« 第22回都留音楽祭オープニング・コンサート | トップページ | PLC(高速電力線通信)アダプター »

2007.08.18

フォルテピアノ

Fortepiano 昨日感激したフォルテピアノですが、実は今、一日中目の前にありまして、誰かしら練習で弾いております。そして、たまに誰もいなくなった時は、ほとんど私のものであります。ここにありますのは、久保田彰さん作の楽器です。梅岡さんのお話によりますと、こういうタイプのフォルテピアノは、今まで日本にはほとんどなかったとのこと。また、オリジナルとしてもこういうものは残っておらず、チェンバロとの関係、当時の音楽的要請を考慮して、久保田さんが開発設計したとのことです。オリジナルは残っていなくとも、バッハの晩年から息子の時代のころ、クラヴィコードとチェンバロの発想を組み合わせたとも言えるこのタイプのフォルテピアノが生まれたのはたしかなようです。そしてこのタイプの楽器が、その親とも言えるクラヴィコードとチェンバロと、いろいろな葛藤を生んでいたのではないか。ある意味そういうところから、あの前古典派の音楽が生まれたとも言えるのではないか。
 実際弾いてみますと、またまた感動ですねえ。なぜ結果としてピアノがチェンバロより人気者になったか、今日よ〜くわかりましたよ。
 昨日も書いたとおり、やはりピアノ(弱音)の魅力ですね。この楽器など、かなりの力で鍵盤を叩いても、やはり2段チェンバロより大きい音は出ません。しかし、その鍵盤を撫でるように指を動かしますと、それはそれは妙なる音がするんです。自分にしか聞こえてないんではなかろうか。そういう音です。自分が弾いている楽器なのに、自分が耳を澄ませている。これはちょうどクラヴィコードを弾いている感じに近い。そんな話を福沢宏さんともしました。指で聴くという感じです。
 強く叩くと壊れてしまいそうな、そんな繊細な楽器を優しく優しく鳴らす時、私たちは、絶対に現代ピアノでは味わえない不思議な感覚に襲われます。それはそうですよね、ゲーム機のボタンを押すのと、赤ちゃんの肌に触れるのとでは、こちらの気持ちも当然変わってきます。
 考えてみれば、現代ピアノの世界ではとんでもないことが普通に起きています。2000人規模のコンサートホールで鳴らす、あの工業製品、いや軍事機器のようなグランドピアノを、10畳くらいの部屋に持ち込んで、全力で爆発させてるわけですからね。異様な事態ですよ。
Pianobach 右の写真は、私のリクエストにこたえてくださりバッハの平均率を演奏なさる岡田龍之介さんです。さて、フォルテピアノのいいところは、タッチがとても軽いことと、やはり鍵盤の大きさが適度に小さいことですね。あの現代ピアノの鍵盤サイズが、日本人にとって全く意味のないものであることは有名な話です。というか、それ以上に子どもにあのサイズ、あの重さの楽器を弾かせること自体、ほとんど暴力です。まだエレクトーンの方がいいな。いや、ミニ鍵盤の安いキーボードでも弾いてた方がいいかも。フォルテピアノなら子どもでも弾けるでしょう。そして、繊細な指使い、力加減を体験することが、彼らにとってどれほど有用であるか。
 現代ピアノもいいんですよ。たとえばジャズにおけるピアノは、やはりあれでいいと思います。しかし、何から何まであれで弾くのはどうかと。少なくとも、鍵盤を弾く方は、チェンバロやフォルテピアノを一度経験されると良い。それで、現代ピアノに帰るのは別にいいんです。私も、古楽器も弾きますし、モダンヴァイオリンもエレキヴァイオリンも弾きます。両方知ることで損になることなんて、一つもありません。
 チェンバロやフォルテピアノは、そんなに安いものではありませんし、メインテナンスや調律(一日何度もしなくてはならない)はたしかに大変です。でもなあ、現代ピアノみたいに、自分の楽器を「調律できない」「持ち運びできない」っていうのも大変なことだと思うんですが(笑)。
 せめて、クラヴィコードは一家に一台あってもいいんじゃないでしょうか。あれなら近所迷惑にもならないし、いろいろな表現法、たとえば発音後にヴィブラートをかけたり、音程をずり上げたりできますからね。そして、なんといっても、指から振動で音を聴くという感覚ですね。とりあえず、クラヴィコードかなあ。テュルクの言葉を思い出しました。
 「この楽器(クラヴィコード)ほど繊細な演奏表現が良く修得できる鍵盤楽器は他にない。クラヴィコードと フリューゲル(フォルテピアノ)の両方を持つことができない場合には、クラヴィコードのほうを選ぶこと」

