雁坂峠(雁坂トンネル有料道路)
日本で一番長いトンネル…高速道とか鉄道とかを抜きにして、一般道で一番長いのは何というトンネルかご存知ですか?
今日は、ちょっと急用ができまして、仕事を休んで群馬県のある市に行ってきたのですが、帰りに埼玉の秩父から山梨の三富に抜ける雁坂トンネルを通ってきました。この国道140号線の雁坂トンネルが日本で一番長い一般道のトンネルです。延長6,625メートル。2位の寒風山トンネル5,432m、3位の安房トンネル4,370mを大きく引き離して堂々の1位です。
なのに、どうしてこうも知られていないのでしょうね。そして通る人も少ない。今日も午後の7時頃通過したのですが、前にも後にも車はなく、すれ違ったのもたった2台。正直大変心細くなりました。
トンネルに入る前から、そうだったんですよ。秩父の山中に入ってからというもの、激しい雨と深い霧の中、一人であの道を運転していますと、このままあの世にでも行ってしまうのではないかという恐怖に襲われます。まあ、甲斐の国の枕詞は「生黄泉(なまよみ)の」でありますが。
途中、大規模なダム工事をしていました。滝沢ダムです。ナビの地図では集落であるはずのところが、すっかり湖になっていまして、なんか切なくなりました。いったいいくつの邑が水没したのだろう。そして、暗闇に浮かぶ近代的なループ橋。その背後にそびえるダム本体の巨大な壁。つくづく、人間というのはすごいと思いました。こんな深山にこんな道を作り、こんなダムを造り、いやそれ以前に、こんな深山も完璧に植林されている!そして、雁坂トンネルです。こんな巨大な穴をどうやって造るのでしょう。
このトンネルが開通したのは1998年。私はその年結婚したばかりだったのですが、カミさんとドライブがてら秩父に行ったのが、最初の雁坂越えでした。今日はそれ以来2度目ということになります。
この甲斐から武蔵に抜ける(はずの)国道140号線というのは、開かずの国道として有名でした。雁坂峠越えというのは、神話の世界にも出てくるほどの古道なのですが、この雁坂トンネルが完成するまで、国道とは名ばかりで、自動車はおろか、自転車さえも通行困難な登山道でありました。途中はしごがあったり、日本最短、それも○○○という、驚愕、爆笑のトンネル(?)があったりと、それはそれは大変な時代が長く続きました。そのへんの珍事情については、こちらのサイトに詳しく出ていますので、御一読を。面白すぎます。
いやいや、ふざけている場合ではありません。けっこう大昔から難所だったんですよね。先ほど神話時代と書きましたが、具体的には日本書紀の景行紀にそれらしき記述があるんです。
於是、日本武尊曰、「蝦夷凶首、咸伏其辜。唯信濃國・越國、頗未從化」。則自甲斐北、轉歴武藏・上野、西逮于碓日坂。
という部分ですね。東北を平定した日本武尊(ヤマトタケル)が「まだ長野や新潟の連中が言うことを聞かない!」と言って、山梨県北部から埼玉、群馬を通って碓氷峠へ…というシーンですね。たしかにこれは今日の私と逆のルートですから、雁坂峠を通った可能性が高い。それにしても、あの山中にどんな道があったんでしょうね。
大概こうした難所というのは、落人の逃げ道になったり、戦略的秘道になったりします。なんでも、国語学者の金田一京助さんやその息子金田一春彦さん、そしてそのまた息子の金田一秀穂さんで有名な(今や金田一耕助や金田一一の方が有名ですかね)金田一家は、甲斐の国からこの峠を通って陸奥は岩手に落ち延びたのだとか。道の駅みとみに春彦さんの詩碑が建っていました。
とまあ、秩父側の様々な縄文スポット、及び三峰神社などの日本武系、すなわち弥生系スポットの散策も楽しいですし、山梨側の西沢渓谷なども観光スポットとしては魅力的です。なのにあんまり人が訪れているようには見えないというのは、ちょっと哀しいよう気もします。いや、歴史的なことを考えると、あんなに近代的な建造物(人工的な「コト」)がありながら、何か人を寄せつけない何か(自然の「モノ」)があるというのも、またむべなるかな、というところなのかもしれません。
そんなことを考えながら私は生黄泉の国に帰ってきたのでした。
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