『ぼく、オタリーマン。』 よしたに (中経出版)
昨日に続き、「ぼく」シリーズ。これは、生徒に頼まれて注文しました。2を予約したら、なんだか手ぬぐいがもらえるらしい。オタリーマンの手ぬぐいってなんなんだ?
だいたいオタリーマンに共感する女子高生というのも不思議なものです。届いた2を読んでたら、彼女に「私より先に読むな!」と怒られて奪い取られました。代わりに1を貸してくれたのですが、なぜか時間制限がありました(笑)。
まあいちおう時間制限内に読み終わりましたよ。他愛のない短編マンガが続きます。別につまらないわけではないけれども、ゲラゲラ笑うタイプでもない。クスっとも違う。ああ、あるある…それだけでもないかなあ。なんだか複雑な気持ちになりました。あまりに自虐的なネタが続いて苦しいのも事実。
オタリーマンとは、もちろんオタクなサラリーマンのことですね。しかし、多くの人が感じているように、このマンガの主人公はアキバ系の純正オタクと言うより、理系のちょいオタなんですよね。だからでしょうか、ヲタぶりに力がない。そこがまずヲタを期待した人には肩透かしでしょう。で、結局ヲタのサブ属性である「暗さ、消極性、没交渉性、非社会性」がネタになってしまうんですね。簡単に言えば「人とつきあうのが苦手」というヤツです。
1は40万部以上売れたといいます。そんなこの本がこれだけ売れたというのは、世の中にこういう人がたくさんいることを表しています。つまりちょいオタで人嫌いな人がたくさんいるんです。というか、人嫌いだからオタクになるのかな。もちろん私もそうです。人といるより一人でいる方が断然楽しい。好きなコトやってるのは幸せであり、他人に合わせてニコニコしたりするのは疲れる。
私が知る限り、実はそういう人種の方が多い。しかし、世の中を動かしたり、表面に出てきて華やかに動き回るのは、その対極にいるような人が多いので、なんとなくオタクは小さく暗くなりがちです。まあ、その分聖地に赴いたりすると、異様に声が大きくなり満面の笑みになるんですけどね(笑)。学校や家庭や政府も、どうも明るく元気にみんなでということを押しつけがちです。で、一方で「電車男」みたいにメジャーデビューして勝ち組になる裏切り者も現れたりする。オタクもやっと日の目を浴びるようになった、なんて喜んだ人もいたでしょうけど、結局それはヒミズ的結末の呼び水に過ぎませんでした。
とにかく、このマンガに共感する人がたくさんいたわけですよ。まあいちおう仕事もちゃんとやっていて、決してニートやひきこもりやパラサイトではない、でも会社に付随するであろう社会性には違和感を持ち、また彼女もいない、しかし一方で、妙な寂しさも常に感じていて、実は気兼ねなく話せる友人や同僚もほしいし彼女もほしい、というある意味とってもワガママな人がたくさんたくさんこの日本にはいるのでした。
このマンガが賛否両論なのは当然です。ただ、賛にせよ否にせよ、とにかくこれを手にとって読もうとしたということは、そこに期待や興味があったからであり、彼らの根っこの部分は全く同じなのです。ただ、結果として、それに共感共振する自分に「いとおしさ」を感じるのか、それとも「しっかりしろよ」と思うのかの違いだと思うのです。ちなみに私はその両方でした。
いずれにせよ、これこそ日本人の「もののあはれ」なんですよね。いつかも書いたように、「萌え=をかし」すなわち「コト」を極めようと時間も空間も微分していくオタクたちの逢着点は、皮肉にも思い通りにならない「モノ」なのでした。切ないなあ…。
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