『ピアノの詩人ショパンのミステリー』(NHK ハイビジョン特集)
仲道郁代さん親子がショパンのルーツを訪ねる「ピアノの詩人ショパンのミステリー」を観ました。放送は昨日でした。
ショパンはけっこう好きな作曲家です。彼の作品にアジアを感じるんです。演歌と言ってもいいかも。私はカツァリスによるこのレッスンを観て、そしてオリジナル楽器によるこのCDを聴いてすっかりショパンに魅せられてしまいました。それまではそれほど興味はなかったんですけどね。
私は趣味で古楽器やったり、本職で古い日本語学なんてやってますので、根っからのオリジナル(原典)主義なんですね。主義というとちょっと堅苦しい感じがしますね。ただ、当時の音や質感や空気に憧れてるだけなんです。作者本人はどういう音を聴いていたんだろう、どういう演奏をしたんだろう、どういう気持ちで書いたんだろう…そういうのに異様に興味があるだけです。それを調べたり試したり想像したりするのが好きなんです。
そんな私ですから、今回の番組の企画は興味深いものでした。仲道さんがプレイエルの音やオリジナルの楽譜に出会う旅なんですから。カツァリスのレッスンで私が驚いた、ショパン自身の繊細な指使い(ほとんど異常とも言える)や、Olejniczakの演奏で感激したプレイエルのあの高音も登場しましたよ。
なんかいつも思うことですけど、近代以降の我々が工業化と市場経済の中で失ったものは、まさに「繊細さ」ですね。そして「響き」。音量 (エネルギー)と安定を得たかわりにその二つを失った。これは象徴的であって、もちろんピアノにあるいは音楽に限ったものではありません。
仲道さんがプレイエルを実際に弾いて、ショパンのペダルを離す記号の位置が異様に早いことや、不思議な運指の理由がわかるシーンは、「ほらね」という気持ちで観ていました。はっきり言ってしまいますと、そういう想像や努力を怠っている音楽家が多すぎるんですよ。最終的にピリオド楽器に行くかモダン楽器に行くかは別として、いずれにせよ知っていなければならないことだと思うんですけど。源氏物語を原文で読むのと同じです。それも活字になったものを読むか、写真版でもいいから古い写本を解読するか。最後はやっぱり現代語訳で読もう、でもいいんです。
後半イブ・アンリさんが登場しました。彼は今月来日し公開レッスンを行いました。その模様はこちらにレポートがあります。へえ、イグナッツ・プレイエル生誕250年、プレイエル社創業200年なんだ。知りませんでした。
ちょっと話が飛びますけど、ヤマハがベーゼンドルファーを買収するというニュースが流れていましたね。もちろんベーゼンドルファーはモダンピアノの製造会社ですが、なんとなく寂しい話ですね。ヤマハも優れたメーカーだと思いますが、いわゆる「繊細さ」ピアニッシモの美しさにおいてはベーゼンドルファーの方が勝っていたと思うのは私だけでしょうか。ま、素人の感覚ですけど。
ピアノを弾けない私、カシオのエレピしか持っていない私が偉そうなことを述べてしまいましたが、まあ現代のピアノを飛び越えて、フォルテピアノなんかは人より触っている方だと思いますので、お許しを。
それにしても、この番組で一番心に残ったこと。仲道さんもいつのまにかいいお母さんになりましたなあ、ってこと。娘さんとの心温まる触れ合いに感動しました。
NMLでプレイエルによるショパンを聴く(短調の曲ばっかりだな)
プレイエルによるショパン(他)の録音は、私も音楽祭でお世話になっております小倉貴久子さんのこちらがおススメ。
Amazon ノクターン~ショパンの愛したプレイエル・ピアノ
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