(真説)あさましきもの
さて、昨日の興奮も冷めやらぬまま、早朝に秋田をあとにしまして、山形、新潟、長野を巡って富士山に帰ってまいりました(ちなみに家には帰らず卒業生との飲み会に直行でした)。この行程、いつかも書きましたが、途中多くの巨大ネットワークデバイスを経由します。鳥海山、出羽三山、妙高、戸隠、皆神山、そして富士山です。そうした山々を眺めながら今回のみちのく四人旅を復習いたしましたが、今回もまたいろいろと奇跡的なことがあり、ますますWeb0.0の存在を実感することになりましたね(何言ってんだか分からない人も多いでしょうが、すみません、実感なんで…)。
ところで、今日の早朝ペルーで大地震がありまして、地球の裏側にあたる日本にも津波注意報が発令されました。また、今日は北陸道を通って帰ってきたのですが、ちょうど1ヶ月前の中越沖地震の傷跡が生々しく残っており、びっくりしました。倒壊した家屋やブルーシートで屋根を覆った家屋が車窓から多数見られましたし、なにしろ北陸道の路面が、刈羽や柏崎のあたりでは本当にグニャグニャに歪んでいるんですよ。ものすごいエネルギーが働いたのだなと思いました。とてもスピードを出せる状況ではありませんでした。ゆっくり走ってもかなり車が上下に揺れ、左右に振られます。ニュースによれば、まだまだ避難所生活を強いられている方々がたくさんおられるとか。現地を走りながら本当に心が痛みました。
こうした天災、特に大規模な地震は、荒ぶる神の仕業、神の怒りだと考えるしかありませんね。人間なんか本当にちっぽけな存在です。ああいう大きな構造物も、あっという間に破壊されてしまう。抗ってもどうしようもありません。また、地球の裏側から、あの膨大な量、ほとんど人間の感知しえないほどの量の海水を揺り動かし、押しつづけ、津波がやってくるわけです。いったいどんなエネルギーなのでしょう。もう、人はひれ伏すしかありません。
そうした「あさましき」「もの」を鎮めるための祭が、全国で行われているわけです。今ではそれが観光化し、人間のため、場合によってはお金のためになってしまっている部分もありますが、基本は神々に対するご機嫌取りなんですね。何度も言いますが、そういう自分の思い通りにならない、自分の意識や意志の外側にあるものを我々は古来「モノ」と呼んできたんです。浅間神社とか浅間山とかの「あさま」は「あさまし」と同源で、「お手上げ状態」を指す言葉です。
さて、「あさましきもの」と言えば、皆さんも高校時代に古典の時間に勉強されたのではないでしょうか。清少納言の枕草子ですね。ちょっと見てみましょう。懐かしくありませんか?
あさましきもの 刺櫛すりて磨く程に、ものにつきさへて折りたる心地。車のうちかへりたる。さるおほのかなるものは、所せくやあらんと思ひしに、ただ夢の心地して、あさましうあへなし。人のためにはづかしうあしきことを、つつみもなくいひゐたる。かならず来なんと思ふ人を、夜一夜起きあかし待ちて、暁がたにうち忘れて寢入りにけるに、烏のいとちかく「かか」と鳴くに、うち見あげたれば、昼になりにける、いみじうあさまし。見すまじき人に、外へ持ていく文見せたる。むげに知らず、見ぬことを、人のさしむかひて、あらがはすべくもあらずいひたる。物うちこぼしたる心地、いとあさまし。
訳すまでもないと思いますが、ずいぶんと卑近な例を挙げているのが分かりますよね。この時代、特に宮中という都会生活の中では、女の人の「あさましきもの」はこんな程度でしょう。おしゃれ、車、噂話、恋愛、メール…今の女性となんら変りませんね(笑)。ただ、学校で教えるように「あさまし」を「おどろきあきれる」なんて訳すのはサイテーです。誰だ?そういうふうに訳し始めたの。意味わかりませんよ。ここでは「サイテー」って訳しましょう(笑…半分以上マジですが)。
で、もう一つ、有名な「あさましきもの」。こちらの方が不思議と原義に近いような気がします。同じ恋愛を扱っても、やっぱり男だからでしょうか。「やられた」って訳したいですね。
こちらからお読みください。あいかわらずうまい文です。ちなみに岡田時彦さんとは、岡田茉莉子さんのお父さまですね。
いずれにせよ、「あさまし」は「自分の意志ではどうにもならない」「時すでに遅し」「お手上げ」という意味だというこおとが分かりましたね。
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