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2007.09.01

『障害者プロレスが教えてくれた~脳性まひ・植木里美さん~』(NHK教育 きらっといきる)

障害をさらけ出す闘い
Orochi2 理解できない方もいらっしゃると思いますが、私は障害者プロレスの世界が好きです。いろいな問題があるのを承知で言いますが、こういった「見世物」文化の衰退、いや隠蔽から、たとえばいじめなどの現代の諸問題が発生しているとさえ思っています。
 ここでいう「見世物」という言葉には「負」の要素はありません。もしあると感じるとすれば、それはあなたの心の中にあるのです。
 ご存知の通り、「大相撲」もある意味「障害者」の「見世物」でした。往年のプロレスは言わずもがなその正しい系譜上にあります(最近はあまりに一般人が増えてしまったけれど)。以前に紹介した「小人プロレス」の世界は、まさにパラダイスでした。そうした(障害者ではなくて)ラッキーマン・スペシャル・パーソンたちの自己表現の場、いや仕事の場さえ奪っているのが、私も含めた「健常者」という心の障害者たちなのです。皮肉なことです。馬鹿げたことです。
 今日観た「きらっといきる」の再放送には涙が出ました。いや、安易な感動の涙じゃないですよ。なんていうかなあ、やっとNHKか取り上げてくれたって感じかなあ。よくぞやってくれた。
 実はちょうど数日前に、古〜いVHSビデオ(1992年くらいかな)を引っ張り出してきて観ていたら、筑紫哲也のニュース番組で「ドッグレッグス」を採り上げたコーナーが録ってあったんです。あれは、北島行徳(アンチテーゼ北島)さんが障害者プロレスというのを始めた頃でしょうかね。テレビでその映像が流れるだけでもけっこうインパクトがあったと思います。私も思わず録画をしたのでしょう。あっこれだ!と思ったに違いありません。
 懐かしいビデオを観ていたそこに、たまたまカミさんがいたんですが、彼女何か苦しげにこう言いました。「ごめん、笑っちゃっていい?」と聞きながら。私は当然「笑っていいとも!」って言いました。その理由はあの小人プロレスのドキュメントで小さな巨人たちが語っているとおりです。笑ってもいいし、感動してもいい。あるいははがゆく思ってもいい。プロとしてだらしないと罵声を浴びせてもいい。ただいけないのは、無責任に「かわいそう」とか「ひどい」とか「不謹慎だ」とか言うことです。
 古いビデオをめぐってそんなことがあった矢先でしたので、この番組の再放送を観ることができたのは本当にラッキーなことでした。この番組の中で脳性マヒを抱える植木里美さん(レスラー遠呂智)が語っていることはあまりに(不適切ではなく)適切です。あまりに真実であり、それを直視できず、自分すらごまかしている私たちに強く響くものでした。特に健常者との距離に悩む彼女が、北島さんの書いた本『無敵のハンディキャップ—障害者が「プロレスラー」になった日』に出会った時のことを語った言葉は重い。ある意味「きらっといきる」を含めたNHK的福祉番組風世界へのアンチテーゼです。
「“これだ”と思いました。苦痛とか苦悩とか強さへのあこがれとか、全部ひっくるめて、自分を発揮できて、それを正当に評価してもらえる場所は、きっとここしかないって思ったんです」
「障害者の表現というのは、非常にきれいなイメージがあって、例えば歌だと、右へ倣えで、みんな、そういう歌ばっかり歌っている。でも、障害のない人って、いろんな歌を歌っているじゃないですか。激しい歌とか、いろんな歌がある。だけど、障害者の表現だと、なぜか優しい。なんで障害があるだけで、制限されなきゃいけないんだろう?って思っていたら、(この本で)障害者プロレスに出会って、“あっ、やっぱりこういう表現もあっていいんだ。うらやましいな”って…」
 北島さんも、あえて障害者の世界、福祉の世界のドロドロ、ある意味鬱屈したものの中から生まれる汚さを暴露していますね。私も基本的に臭いものにフタ的な、偽善的な世界、つまり逆差別の横行する世界が大嫌いです。私に習っている生徒たちはよく分かると思いますけど、私は、自分に対しても、他人に対しても、常に「障害」をさらけ出すよう演出しています。私たちは誰でも「障害」を持っています。あなたの心は本当に健常ですか?私はそうとう心にも体にも顔にも髪の毛にも障害を持ってますよ(笑)。
 さらけ出したくない人はもちろんそれでかまいませんし、実際私は「構わない」わけですが、徐々にそういう方向に、すなわち解放の方向に持っていくようにしています。大きなお世話だと言われてもけっこうです。それが私の仕事だと思ってますので。
 なんとなく興味を持った方、あるいは違和感のある方は、ぜひこの番組を観てください。3日と7日にも再放送されるようです。またはこちらで観ることも出来ます。とにかくNHKグッジョブでしたよ。
 頑張れ!レスラー遠呂智!頑張れ!社会福祉士をめざす植木里美!オレも趣味と仕事両方がんばるぞ〜!

