『その時歴史が動いた 引き裂かれた村 〜日米戦の舞台・フィリピン〜』ほかいろいろと(NHK)
台風で仕事が早く終わり、予定外に時間が出来ましたので、夏休みに録りためてあった戦争関係の番組をまとめて観ました。
ざっと観たものも含めますと、「シリーズ証言記録 兵士たちの戦争 中国大陸打通苦しみの行軍1500キロ」、「鬼太郎が見た玉砕 水木しげるの戦争」「A級戦犯は何を語ったのか ~東京裁判・尋問調書より~」「日本の、これから 考えてみませんか?憲法9条」、そして昨日録画した「その時歴史が動いた 引き裂かれた村 〜日米戦の舞台・フィリピン〜」です。
いやはや、もうこれだけいろいろな立場から戦争を語られますと、いったい何が起きたのか、誰が正しいのか、誰が間違っているのか、さっぱり分からなくなってしまいますね。しかし、それが戦争の実態であり、ある意味こうしてまとめて観た方が良かったかもしれない。それぞれ単独で観たとしたら、きっと私はコロコロ変わる単純な感想と意見しか持てなかったに違いありません。
どれも辛く衝撃的な内容であったのは確かですが、最も強く心に残ったのは「引き裂かれた村」でしょうか。わかってはいたつもりですがね、あの戦争は日本とアメリカが戦ったというだけではなかった。その戦いの舞台となってしまったアジアの諸地域における悲惨な出来事を忘れてはいけません。
フィリピンは最も激しい戦闘のあった国です。アメリカの植民地にして重要な軍事基地であったフィリピンに、「大東亜共栄圏建設」を標榜しアジアの解放を謳う日本軍が侵出します。結果として110万人以上のフィリピン人が犠牲となったと言います。
そんな中、日本軍は、貧困層を中心としたフィリピン人反米部隊「マカピリ」を組織しました。一方、アメリカも富裕層を中心としたフィリピン人抗日ゲリラを組織しました。抗日ゲリラ活動に脅威を感じた日本軍は、マカピリを使ってゲリラ掃討作戦を展開しますが、それが一つの村を分裂させ、現在まで続くフィリピン人どうしの虚しい憎しみを生む原因を作ってしまったのです。
番組では、思わず目を覆いたくなるような実際の戦闘シーンや民衆どうしのリンチシーンの映像なども流されました。なんでこんなバカバカしいことを…と思いますが、きっと自分もあの時に生きていたら、あのような人間になってしまったことでしょう。それがとても虚しいのです。
憲法9条をめぐる激論を何時間鑑賞しても、どんなにまっとうな意見を若者や学者さんや小林よしのり(!)が述べても、また戦争体験者が述べても、結局私の心は虚しいままでした。いくら戦争はいけない!とか軍隊を持つな!とか持て!とか激論してもですねえ、そこには「自分」と「自分の身近な人」への感情しか感じられなかったんですよね。不謹慎かもしれませんが、結局みんな「自己」のために戦っているとしか考えられなかった。お国のためというのも、決して捨身なんかではなくて、自己の拡張としての国家のためでしかない。さかんに幻想としての国家みたいなことを言う人がいましたが、幻想でもなんでもないですよ。あくまで自分なんですから。敵国は他者。ただ、それだけです。
そういう意味では、その番組での論戦はまさに「自己」対「自己」の戦争の様相を呈していました。護憲軍対改憲軍みたいなね。アホらしい。話し合いで解決しようって言いますけど、皆さんこそ他者を受け入れられず、プチイデオロギー戦争を起こしてるじゃないかと。そういう意味では見事な行司、いやプロレスにおけるレフェリーかな、そういう交通整理役を果たしていた三宅アナとあくまで冷静な陶子さまに、私は世界平和のヒントを見ましたね(笑)。
世界平和と簡単に言うけれど、自己を世界まで拡張できるのでしょうか。そこがポイントだと思うんですよね。国家までは拡張できることが、さきの戦争で皮肉にも証明されてます。でも、それは世界へは拡張できないことの証明にもなっていますよね。それこそ皮肉です。もし、それができないんだったら、みんなでお釈迦さまになりましょうよ。本気で自分を捨てるってことですよ。自己も他者もない。不二。あなたはどちらを選びますか?私は後者をとりますが。
ああ、戦争について語るのは難しい。
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