フォルテピアノ
昨日感激したフォルテピアノですが、実は今、一日中目の前にありまして、誰かしら練習で弾いております。そして、たまに誰もいなくなった時は、ほとんど私のものであります。ここにありますのは、久保田彰さん作の楽器です。梅岡さんのお話によりますと、こういうタイプのフォルテピアノは、今まで日本にはほとんどなかったとのこと。また、オリジナルとしてもこういうものは残っておらず、チェンバロとの関係、当時の音楽的要請を考慮して、久保田さんが開発設計したとのことです。オリジナルは残っていなくとも、バッハの晩年から息子の時代のころ、クラヴィコードとチェンバロの発想を組み合わせたとも言えるこのタイプのフォルテピアノが生まれたのはたしかなようです。そしてこのタイプの楽器が、その親とも言えるクラヴィコードとチェンバロと、いろいろな葛藤を生んでいたのではないか。ある意味そういうところから、あの前古典派の音楽が生まれたとも言えるのではないか。
実際弾いてみますと、またまた感動ですねえ。なぜ結果としてピアノがチェンバロより人気者になったか、今日よ〜くわかりましたよ。
昨日も書いたとおり、やはりピアノ(弱音)の魅力ですね。この楽器など、かなりの力で鍵盤を叩いても、やはり2段チェンバロより大きい音は出ません。しかし、その鍵盤を撫でるように指を動かしますと、それはそれは妙なる音がするんです。自分にしか聞こえてないんではなかろうか。そういう音です。自分が弾いている楽器なのに、自分が耳を澄ませている。これはちょうどクラヴィコードを弾いている感じに近い。そんな話を福沢宏さんともしました。指で聴くという感じです。
強く叩くと壊れてしまいそうな、そんな繊細な楽器を優しく優しく鳴らす時、私たちは、絶対に現代ピアノでは味わえない不思議な感覚に襲われます。それはそうですよね、ゲーム機のボタンを押すのと、赤ちゃんの肌に触れるのとでは、こちらの気持ちも当然変わってきます。
考えてみれば、現代ピアノの世界ではとんでもないことが普通に起きています。2000人規模のコンサートホールで鳴らす、あの工業製品、いや軍事機器のようなグランドピアノを、10畳くらいの部屋に持ち込んで、全力で爆発させてるわけですからね。異様な事態ですよ。
右の写真は、私のリクエストにこたえてくださりバッハの平均率を演奏なさる岡田龍之介さんです。さて、フォルテピアノのいいところは、タッチがとても軽いことと、やはり鍵盤の大きさが適度に小さいことですね。あの現代ピアノの鍵盤サイズが、日本人にとって全く意味のないものであることは有名な話です。というか、それ以上に子どもにあのサイズ、あの重さの楽器を弾かせること自体、ほとんど暴力です。まだエレクトーンの方がいいな。いや、ミニ鍵盤の安いキーボードでも弾いてた方がいいかも。フォルテピアノなら子どもでも弾けるでしょう。そして、繊細な指使い、力加減を体験することが、彼らにとってどれほど有用であるか。
現代ピアノもいいんですよ。たとえばジャズにおけるピアノは、やはりあれでいいと思います。しかし、何から何まであれで弾くのはどうかと。少なくとも、鍵盤を弾く方は、チェンバロやフォルテピアノを一度経験されると良い。それで、現代ピアノに帰るのは別にいいんです。私も、古楽器も弾きますし、モダンヴァイオリンもエレキヴァイオリンも弾きます。両方知ることで損になることなんて、一つもありません。
チェンバロやフォルテピアノは、そんなに安いものではありませんし、メインテナンスや調律(一日何度もしなくてはならない)はたしかに大変です。でもなあ、現代ピアノみたいに、自分の楽器を「調律できない」「持ち運びできない」っていうのも大変なことだと思うんですが(笑)。
せめて、クラヴィコードは一家に一台あってもいいんじゃないでしょうか。あれなら近所迷惑にもならないし、いろいろな表現法、たとえば発音後にヴィブラートをかけたり、音程をずり上げたりできますからね。そして、なんといっても、指から振動で音を聴くという感覚ですね。とりあえず、クラヴィコードかなあ。テュルクの言葉を思い出しました。
「この楽器(クラヴィコード)ほど繊細な演奏表現が良く修得できる鍵盤楽器は他にない。クラヴィコードと フリューゲル(フォルテピアノ)の両方を持つことができない場合には、クラヴィコードのほうを選ぶこと」
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コメント
先日、子供といっしょに行きました。そばをごちそうになって、展示場を少しのぞいただけですが。
このピアノ、18世紀ウィーンのモデルとはまた違った独特の音色がして、弱音ではよりいろいろな色がだせるように感じました。
投稿: 龍川順 | 2007.08.20 09:08
龍川さん、こんにちは。
ちょうどその時フリーコンサートの司会をしてました。
そうですね、タッチで音色が様々変わるのが面白いですね。
不均等だし、雑音もかなりありますが、それこそが魅力です。
本当にチェンバロにハンマー付けてみましたっていう感じでしょうか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.08.20 17:58