スークのバッハ
Bach: Sonatas & Partitas Josef Suk
今日は23日のコンサートの練習で東京へ。途中パンクの現場を通りまして、妙に緊張。
で、ちょうどその頃カーラジオから鳴っていたのが、この演奏でした。それが感動的だったんですよ〜。スークの無伴奏初めて聴きましたけど、いいですねえ。素晴らしいバッハでした。これはNHK-FMの「20世紀の名演奏」という番組でかかったものです。
1970年代の録音でしょうか。スークは当時、今の私くらいの年齢だったのではないでしょうか。そういう意味でもすごいなあ。ここまでバッハと純粋に向かい合えるかなあ、今の自分。無理だ(当たり前)。
で、で、さっそく脱線してしまいますが、この前の番組「ミュージックメモリー」も面白かったっす。平尾昌晃さんがゲストで、いわゆる歌謡曲の皆さんが民謡とどう関わったかを紹介する番組でした。以下のような曲が紹介されました。
「五木の子守唄」(晴海洋子)
「五木の子守唄ロック」(平尾昌晃)
「津軽じょんがら節」(寺内タケシとブルージーンズ)
「ロック“おてもやん”」(平尾昌晃)
「おてもやん」(ザ・ピーナッツ)
「おてもやん」(市丸)
「さのさ」(江利チエミ)
「江差追分」(三橋美智也)
「南国土佐を後にして」(ペギー葉山)
「ロック“島原地方の子守唄”」(平尾昌晃)
昨日の記事ではありませんが、古いものと新しいものを組み合わせる難しさと面白さですねえ。もちろん純正民謡の方々からは、「こんなの民謡じゃない!」と言われたことでしょう。しかし、そこに生まれる化学反応と言いますか、そういう新しい世界はそれなりにすごい。みんなとにかく上手いし。
そして、いきなりですが、スークです。久々にモダン楽器によるバッハをじっくり聴きました。自分も一時期オリジナル楽器原理主義者みたいになってたんですが、この無伴奏に関しましては、なかなか感動する古楽器盤がなかった。以前紹介したエレーヌ・シュミットのが一番良かったかな。それでも、なんとなく物足りないような気がしてたんです。
で、よく考えてみますと、バッハの無伴奏ってものすごく抽象的な作品でして、晩年の作品もそうですけれど、バッハ自身はもう楽器がどうこうとか、そういう次元を超えた作曲をしてるんですね。もちろん、無伴奏に限らず「制約」という意味では楽器は意味はありましたが、それはあくまでもバッハにとって「積極的な制約」であって、まあ和歌とか俳句の形式みたいなもんですかね、「不自由の中の自由」のためのものなんですね。
特にご存知の通り、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、ヴァイオリン1本でフーガをやったり、もうメチャクチャな発想の作品なんです。そうした制約の中での挑戦を楽しんでいたフシがあります。もちろん実際演奏できるわけですけれど、おそらくバッハの頭の中ではパイプオルガンのような音が、いやなんだかわかりませんがとっても抽象的な音が鳴り響いていたんじゃないでしょうか。
今回、スークの演奏を聴いてそんなことを思いました。もしかすると、バッハ自身はバロック・ヴァイオリンによる演奏よりスークの演奏の方が好きかもしれない。それほどスークの演奏は抽象度が高まっていました。もうバロックの語法がどうとか、そんな次元の音楽じゃない気がしたんですね。
スークはまるでパイプオルガンのようにヴァイオリンを鳴らしています。ある意味非常に平坦な音を出している。ロマンチックなところから、つまりヴァイオリン的なところから、とっても遠いところで演奏している。もう、とにかくバッハの書いた楽譜をできるだけ忠実に音にしようとしている。この表現はバロック・ヴァイオリンでは絶対ムリです。
これもまた、古いものと新しいものの幸福な出会いの一つの例なのかもしれません。もちろんオリジナル主義というのも価値がありますけれど、あまりそこにしがみついているのもいかがなものか。とりあえず私たちは「今」の人であるわけですし。昨日のコンサートでもそういうことが語られてましたし、平尾さんもそういうことを言っていました。もともと日本人はその両方のやり方を自然に共存させるのが得意な民族ですしね。古いものそのものを愛でるのと、どんどん新しいものを取り入れるのと。
今日聴いたのはパルティータの2番、有名なシャコンヌを含む作品でした。そのシャコンヌが本当にすごかった。ゆったりしたテンポで一つ一つの音符を非常にていねいに具現化していました。久々にこの曲のすごさを体感できた気がします。ぜひスークの演奏で全曲聴いてみたいですね。フーガの楽章なんかすごそうだなあ。さっそく探してみます。
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