くるり 『ジュビリー』
QURULI 『Jubilee gemischt von Dietz』
もう発売から1ヶ月近く経ってしまいましたが、けっこう好きなのでおススメしつつ、ツッコミを入れておきます。
くるりは、それこそ曲調がくるくる変るバンドで、それが売りとも言えますね。でも、ニューアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」を聴いた時はさすがにびっくりしました。おいおいシャレもいいかげんにしろよ、と。
もういきなりウィーンで録音とか、もうその時点でギャグと言えばギャグなんですけどね。なんでウィーンなんだよ(京都とウィーンってなんか全然結びつかない…って、今回初めて思った)。で、ウィーンだからって、この大仰なストリングスはなんじゃ!いわゆるファンの方は笑わないで感動されたようですが、これは笑うところでしょ。
これは私たち世代、特にビートルズやELOをよく聴いてきた人間にとっては、正直涙腺を刺激される音楽です。生々しいストリングスがロックに絡みついていく感じ、これはもうノスタルジーの世界ですね。それもなんというか、お行儀よく寄りそうのではなく、けっこうバチバチにぶつかって、しのぎを削って、けっこう木に竹を接いだようなところもあったりして、そこが中期のビートルズや初期のELOみたいな感じなんです。
今回はそのアルバムの中から、シングルカットされた『Jubilee』を聴いてみてください。こちらYouTubeでお聴きくださいませ。
ね?思わず笑ってしまうでしょ?コテコテです。第一、曲の入りのいきなりなディミニッシュ・コードの使い方もどっかで聴いたことあるし、サビにいたっては、これは何かと何かと何か、とっても有名な曲のメロディーを組み合わせてますね。それが何かどうしても思い出せないんだけど…。最初は「ムーンリバー」だよな、こりゃ。そのあとも絶対元ネタがあるんだけど、思い出せない。長い後奏…だいたい現代日本のシングル盤でこういう構成の曲というのも、すでにシャレですよね…この後奏については言わずもがなであります。
彼ら、今30歳くらいですよね。彼らくらいの世代にとって、こういう音楽というのはすでにクラシックなわけでして、それをこうして恥ずかしげもなく再生してくれますと、こちらとしては、それこそ恥ずかしいというか、いやちょっとうらやましいというか、なんとなくうれしいといいますか、でもちょっと「違うんだなぁ」と言いたいというか、複雑な心境になります。彼らはやりたいことをやってるだけなんでしょうけどね。
ちょうど、職場の机の上に「高校生新聞 京都特集号」というのが埋もれてまして、それを引っ張り出して眺めていたら、立命館高校・大学出身の彼らのインタビューが載ってました。「プロになろうと思ったのはいつごろから?」と聞かれて、彼らは「プロを意識したことはなかった」「よく『夢を見つけなさい』って言うけど、無理矢理見つけるのは難しい。それと同じで、プロになろうと思ってなれるものでもない。そこに足を踏み入れ、夢中になってはじめて夢はかなうものと思ってます」と答えています。高校生でもなんでもない私ですが、妙になるほどと思ってしまいました。
音楽界に限らず、最近の若者は、私たちの世代に比べて力みがなくていいですねえ。我々の頃は、とにかく「アイデンティティー」とか「自我」とか「僕って何?」とか「将来の夢」とか「無限の可能性」とか、なんだか実はないものを追っかけさせられたような気がするんですね。「無限の可能性」って無限だったら可能性じゃないじゃん!とか、今だったらツッコミを入れられますが(笑)。職場では、若者に絶対自分の価値観を押しつけないよう努力してますよ。痛いオヤジにはなりたくありませんからね。
というわけで、音楽の世界においても、身近なところではレミオロメンやフジファブリックやくるりなんかが、こうして私たちの世代を軽く踏み台にして、新しい世界を切り開いてくれています(ま、レミオはちょっとオヤジに振り回されてますけど)。文化の継承とはこんなもんなんでしょうね。別にリスペクトとかなんとかいうものはいらない。ただ恥ずかしげもなくマネしてればいいってことでしょう。きっと私たちもそうやってきたんですから。
追伸 カミさんにこの曲を聴かせたら、冒頭からELOじゃんって言ってました。サビについても、あああれだ!とか言ってある曲を歌い出しましたが、曲名がわかりません。で、さらに変な話になりました。ファンの間では「くるり史上最高の名曲」って言われてるんだよって言ったら、「え〜、それって、側転パスガードは桜井マッハ速人か桜庭和志かって言ってるのと同じじゃん、ホントはビル・ロビンソンなのに。痛いにわかファンってやつだな」とか言い出しました。それで、言い返してやりました。「ビル・ロビンソンとか言ってる方がある意味ずっと痛いよ!」と。
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コメント
くるりはメンバーもくるくる変わるし、
去年からRIP SLYMEとコラボレーションしたりして
どんどんギャグ路線に走ったりしている気がしますねえ。
しかしそんな彼らもすきですが。
火曜日に小林舞を特進Aにつれていきます。
市制祭のあの子です。
投稿: 志保里 | 2007.07.21 22:26
あれれ、関係者だったのか。
楽しみにしてるよ。
それにしても、くるりのPVはどうだろう…。
専門家から見てどう?
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.07.21 22:38