『ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集』 (ムローヴァ/イル・ジャルディーノ・アルモニコ)
VIVALDI: 5 Violin Concertos Victoria Mullova, Il Giardino Armonico
これはすごい!ヨーヨー・マの時もそうでしたが、モダン畑で超一流の人が本気で古楽器を弾いてしまうと、もう正直かないません。
ムローヴァさん、このアルバムでは古楽器界でも特別エキサイティングな存在、私も大好きなイル・ジャルディーノ・アルモニコとの共演しています。ムローヴァさんと言えば、20世紀にはチャイコフスキーコンクール優勝の美人ヴァイオリニストとして、普通にクラシックの世界で大活躍しておりましたが、いつごろからですかね、そして誰の影響を受けたのかわかりませんが、古楽奏法に興味を持ち始めまして、バロックタイプの弓を使うようになり、そしてとうとう完全なバロック・ヴァイオリンも弾きこなすようになってしまいました。
最近では、たしかにモダンとピリオド双方を弾く奏者が増えてきました(いちおう私もそうかw)。イタリアなんか比較的昔からそういう雰囲気がありましたね。逆にイギリスやドイツやオランダ、ベルギーなんかには、モダンと古楽の間の壁が、長いこと存在していたようにも思います。日本でも最近では、楽器にこだわらない若者が増えてきまして、それはそれでいい傾向だと思います。いつも言うように原理主義はまずいんで。
さあ、それでこの録音ですけれど、再び言いますが「スゴイ!」です。正確なテクニックにも正直嫉妬しますけどね、それ以上にこの表現や音色の幅、素晴らしいですね。やっぱりヴァイオリンって艶っぽい楽器ですよ。渋い音じゃあダメでしょ。それにこのくらい攻撃的じゃないとね。いや、冗談でなく、当時におけるヴァイオリン族の楽器って、エレキギターみたいなものだったと思うんですよ。だから、ガンバ族みたいに弾いちゃだめなんですよ。
それを証明しているのが、私はヴィヴァルディだと思うんです。彼の曲について私が最近再評価していることは、先日こちらに書いたとおりです。つまり、ヴィヴァルディはロックしちゃったんですよ。初期バロックのイタリアの作曲家たちも奮闘しましたが、ヴィヴァルディのようなポピュラリティーは獲得できなかった。コレルリさんなんかは、ヴァイオリンの特性を生かしきれなかったのかもしれません。だから、何と言われようと、ヴィヴァルディこそが、現代ヴァイオリン音楽につながる太い系譜の根幹になっているんですね。
そう考えると、ムローヴァさんたちモダンの出身者が、他のバロックの作曲家よりもヴィヴァルディに興味を持ち、実際演奏・録音するというのも納得できるというものです。そう、ある意味でヴィヴァルディはバロックという範疇を超えた存在だということです。やっぱり「バ・ロック」か!?
で、実際このアルバムにおけるムローヴァさんの演奏は、専門の古楽器奏者のそれよりも、ずっと魅力的だし刺激的なんですね。第一「カッコいい」ですよ。「色っぽい」し。何度も繰り返し聴くというのもありだと思いますけど、やっぱりこういうのはライヴでガツンと聴きたいですね。それこそロックのライヴのような高揚感を味わえると思います。そんなことを妄想しながら聴くと、このアルバムはさらに魅力的になりますよ。バンドの方も相変わらずすごいですねえ。やるな、イル・ジャルディーノ・アルモニコ。本当にいつか生で聴きたいな。
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コメント
まったくおっしゃるとおり。同感です。
ものすごい技量で音楽(や古楽器)を押しつぶしてしまうのではなく、さらに深く本質に迫っていくところなど感動的ですらありました。
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.04.23 09:38
伯爵さま、おはようございます。
ムローヴァさん、本当によく勉強されてますね。
即興の入れ方なんかもメチャかっこいい。
私たちも頑張りましょうね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.04.23 09:49