源氏物語に学ぶ「通奏低音奏法」
ここ富士山麓は今、正直寒いっす。まじでストーブをつけたいくらいです。外の気温は11度(!)と表示されています。静岡の真冬の最高気温と変んないじゃん!ありえね〜。ニュースでは日本全国暑い暑いって言ってるのに…。
そんなひんやりな夜もセクスィー部長のおかげでかな〜り熱く暑くなりました。ということで(かなり強引ですが)、今日は平安のセクスィー部長、光源氏さんから通奏低音について学びましょう(?!)。巻もちょうど「常夏」ですし。
源氏物語の「常夏」の巻に、セクスィー部長が…いや光源氏が玉鬘に通奏低音のチェンバロについて語る部分があります(?!)。
まあ、とにかく読んでみて下さい。まずいちおう本文を。
(源氏)「…ことことしき調べもてなし。しどけなしや、このものよ。さながら多くの遊び物の音、拍子を調へとりたるなむいとかしこき。…同じくは、心とどめて物などに掻き合はせて習ひたまへ。…深き心とて、何ばかりもあらずながら、またまことに弾き得ることはかたきにやあらむ、ただ今は、この内大臣になずらふ人なしかし。ただはかなき同じ菅掻きの音に、よろづのものの音、籠もり通ひて、いふかたもなくこそ、響きのぼれ」
では、訳します。いつもの我流(無手勝流)訳で失礼します。
(源氏)「(チェンバロは)…決まったメロディーはありません。自由なんですね、この楽器は。でも、多くの楽器の音やリズムを調える役割をしているところがとても重要なんですよ。…同じ習うなら、注意しながら他の楽器などに合わせて弾いてお習いになりなさい。…深い奥義といっても、どうということはないのですが、一方で本当に弾きこなすことは難しいのでしょうか、現在では、あの内大臣に並ぶ人はいませんねえ。ただなにげない同じアルペジオの音に、全ての楽器の音が、こもり通って、言いようもなく響きのぼるのです」
ね、素晴らしいでしょ。これこそ通奏低音におけるチェンバロ演奏の醍醐味ですよ。さすが源氏です。よくわかっていらっしゃる。ちなみにこの文の中に見えるチェンバロの名手とは、源氏の親友でありライバルである頭中将のことです。出世して頭中将じゃないんですよね、もう。
なんて、冗談はこのくらいにいたしましょう。平安時代の日本にチェンバロがあるわけありません。でも、同じような原理で発音し、同じような音楽的役割を果たした楽器があったってことですよね。それが「和琴(わごん)」です。
「和琴」というのは、今のお琴、すなわち「箏のこと」とは違う楽器ですね。もう少しシンプルで素朴な楽器です。また「琴(きん)」と言われる中国から来た琴柱のないタイプものとも違いますね。右の写真を参考にしてください。もう少し平らに持って弾いたと思われますが。
ですから、冗談とは言っても、半分以上は冗談ではないわけです。おそらくチェンバロで通奏低音を弾いたことがある方は、源氏の言葉のあまりの鋭さにドキッとされたのではないでしょうか。それほどに本質をついた言葉なんです。
実は、この部分の私の訳は、一般的な訳とは違うかもしれません。しかし、ちょっと音楽をかじっている者として、また、「モノ・コト論」を展開するものとして、自信をもってこういう解釈をいたしました。「物の音」の「もの」は外部を表します。自分から発する音である「歌」や「声」に対する「楽器音」ということですね。「ことことし」という形容詞が出てきますが、これは「型にはまった、固定された」という意味です。
というわけで、この源氏の和琴論は、通奏低音のチェンバロのみならず、もちろんテオルボやリュート、あるいはジャンルは違いますが、ジャズのギターやピアノの奏法にもつながりますよね。
この前、友人であるチェンバリストの方と話したんですが、どうも最近の若い演奏家は自己主張ばかりが強くて、「響きを立ち上らせる」ことができないようです。ぜひ、源氏の言葉に耳を傾けてもらいたいですね。まじで。
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