくなってしまいます。面白いですね。そんなことを考えていると、私には金も宗教も科学も、別にそれほど重要ではなくなってくるのでした。

「爆笑問題のニッポンの教養」公式

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コメント

clickして絵を見てみたら、私と上の娘は、動いて見えましたが
下の娘は、うごいてないよ! とのこと。20人に一人は
錯視しないということでしたね、身近にいても信じられないくらい
自分には動いて見えるけど。。

投稿: 庵主セコンド | 2007.11.29 19:44

ああ、そうなんだ。
下の娘は20分の1なんだ。
たしかにちょっと違うな、あれは。
もしかすると、大人になると動いて見えるとかね。
北岡先生も言ってたけど、経験が文脈を生んじゃうと。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.11.30 12:51

北岡先生が『錯視入門』(朝倉書店)という本を出しましたね.買ってみましたが,綺麗で面白かったです.

投稿: 錯視マニア | 2010.08.03 13:00

錯視マニアさん、情報ありがとうございます!
北岡先生のあのキャラも含めて、私は「錯視」が大好きですから、この入門はぜひとも買わなければ!
さっそく注文してみます。
教材としても使えそうですし。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.03 17:09

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