『ナノかわゆす・ピコかわゆす』
忙しい中頑張って出したこのCDもなかなかの売れ行きだとか。ちょっと生徒に聞かせてもらいましたが、それなりに歌もうまく、ああこの人はいろんな意味で「タレント」がおありだな、と40過ぎたオヤジは思うのでありました。言うまでもなく彼女、ヲタクの中のネ申的存在であり、またカリスマ的ブロガーでもあります。
さて、そんな「しょこたん」こと中川翔子たんでありますが、私が注目しているのは彼女の生み出す言語であります。いわゆる「しょこたん語」ですね。
中でも代表的な言葉である「ギザかわゆす」はなかなか興味深いのであります。「ギザ」は「ギガ(giga)」の打ち間違いをそのまま使ったのだそうでして、まあ今風に言えば「超」、古風に言えば「いと」のような強調の副詞ですね。
「かわゆす」は「かわいい」ということで、単独では「カワユス」とカタカナ書きすることが多い。しかし、前に「ギザ」などのカタカナ語がつくとひらがな表記になるようです。これはなんとなく分かる。「ギザカワユス」よりも「ギザかわゆす」の方がいい。本当のところなぜかは分からないけれど、でもなんとなく分かります。
さて、もうあまりに当たり前のことで書くのも憚られますが、「ギザ」の本来の形「ギガ」にせよ、「カワユス」にせよ、2ちゃんねるから発した言葉ですね。2ちゃんにおける日本語の様態については、すでに多くの学者さんたちによって研究されている(はずです)ので、ここでは詳しく書きません(本当は書きたいが)。
で、先に「カワユス」の方について書きますけれど、しょこたんはこれを発展させて「カワユシ」という使い方もするんですよね。これはもう完全に古語返りであります。もちろん、「〜ス」という用法は単純に古語における形容詞の復権、すなわち語尾の「し」を「す」に読み替えたものではないことは、「カナシス=悲しい」「キモス=気持ち悪い」「ウラヤマシス=うらやましい」「ワロス=笑える」などの例を挙げるまでもなく明らかであります。しかし、紆余曲折を経たとは言え、しょこたんによって復元された「カワユシ」にせよ、あるいは若者語として一般化しつつある「なにげに」「さりげに」などの形容動詞連用形に類似する語群にせよ、それらが与えるイメージの中にある種のノスタルジーが含まれているのは確かなようです。2ちゃんでも多用される疑似歴史的仮名遣いなんかもその類ではないでしょうか。
次に「ギザ」です。このような強調の副詞は、日本語史上決して無視できないものであり、その変遷については既に多くの専門家によって研究しつくされている(はずです)ので、そちらに譲ります。こうした感嘆的な強調表現を憂える方々も多いのですが、では枕草子を見よ!「いと」だ「いみじう」だ「いたく」だ、やたらに出てきます(関連記事)。
「ギザ」は先ほど書いたように「ギガ」の誤表記なんですが、もう時代は「ギガ」を超えて「テラ」ですので、そちらもかなり使われるようになってます。つまり、こうして感嘆的強調語は、そのインパクトが逓減し、さらなるインパクトを持つ新語にその座を譲っていくわけです。つまり、感嘆的強調語の寿命は短いんですね。それこそが日本語史上の大きな流れであり、多くの副詞が消長した歴史そのものなのであります。
ま、それはいいとしてですねえ、突然ですが、今日はしょこたんに負けじと新語を考えてみたので、皆さん使ってみて下さい(笑)。
それはこの記事のタイトルにもした「ナノかわゆす」と「ピコかわゆす」であります。
今日、ウチのクラスのギャルどもに提案したら、かなり評判よかった。これ使える!これ使おう!はやらそう!って盛り上がってくれました。どうもヤツらの感性のある部分を表現するのに適していたようです。
つまりですねえ、感嘆的強調ばかりが彼女らの感情ではないということです。「ちょっと」とか「微妙に」とかそういう程度の表現も欲しているわけですね。「ちょっとかわいい」とか「とりたてて強調するほどではないけれど、普通ではなく微妙に惹かれる」とか。で、そんな時たとえば「なにげにかわいくない?」みたいな表現もあるにはあるのですが、そこまでは行かない、だけれど心には止まる、そういう程度を表すいい語がなかった。
そこに登場したのが、てか、私が生み出したのが「ナノ〜」「ピコ〜」であります(笑)。どうっすか?悪くないでしょう。もちろん「ギガ」とか「テラ」とかのパクリです。逆の発想。
「ナノワロス」「ピコウラヤマシス」…いいでしょ?音的にもなにげにナノかわゆす(笑)。
もう誰か使ってるかもしれませんが、まあいいでしょう。気にしません。言ったもん勝ちです。
ps 副詞としての「ナノ」も「ピコ」も科学の発展とともに消え行くのでしょうね。言葉の哀しいサガであります。
| 固定リンク
「ウェブログ・ココログ関連」カテゴリの記事
- 『北陸代理戦争』 深作欣二監督作品(2025.03.25)
- ブログに復帰いたします!(が…)(2025.02.02)
- 日本人は何を考えてきたのか…第9回「大本教 民衆は何を求めたのか」 (NHK Eテレ)(2021.01.19)
- 安藤美冬さんが発信再開!(2020.03.16)
- 感謝!600万アクセス突破(2017.06.11)
「音楽」カテゴリの記事
- AIで創る「新しいバロック音楽」(2025.05.14)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 『Baby, I Love You』by Suno AI v4.5(2025.05.07)
- 『Tokyo Jazz』by Suno AI v4.5(2025.05.04)
「芸能・アイドル」カテゴリの記事
- 佳子さま降臨(2025.05.16)
- 「超々広角」星空観賞用双眼鏡 Super WideBino36(笠井トレーディング)(2025.04.27)
- ホワイト社会?(2025.04.22)
- 小林一三『清く、正しく、美しく』(風々齋文庫)(2025.04.11)
- 綾小路きみまろ『爆笑スーパーミニライブ』(2025.04.02)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 岡崎市円山の神明宮と古墳群(2025.05.24)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 「ドアを閉めます」(名鉄)(2025.05.10)
- 能『杜若』(2025.05.01)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 地震と大相撲(2025.03.30)
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 文字を持たない選択をした縄文人(2024.02.14)
- スコット・ロスのレッスン(2024.01.12)
- AIは「愛」か(2024.01.11)

コメント