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コメント

ウェブ上での放送拝見しました。
正しくジャッジされる場所に自ら出て行き、
真っ向勝負している彼女の姿にいろいろ考えました。
どんな生き方をしていても、生かされてるということを忘れたくないです。
ありがとうございました。

投稿: くぅた | 2007.09.03 20:11

くぅたさん,こんばんは。
本当にいろいろ考えさせられましたね。
誰しもなんらかの意味でスペシャルで、普通とか正常とかいうことはないんですよね。
スペシャルてあることを隠すのはホント疲れます。
スペシャルであることをさらけ出して自然な社会こそ、普通で正常なのでしょう。
それに比べて「美しい国」とか、噴飯ものですよね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.09.03 21:14

 誰しも変態かつ障害者である! と、ことある毎に発言してきた私ですが、そのネガティブな響きに多少違和感(いや、ネガティブで良いのですけれど、それだけでは何か足らない感じ)があったのは事実でした。ま、大抵は上からものを言うような奴(ら)に対し、皮肉を込めて使っていたので良いっちゃ良いのですが、もうちょっとポジティブ要素のある言葉が欲しかったところ.....ふむ、“スペシャル”って表現良いかも! でも欲を言えば、意味合いにダークな要素の割合がもっとあると、皮肉屋の自分には最適なんですがねぇ。(^_^;)

 ここでプロレスの話が出るたびに何度か書こうかと思っていたことがあるのですが、眠くなったので明日改めてレスしよっと!

投稿: LUKE | 2007.09.04 00:46

LUKEさん、こんちはっす。
昨日教室で生徒に「みんな障害者だろ!?みんな変態だろ!?」って言ったばっかりだったので、あまりにナイスなタイミング(笑)
まあスペシャルくらいにしときましょうよ。
じゅうぶん皮肉も入ってますよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.09.04 11:01

>こんちはっす。

“わ”撲滅委員に対するお気遣い感謝です。(な~んて)

>あまりにナイスなタイミング(笑)

 共時性ってやつですかね。(笑)全然話が違うようですが、昔居酒屋でバイトをしていた時、その日に限って普段あまり出ないメニューが、繰り返し注文されることが偶にあって、不思議に思ったことがあります。伝わりにくいかもしれませんが、かなり不気味なものです。様々な人に同じ行動を起こさせるような何かが、事象となって現れた気がしてなりませんでした。

>まあスペシャルくらいにしときましょうよ。

 これからは積極的に使わせていただきます。
 ところでプロレスの話なんですが、思ったより膨らんでしまい、最後まで書ききれませんでした。orz もうちょっと頑張ります。

投稿: LUKE | 2007.09.05 03:58

LUKEさん、おはようございます。
こんちはっす…なんか違和感ありますが、こんちわっす…も違う気がする。
まったく日本語は面倒ですね。
シンクロしちゃうってのはけっこう世界中で頻繁に起きているんではないでしょうか。
みんな気づいてない。で、たまにこうして気づく場合があると。
なんか、神様とかが仕事をめんどくさがって、まあいいや、こことここは一緒で、どうせバレないだろうみたいにやってんじゃないでしょうかね。
私はそうやってよくバレます(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.09.05 09:13

 遅れに遅れ、この記事に対するコメントが完成したのですが、文面が膨れに膨れ、ここにレスする事を断念。大幅に書き直し、自身のブログの記事といたしました。(たまには更新しなくちゃね。)

>まったく日本語は面倒ですね。

 同感です。

>私はそうやってよくバレます(笑)。

 視野が狭くなりがちな生徒さんたちのお年頃には、大人のザックリした所を見せてやるのも良い勉強になるかと。おっと、中学で学んだ先生の言葉を思い出しました。ある生徒が、
「ここんとこ、適当でいいの?」
と、先生にたずねた時、
「ええ、適当ならいいですよ、不適当ならダメですが。」

投稿: LUKE | 2007.09.13 14:30

 あう! 私の方の記事を修正した際、こちらへのトラックバックが被ってしまいました。申し訳ないっす。

投稿: LUKE | 2007.09.13 17:03

LUKEさん、こんばんは。
いろいろとありがとうございます。
素晴らしい記事もありがとう!
そうなんです。
分かっててだまされるのって、ものすごく高度なことです。
動物には無理ですね。
神話的世界を捨てたくないですね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.09.13 19:23

 私のブログの方にも、コメントありがとうございます。開店(?)休業中のあちらにコメントを返すより、こちらが適切と判断しました。

>素晴らしい記事もありがとう!

 そう言っていただけると有り難いのですが、読み返す度に書き直したくなる部分が増えて困ります。一番後悔しているのは、いかに馬場さんが“スペシャル”であったかということを、実際にその単語を使って表現できなかったことです。

>分かっててだまされるのって、ものすごく高度なことです。

 ロラン・バルト。どこかで聞いた名前だと思っていましたが、昔、絵画の先生の口からその名前が出てきた記憶が。自分は何処までも写実に描きたがるところがあって、非効率的であると注意されました。
「最小限の手間で最大限の効果を得よ。」
要するに極端な話、絵で人の表情を表すのにも、
(T_T) ←これや、(^_-) ←これでも
十分事足りるだろうと。実はそちらの方が高度なことなのだよと、記号論を交えて話してくれました。当時はなんだかよく分かりませんでしたが、今思えばもったいない話です。

投稿: LUKE | 2007.09.16 01:12

うわぁ,その絵画の先生すごいですね。
ロラン・バルトのプロレス論は面白いですよ。
こちらの記事を参考までにどうぞ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.09.16 21:26

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