不二草紙に戻る

|

« 第22回都留音楽祭オープニング・コンサート | トップページ | PLC(高速電力線通信)アダプター »

音楽」カテゴリの記事

コメント

先日、子供といっしょに行きました。そばをごちそうになって、展示場を少しのぞいただけですが。

このピアノ、18世紀ウィーンのモデルとはまた違った独特の音色がして、弱音ではよりいろいろな色がだせるように感じました。

投稿: 龍川順 | 2007.08.20 09:08

龍川さん、こんにちは。
ちょうどその時フリーコンサートの司会をしてました。
そうですね、タッチで音色が様々変わるのが面白いですね。
不均等だし、雑音もかなりありますが、それこそが魅力です。
本当にチェンバロにハンマー付けてみましたっていう感じでしょうか。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.08.20 17:58

はじめまして
現代ピアノの鍵盤サイズが、日本人にとって全く意味のないというの同感です。
手が小さいから届かないところだらけです。
質問があって、フォルテピアノは西暦何年くらいまでのものをいいますか?
ショパンの弾いていたピアノもフォルテピアノに入るのでしょうか?
エラールとかプレイエルとかです。
あと、鍵盤が適度に小さいとのこと、現在のピアノがオクターブ165mmですが、サイズを教えていただければ嬉しいです。宜しくお願いします。

投稿: 某学生 | 2009.03.16 14:24

某学生さん、コメントありがとうございます!
昨日の記事にも書きましたが、無意味な標準化は暴力ですよ。
ピアノの鍵盤はその最たるものですね。
フォルテピアノは一般的には19世紀の頭くらいまででしょうかね。
まあ、この名称は便宜的なものですので、あいまいなんですけど。
私のイメージでは、プレイエルが開発されて、初期ピアノ(フォルテピアノ)の歴史はいちおう終わったと思います。
結局工業化が進んだと言えるのでしょうね。
ちなみにプレイエルによるショパンのノクターンの音源をこちらに置いてあります。
鍵盤のサイズですが、いわゆるフォルテピアノは本当に多様です。
決まったサイズはありませんね。
私の少ない経験から言いますと、150ミリくらからあると思います。
現代の製作家に頼む時にも、ある程度自分で指定できるのではないでしょうか。
もっと正確な情報が必要なら、専門家を紹介しますよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.17 08:54

回答ありがとうございます。
「細かったらしいよ」って友達から聞いて
私「どれくらい?」
友「分からないけど…」
という会話をしながら下校したんです。
モヤモヤがとれてすっきりしました。きっと作ると高いんでしょうね。
名のとおり学生なので、あまりお金に余裕がありません><
ショパンやベートーベンも150mmくらいと認識しておきます。
やっぱり、というか、楽譜を見て薄々気づいていたんですけどね 。
ノクターンも聴きました、魅力的で素敵な演奏ですね。こういうピアノが全国どこでも売り出されてないのが不思議です。
詳しい詳細ですが、このブログ(かな)で「エラール○○mm、プレイエル○○mm、西暦○○年」みたいな感じで
取り上げる材料としてみてはいかがでしょうか?もし、よろしければですが…
私だけ、紹介されて知るっていうのも…きっと勇気のでる人も多くいると思いますよ。

投稿: 某学生 | 2009.03.17 19:05

某学生さん、どうもです。
なるほど、そうですね。
まずは私もいろいろと弾いてみます(ピアノは弾けないのですが…笑)。
演奏家や製作家に知り合いが多いので。
今年は、ベートーヴェンが弾いていたピアノも弾けるかもです。
そのたびに紹介できればいいですね。
ちなみに新作のお値段ですが、ピンからキリとはいえ、
グランドピアノよりはずっと良心的な価格ですよ、たぶん。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.18 08:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/16163859

この記事へのトラックバック一覧です: フォルテピアノ:

« 第22回都留音楽祭オープニング・コンサート | トップページ | PLC(高速電力線通信)アダプター »