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2007.05.24

ステファン・グラッペリ 『スウィング・フロム・パリ』

Stephane Grappelli 『Swing from Paris (1935-1943)』
120688 5月16日は伝説のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの命日でした。彼も43歳で亡くなってるんですね。天才は夭逝するのかなあ。
 ジャンゴが亡くなったのが、1953年です。もうその頃は一緒に活動していませんでしたが、盟友のヴァイオリニスト、ステファン・グラッペリは相当ショックだったんでしょうねえ、その後しばらく彼のレコーディングは聴かれなくなってしまいました。
 きっとグラッペリはジャンゴとの楽しい日々を思い出して、いかに自分が彼に支えされていたか痛感していたんでしょうね。まるで自分の半身がなくなってしまったかのように感じていたのでは。
 その二人の楽しく充実した日々が記録されているのが、このアルバムです。フランス・ホット・クラブ五重奏団(Quintette du Hot Club de France)の演奏もたくさん聴けますからね。
 QHCFは1934年にデビューしています。当時のフランスの国情は不安定でしたが、文化的には旧来の伝統的なものと、諸外国(東欧文化など)がせめぎあい融合して、生き生きとした新しい波が起きつつありました。音楽面でもいろいろな実験が行なわれようです。
 そんな中、グラッペリとジャンゴを中心に結成されたQHCFは、特に画期的な楽団でした。なにしろジャズの弦楽五重奏なのですから。グラッペリのヴァイオリンとジャンゴのギターを前面に、それを2本のリズムギターとベースが支えるという形態、いったい誰が考えつくでしょうか。今でもこういう編成のものは見かけませんね。
 その響きは今聴いても新鮮です。このアルバムではその他にもグラッペリ独自のカルテットやクインテット、珍しくヴォーカルをフィーチャーしたものなど、いろいろな編成を楽しめますが、やはり、QHCFがいいですねえ。スウィング感が違います。
 それはやはりジャンゴの力による部分が大きいのではないでしょうか。彼のリズム感はソロプレイの中で最も発揮されますからね。もちろん単なる早弾きではありません。ああいう独特の感じ、誰が聴いてもジャンゴだと分かる音というのは、どうやって生み出されるのでしょう。ハンディーのことはあまり言いたくありませんが、彼が18歳の時に火事で左手の薬指と小指をほとんど失ってしまったことと関係があるのかもしれませんね。
 ヴァイオリニストの立場から言いますと、グラッペリのコピー(ものまね)とはいうのは絶対に絶対に不可能なんですが、おそらくギタリストにとってのジャンゴというのもそういう存在なのでしょう。
 おっと、このアルバムの主役よりもジャンゴの話が多くなってしまった。えっと、グラッペリですが、私たちがよく知るグラッペリ、すなわちジャンゴを失ってから89歳で亡くなるまでの、あのグラッペリ節とは正直かなり違った音づくりをしています。なにしろまだ20代ですかね。月並みな言い方ですが、味わいは少ないけれど元気という感じでしょうか。のちのグラッペリはまさに「語る」ヴァイオリンですが、この頃はまだまだ「歌う」ヴァイオリンという感じですね。
 とにかく、こうして70年も前の名演を聴けるというのは、本当に幸せなことです。ナクソス・ミュージック・ライブラリーの「ジャズ・レジェンド」は本当に聴き応えありますよ。すごい時代でした。冷静に考えれば、当時の人々はいろいろな意味で不安を抱えていたでしょうね。世界史的に見ると難しい時期です。でも、やっぱり、彼らを生で聴けた当時の人々に少しジェラシーを感じてしまいます。

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コメント

若い頃の顔を初めて見ました。
意外にも好男子ですね。

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.05.25 12:28

伯爵さま、こんにちは。
そうなんですよ。
グラッペリといいますと、あの好々爺たる風貌を思い出しますけど、
実はイケメンで通ってたんですよね。
私も彼のようなおじいさんになりたいです。
あっ、元がB男だから無理かw

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.05.25 12:37

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