『日本人の英語』 マーク・ピーターセン (岩波新書)
うん、これは確かに名著だ。50近いアマゾンのレビューがほとんど全て五つ星というのもうなずけます。
私はほとんど英語の必要ない人間ですから、ここから実践的なものを得たわけではありませんが、比較文化的、あるい比較意識的にとても興味深かった。やはり、それぞれの言語にそれぞれの世界観、世界の切り取り方が現れるのだなあ。そのセンスの微妙な差異こそが、ネイティヴと非ネイティヴの間にある微妙でない巨大な壁になっているということですね。
この本は、全ての英語教育者、あるいは英語学習者が読まねばならないでしょう。これを読むと、ほんの一部ではありますが、英語話者がどういうふうに世界を見ているか、どんな見方を重視しているかがわかるとともに、その後の外国語学習のヒントを得ることができるでしょう。
多くの方が賞賛しているように、冒頭の「冠詞」の解説は非常に分かりやすいし、興味深い。私もたま〜に英語を話す時、たとえば学校のALTに話しかけられてしまった時など、あれ?ここは「a」かな「the」かな、それともなんにも付けないのかな、ん?待てよ、単数かな、複数かな、ということがしょっちゅうあります。というか、名詞が出てくるたびに、ですね。それで、だいたい迷ってるうちにモゴモゴとなんか言ってしまっているんですが、そのへんの使い分けについて、この本ではまさに「目から鱗」の解説がなされます。なるほど〜、名詞に「a」や「the」をつけるという感覚ではないのか!「a」や「the」のあとに名詞が…興味を持たれた方はぜひ御一読を。
先ほど、超なんちゃって英語教師であるカミさんと話したんですが、どうも日本の英語のセンセイはこういう勉強をあえて怠っているようだと。たぶん、これこそ「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」の賜物でしょうな(笑)。
ウチのクラスにも外国人やハーフがいるので、国語の授業の中でこういう話題で盛り上がることが多いんです。そして、こちらも学ぶことが非常に多い。何気なく使っている日本語が、非ネイティヴにとっては難しかったり、おかしかったり。今日は中国人が「黄金」を「こうきん」って読んだ。「エバラこうきんのたれ」とかね。みんな笑ったけど、これを「おうごん」と読んだり、「こがね」と読んだりするんだということを理論的に説明するのは難しいわけです。面白いですね。
よく言われることですが、こうやって異文化交流することこそが、自分たちを知るよい機会になるんです。この本は、そういう意味で単なる英語指南書ではなく、本質的な文化論、あるいは鏡像的日本論になっているところがグーですね。こちらのマンガと似た部分があるかもしれません。
で、日本語に関しては非ネイティヴの著者の文章ですが、やはりそういう雰囲気が出ています。それがとてもいい感じです。やたらこなれたネイティヴ風な日本語で書かれるより、こうしたちょっと堅い論文風な文章の方が、「外国人らしい」。私は最近、この「外国人らしさ」がもらたす効果というのを重視していまして、やたら巷に氾濫するなんちゃって英会話教室に疑問を持っておるのでした。
もともと、この本は、英語論文を書かねばならない日本人のために書かれたものですから、そういう文体になるのは当然と言えば当然です。そして、そのちょっとお堅い文体で紹介される、日本人によるトンデモ英語の文例が面白過ぎです。人のことは笑えないのは充分承知の上で、こうして自虐的に笑い飛ばすことから、異文化交流が始まるのかもしれません。まずは「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」を笑い飛ばさないとね。虎になって孤立しちゃいますよ。
「続日本人の英語」も読んでみよっと。
Amazon 日本人の英語
楽天ブックス 日本人の英語
Shop Link
Amazon 楽天市場 楽天ブックス オンライン書店bk1 eBEST 秋葉館オンラインショップ DVDレンタル DISCAS アンテナ専門店「棟梁の弟子」 石丸電気Refino 通販限定CD『FUN』 eBOOKOFF コロムビアファミリークラブ
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 南部と津軽と甲州と…(2024.07.31)
- 死なない力(2024.07.18)
- 『今永昇太のピッチングバイブル』 (ベースボール・マガジン社)(2024.07.17)
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 日本語はどこから来た?(2024.06.01)
「教育」カテゴリの記事
- 【戸塚宏】令和の今、体罰を語る(2024.08.20)
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 柔道混合団体銀メダル(2024.08.03)
- 祝! 舟久保遥香 銅メダル(2024.07.29)
- 仏様の指(2024.07.26)
「文学・言語」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
- 上野三碑(こうずけさんぴ)(2024.08.06)
- 東北のネーミングセンス(2024.07.28)
コメント