(真説)春はあけぼの
この記事には誤りがあるようです。
※本当の「春はあけぼの」とは…もお読みください。
春はあけぼの。やうやう白くなり行く山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
あまりにも有名な、枕草子の冒頭であります。今日、これに関して清少納言さんからホントのことを教えていただいたので、皆さんに紹介いたします。清少納言さん、けっこう怒ってましたよ。
今までも、清少納言さんからはいろいろと面白いことを教えていただきました。いや、私にとっては面白いことでも、だいたいそれらは彼女にとっては「むかつく」ことでして、つまり、あまりに真意が伝わっていないというか、曲解されているというか、なにしろ「古典」の「名作」なんて言われて変に神格化されてしまって、結果として生命力を失ってしまっているわけですね。それは、著者として「むかつく」わ。で、ミーディアムである(?)私を通じて、今までもモノ申して来たわけです(それらについては右の検索窓に「枕草子」と入れてググって読んでみてください)。
そして、とうとう「春はあけぼの」が登場です!神格化を通り越して、ほとんど教材化(?)してしまったこの名文に生命を取り戻しましょう。人間宣言みたいなもんかな。
さて、皆さん、この冒頭部分、学校でどのように習いましたか?「春はあけぼの」の後に何か足しませんでしたか?そう、訳す時「春はあけぼのがよい」とか「春はあけぼのがおもしろい」とか「春はあけぼのが趣がある」とか、そういうふうにしませんでしたか?そこなんですよ、清少納言さんが怒ってるのは。なんで、そこに「をかし」が省略されてるって教えるんだ!味わいもへったくれもないじゃないか!私が醸した空気を読めよ!って。
では、どう訳せばいいか。ま、ホントは訳さないのが一番なんですけどね。そのまんま読むのが。でも、いちおう我々は平安人ではなく平成人なのでしかたありません。いちおう私と彼女のコラボレーション訳をしてみましょう。
春はあけぼの。だんだん白くなって行く山際が、少し明るくなって、紫っぽくなっている雲が細くたなびいてるの。
これです。え?まんまじゃないかって?そうです。まんまです。でも、これだと平安の空気はうまく平成に伝わりませんから、ちょっと行間を補足してみますね。( )内は平安読者の気持ちです。
春はあけぼの。(ん?春の日の出前かあ…ああ、実にいやな時間帯よね。春眠暁を覚えず。春は日が出てもゆっくり寝てるのが一番なのに。それが日が出る前に起きちゃったり、仕事の関係で起きなきゃならない時なんか、もう最悪だわ)だんだん白くなって行く山際が、少し明るくなって、紫っぽくなっている雲が細くたなびいてるの。(うわぁ、リアル…そうそうホントそういう時間帯っていやね。なによ、あの白み方。ああ、朝になっちゃうって感じ。ああそうそう、雲もなんか変な色なのよねえ。ああ、清少納言さんは私たち貴族の嫌いなものを挙げてくれてるんだわ。この枕草子っての面白そうね。いかにも清少納言さんらしい発想。で、夏は…なんですって?)
なるほど〜。そうですね、清少納言さん。当時、春と言えば「宵」とか「朧月夜」ですよねえ。それをいきなり「あけぼの」なんて言われたら、当時の人、それも貴族たちだったら、たしかにこう思いますよ。ぜったい「をかし」じゃない。そうそう、「をかし」って今で言う「萌え」なんですよね。昔、私は「萌え=をかし」論をさかんに書いてましたけど、実はその最初に書いたヤツ、つまり岡田斗司夫センセイが引用してくれたヤツ、実はちょっと間違ってるわけですね。すんません…「いいえ、最終的には合ってるわよ」って、今、清少納言さんがおっしゃいました。それはのちほど。
さてさて、それで「夏」に突入していくわけですが、ここからどういう展開をするのでしょう。ちょっと見てみましょうか。
夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
うわぁ、うまいわ、清少納言さん。こういう展開、こういう演出なんですね!!さすが!!たしかにこのあたりの流れ、つまり清少納言さんの面目が躍如しているところ、全然学校で教えない、どころか、学者の皆さんも全然読み取ってないじゃないですかあ!
つまり、こういうことですね。訳してみましょう。
夏は夜。(ん?夏は夜…えっ?いやなもの挙げてるんじゃないの?夏の夜っていいじゃん。短夜。夏の夜更かしは貴族の楽しみの一つよね。ちょっと先を読んでみよう)月のころはもちろん。(ほら、やっぱりステキなもの挙げてるんじゃない。夏の月夜なんて最高よ。アバンチュールよね)闇でもやっぱり、蛍がたくさん飛び交っているの。また、ただ一匹、二匹なんて、ほんのり光って行くのも萌え〜。(そうそう、真っ暗な夜の蛍はいいわよねえ。普通蛍って月夜に飛ぶんだけどね。闇夜でもたくさん飛ぶ時あるのよね。ま、月のない夜らしくちょっとだけ飛んでるのもたしかにいいわぁ)雨など降る夜も萌え〜。(ええ〜?それはないでしょ。雨の夜はいや。つまんないし、なんかしめっぽいじゃん。好きな人も来てくれないし…ん?ん?そうか!冒頭の春…もしかして、清少納言さん、春はあけぼのが萌え〜って言ってるのかも!!夏の雨の夜がいいなんて言う彼女のことだから、春の夜明け前もいいって言うかもしれないわ。そうか!やられた。さすがだ。あっ、今気がついたけど、一つ前のところで初めて「をかし(萌え)」が出てきてるんだ!ここまで一番大事なところを引っぱっといて、読者を混乱させつつ、興味を引くっていう手だったのね!こりゃあ面白いわ、この枕草子。いかにもアマノジャク清少納言らしい出だしじゃん。これはこの先も読んでみたいわ。えっと秋は…っと)
ほらね。これでもう清少納言さんの術中にはまってますよ。こういう魅力的な演出が施された冒頭なんです。そのあたりの空気が、ここ数百年(もしかして千年かも)ほど全然読み取られてなかった。で、高尚な古典にされちゃって生命感を失ってしまっていた。そりゃあ、清少納言さん怒りますよね。
たしかにこうして読み直しますと、ものすごく上手な書き出しですね。枕草子の性格を完全に表しています。そして、読者を見事に引きつけて、ページを繰らせる力を持っている。すごいっすね、清少納言さん!えらい!
で、先ほどの話ですが、結果としては「春はあけぼのが萌え〜」でいいわけですね。でも、そこに至るには紆余曲折があるわけで、つまり言葉を足して訳すこと自体がナンセンスになってしまうようにできてるわけです。「春はあけぼの」は「春はあけぼの」でしかありえない。さすがです。かっこいいっす。萌え〜。
長くなりますが、ついでに清少納言さんのグチをもう一つ。その「をかし=萌え」に関しまして、どうも学校では「をかし」と「あはれ」を対比して、「をかし」は理知的、主知的な感動とか教えられているようです。おそらく池田亀鑑センセイあたりが言い出したんでしょうけど、これは絶対に間違いです。あくまで女性的なミーハーな一時的な「カワイイ!」的な感情です。皆さん、だまされないように。
まだ、清少納言さんいろいろ言いたいようですが、今日はこのへんにしておきます。え?秋以降も彼女の真意訳を知りたいって?ま、それはまたいつかということで。清少納言さんには霊界にお帰りいただきます。
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