『新「ことば」シリーズ20 文字と社会』 国立国語研究所 (ぎょうせい)
国立国語研究所発行の『新「ことば」シリーズ20 文字と社会』が学校に届けられていたので、一通り目を通してみました。
阿刀田高さんの巻頭エッセイはどうということなし(笑)。養老孟司さんと桜井洋子アナ、そして杉戸清樹国語研究所長さんの座談会は、やっぱり養老さんの話が面白かった。クオリアを消去したのが「言語」か、なるほど。
「ことば事情」コーナーでは最近ちょうど気になっていたことがいくつか取り上げられていました。
・最近、民放を中心にテロップが多い。
これはちょっと多過ぎではないでしょうか。バラエティーとかしつこい感じがしますね。でも、若者はその方がいいと言います。マンガ文化でしょうかね。映像と文字の融合。でもアニメにはないんだよなあ。不思議。
・明朝体の字体が実際の手書き体と違う。
たとえば以下の字。
これは学校で漢字を教える時、けっこう困るんですよね。小学校では国語の教科書は教科書体ですが、高校ですと明朝体なんですよね。教科書を真似て漢字を書くと、画数が変ってしまったりして、たとえば漢字検定で不正解になってしまう。これは困ったことです。
・戸籍上の漢字のヴァリエーションがやたら多い。
私の住む地域は「渡辺」さんが異常に多いことで有名なのですが、その「辺」のヴァリエーションがこれまた異常です。ユニコードですと全部で24種類表示することができますが、実はそれでも足りません。
ま、役所の戸籍係の人が間違えたのが正式なものになってしまっている、というケースがほとんどなんですよね。面白いと言えば面白い。
「ことばの質問」コーナーにもいろいろと興味深い話が載っておりましたが、やっぱりこれですかねえ。
最近いただくメールなどで、たしかにこういう表記が目立ちます。私はいちおう「こんにちは」と書きますが、生徒など「こんにちわ」あるいは「こんにちゎ」と書くのが普通ですし、大人の方、それも大学の先生などでも「こんにちわ」と書いてよこすことがあります。おそらくそれらはシャレだと思いますし、たしかにちょっとライトでカワイイ感じがしますよね。ですから、私はそれほど抵抗はないんですけど、世の中にはこういう風潮に眉をしかめる人もたくさんいます。例えばこういう人たち。
これもたぶんこれ自体がシャレだと思います…いや、シャレだと思いたい。まさか「こんにちは」原理主義団体ではないよなあ。ま、日本語の仮名遣い史的に言っても、これをやり玉に挙げるなら他にもいろいろと…ということになってしまう。ま、使い分けができればいいんじゃないっすか?と、いつものいい加減な発言を繰り返してますと、まじめな原理主義者の皆さんに「国語の先生のクセになんだ!」と言われてしまいますから、気をつけないと。
最初の話に戻ります。言葉はクオリア(個人的感覚)を消去しようとしたものなんですが、完全な消去というのはムリなんですよね。そこんとこに生じる微妙なズレが、数学的な記号とは違う味わいや豊かさ、生命感を生むわけでして、そういう言葉の本質を無視して愚痴るというのは、いつの時代にも聞き苦しく見苦しいものですね。
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コメント
ご無沙汰しております。そして遅くなり過ぎましたが、ブログ開設3周年おめでとうございます。
早速ですが、テロップの件、私もいささか過剰であるような気もしていましたが、演者が滑舌の悪いタレントだったりすると、かえって助かったり、不意の電話で消音にした時も番組の内容を把握できたりと、意外と便利なことに気がつきます。それが耳の不自由な人に対する配慮と言うより、演出であることに間違いはないのでしょうが、そういう側面もあるのだな、と思うと、あながち否定も出来なくなったりします。特に即時性のあるニュース番組の場合、様々な人へ向けて発信するには、むしろ有効な手段ともいえますね。また、電車に乗りますと、日本の場合は車内放送で停車駅をアナウンスしてくれて、私などは大変親切に思うわけですが、それをうるさいと感じる人も少なくないようです。
何もそこまでしなくとも、と、思うことが多い昨今ですが、それを必要としている人が少なくともいるなら、まぁ、納得できたりします。
なんで教科書は明朝体なんですかね? きっと読みやすいからなのでしょうが、世の中の印刷物は大抵明朝体だったりします。長年、明朝体に目が毒された結果なのか、それで個人的に困ることがあります。実は、クイズ番組などで難読漢字が楷書体で出題されると、一瞬、文字の形が掴みにくいと言いますか、文字に見えないことが、自分にはあるのです。それを嫁に訴えると、「文字は文字だよ。」と素っ気ない返事。私だけなのかな。(楷書体撲滅委員会でも作ろうかしら。)
こんにちわ。←個人的には撲滅したいですがね。
何も正しい日本語がどうこうと言うより、違和感が拭えないからであり、そこに理屈はありません。ですから、“わ”を推進しようが排斥しようが、どちらかに収束するまで、お互いが言い合ってストレスを発散させれば良いのだと思います。
「こら!“こんにちわ”など認めんぞ! オジサンたちわ!」
(む?)
投稿: LUKE | 2007.05.30 16:11
LUKEさん、お久しぶりです。こんにちわ!w
そうですねえ、テロップは便利な時もたくさんあります。
教材として見せる時なんか、NHKももうちょっと入れてほしいな、なんて思いますね。
今気づいたんですけど、アニメにテロップがないのは、声優さんの滑舌がいいからですね(笑)。
車内放送…
今ちょうど中島義道さんの本を読んでるんで、笑っちゃいました。
彼ならすぐに鉄道会社に怒鳴り込みますよ。
楷書体って意外に読みにくいですよ。
私もけっこう動揺します。
でも、漢検で準1級と1級の解答が明朝体なのは困ります。
ま、あんなマニアックな漢字にもなると、フォントがないんでしょうけどね。
そう言えば、このブログも明朝体ですなあ。
こんにちわ…さすがにメール以外ではまずいと思いますけどね。
最近、そういうメールばっかり見てきたんで、違和感がなくなってるんですよ。
いかんなあ。
私もやっぱり認めんぞ!派になろうかなあ。
いや、あえて認める派に立ってストレス発散しようかな。
若いのを敵に回したくないんで、仕事上(笑)
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.05.30 17:31