ラーメンズ 第16回公演 『TEXT』(NHK ミッドナイトステージ館)
今日の未明に放映されたものの録画を観ました。うむうむ、感心感心。あいかわらずすごい芸だ。
ラーメンズ、以前第11回公演を紹介しましたね。今回も基本的にあの記事に書いたことと同じ感想を持ちました。完全に芝居ですな。数分間でたった一本のネタを披露するテレビのお笑い番組に、彼らが出ないのも理解できます。2時間近い公演の中に、見事に張り巡らされた伏線の数々。一言も聞き逃さず、大切に記憶しておいて、いつでもそれを引き出せるようにしておかないと、彼らを充分に楽しむことはできません。
今回は「TEXT」とありますように、今まで以上に「言葉」「文脈」を駆使した脚本であったと思います。日本語の持つ多義性、曖昧さを笑いや驚きに利用していく小林賢太郎さんのセンスには、正直脱帽いたします。2年ぶりの舞台ということですが、たしかにこれだけ緻密なホンを書くには、そして、それを全く傷なく演じるには、それなりの時間がかかるでしょうね。
昨日も敬語について書きましたけれど、今日のラーメンズのネタの中にも敬語がありましたね。敬語の使い過ぎという、まあありがちなネタですが、やはりその前後の文脈が、そのおかしさを一層強いものにしていました。
いろいろな意味で「知的」と言えますね。それこそが「お笑い」の枠におさまりきらない理由でもあり、またある意味お客さんを選ぶ理由でもあるわけですが、私など、たまにこうして2時間じっくり知的に集中することに快感すらおぼえます。ま、これが毎日では疲れちゃいますけど。
知的であるということは、先ほど書いた「記憶」という要素と、もう一つ「予測」という要素があるんですね。記憶に基づいて予測する。その予測通りになる場合もあるし、裏切られる場合もある。そうして聞き手が作品に参加することによって、彼らの芸は完成するのではないでしょうか。そういう意味では、ラーメンズと私たちの知的なバトルが2時間繰り広げられるわけですね。そういう緊張感こそ、彼らの魅力でしょう。
アドリブが大好きな私が彼らを好むのは、ちょっとした矛盾でもありますが、ここまで見事に構築されると、もう兜を脱ぐしかない。そう、彼らはやはり、美術家なんだと思います。絵画というのは、基本アドリブ性を拒否するものです。ひらめきや瞬間の衝動はもちろん大切ですが、それを表現する技法としては「構築」「計算」「俯瞰」を重視します。キャンバス一面が2時間の公演の全体像としますと、その部分部分はそれぞれに有機的に結びついているわけでして、そのためにその部分部分は綿密に添削、校正されざるをえない。
この前紹介した鳥肌実とは対極に位置するのかもしれません。鳥肌は「イメージはあれども意味なし」ですが、ラーメンズは「イメージはぼんやりしているけれども突如意味が浮上する」という感じです。部分で勝負する鳥肌に対して、全体で勝負するラーメンズ。しかし両者とも、アドリブが苦手でしっかりホンを作る、というのは面白い事実ですね。いやはや、芸も言葉も難しいし面白い。
生ラーメンズもぜひ体験してみたいですね。場の空気に包まれながらの知的バトルに参戦したいものです。
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