『せかいでいちばんつよい国』 デビッド・マッキー/なかがわちひろ (光村教育図書)
先に言っとこ。これ、逆説的おススメです。
今日は1ヶ月ぶりくらいの完休…かと思ったら、なんかとっても大事な用事が入っていました。私は完全に忘れていました。
地元の図書館でのイベント「パパの絵本タイム」に参加することになっていたんです。つまり、図書館に集まった子どもたちに絵本の読み聞かせをしなければならなかったんですよ。うわぁ〜、聞いてないよう。えっ?なんの本読めばいいの?
当日の朝こんな感じですから困ったものです。結局私はものすごくシンプルな絵本を担当することになりましたので、いろいろと演出を加えまして、どちらかというと得意のお笑い系に持っていってしまいました。まあ、ウケたからいいか。
ほかに二人のパパさんが一緒だったんですけど、お二人とも小学校の先生でいらした。さすが子どもの心をつかむのがお上手でしたね。ちなみに私、そのお一人の読み聞かせに即興で音楽をつけるという役もおおせつかりまして、ぶっつけ本番でキコキコやりました。テレビカメラも回っていたので、妙に緊張したなあ。
さて、その後反省会と称した飲み会がありまして、そこでとんでもないビートルズマニア(コピーバンドのジョージ役担当)の方と知り合い、意気投合してカラオケでビートルズ歌いまくりという、なんとも予想外の展開になりました。いやあ、ものすごいわ。ちょっとついていけないくらいのマニアであります。私も勉強しなおさないと…。
さてさて、そこから無理矢理本日のおススメに持っていきます。ビートルズと言えばイギリス。イギリス、ビートルズと来れば、アイロニーですよね。で、アイロニカル、シニカルなイギリスの絵本と言えばこれでしょう。「The conquerors」。
これがですねえ、なんと小学2年生の課題図書なんですよ。これを読んで感想文を書くというのが、娘の宿題の一つなんです。で、とりあえず買ってみた。で、それこそ娘に読み聞かせたんですが、途中でこれはやばいぞ、これを課題図書にするというのはどうなんだ?と思い始めたんです。
この「The conquerors」、日本版ではタイトルが「せかいでいちばんつよい国」になっています。まず、ここに非常な違和感を抱きます。絵本に限らずこういうことはいくらでもありますが、これでは全然違う読みを要求することになりますよねえ。
内容的には非常にシンプルです。ネタばれになってしまうので、あんまり書けませんが、まあアメリカの横暴をイギリス人が皮肉ったものと言えるでしょう。軍事的征服者が文化的には征服される立場になる、というパラドクシカルなオチ。たしかに、今のアメリカを見ても、たとえば黒人文化に半分は征服されてますね。音楽とかスポーツとか。それだけでなく、あらゆる面でアメリカ的でないことこそアメリカ的ですよね。世界をアメリカにしようとしたら、アメリカが世界になるという逆説。
この絵本はそういうことを表現しているとしか思えないんですが、そんなこと小学生には分かりませんよねえ。少なくともウチの娘には分かりません。
「せかいでいちばつよい国」というタイトル、そして学校の課題図書ということになりますと、当然違う読みが要求されます。実際、日本版の感想や、課題図書紹介の文には、「大きい国と小さい国、どちらが本当に強い国だったのでしょう」みたいな、あちゃちゃな文が並んでいます。小学校の先生的にはそういう感想文を期待してるんでしょうね。
それはそれで別にいいんですが、大人の事情で著者の意図が曲げられるのには、私はちょっと抵抗があります。
というわけで、どうせなら英語版を買って読んでみようかな。
ビートルズカラオケから帰ってくると、ちょうどBSアニメ夜話スペシャル 「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」が佳境に入っていました。もう、みんな語る語る。めっちゃ面白かったんですけど、ここでも制作者の意図を完全に越えた妄想的解釈が暴走していました。それこそがまさに「物語」の基本的な性質なんでしょうね。だから、絵本もいろいろな解釈があって当然です。でもなあ、子どもを洗脳するのはなあ…。
Amazon せかいでいちばんつよい国
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