アヴリル・ラヴィーン 『ベスト・ダム・シング』
Avril Lavigne 『Best Damn Thing』
発売されたばかりのアヴリルの3枚目。早速聴いてみました。
なんだかんだ言って全部聴いてるんですよね、彼女のアルバム。もとは生徒のおススメです。聴いてみますと、けっこうストレートでポップなパンクロック、でもちょっとメランコリックなメロディーや歌声で、なかなかいいなと。時々聴くようになりました。映像作品を観ると、ちょっとやんちゃな現代的女の子だけれども、どこか芯が通ってるような感じ。音楽に対する姿勢はなかなか真摯と見ました。実際の身長は小さいのに、とても大きく見える。何か発するものがあるんでしょう。
さて、そんな彼女、昨年結婚しまして、たぶん幸せの絶頂の中でこのアルバムを作ったのでしょう。一聴して、過去の2枚と比べて「翳」の要素が少ないことがわかります。先ほど書いたように、彼女の魅力の一つがその微妙な「翳」であったなら、やや不満に思うファンもいるかもしれませんね。
しかし、これだけはじけて、これだけ突き抜けていると、これはこれでスカッと気持ちいい。年度初めで忙しく、ちょっと疲れ気味のオジサンも少しは元気になります。
私は彼女の熱狂的なファンではありませんから、こうしてこのアルバムも普通に受けいれられますが、「がっかり」なファンも多いでしょうね。いつも書いているように、思い入れが強ければ強いほど、その思い入れた「過去」に執着してしまうのが人間の性です。これじゃあアヴリルじゃない!と言う人もいるかもしれません。でも、これがたぶん今の彼女の本当の姿でしょうから、以前のような音楽を作れと言ってもそれは無理で、もしそうしたとしたら、それはウソになってしまう。彼女はデリック・ウィブリーとの出会いの中でこう変化したんですから、しかたありません。
聴く側がついていってないだけ。これってよくあるケースです。ずばり言ってしまうと、アーティストと凡人のギャップなんですよね。彼らは常に前進していく、変化しようとしている。あるいは普通に人間として成長していく。その歩幅が我々凡人と違うんですよ。
あるいは、私たちも人から見れば、変っているのかもしれない。自分にとっての変化は常に「ここにある」ので気づきにくいものです。
で、アーティストは「作品」という不変の情報を何年かに一つずつ残して行くわけですから、それを聴きこむ私たちはどうしても「過去」の彼らの姿に固執していくわけですね。聴いているうちに印象が変ってくるというのもありますが、それは情報としての作品が変化しているのではなくて、聴いている自分の脳ミソの方が変化しているわけです。
それに面白いのは、彼らは一つの作品を生み出したら、もう次のことを考えてるんですね。たとえば産み落とした作品を私たちのように聴きこんだりしない。しかし、私たちはそれを聴きこんでいく。そこにすでに大きなギャップが生じてるんですよ。これは、美術でも文学でもほぼ同じ状況です。
表現者の難しいところは、そういった他人の無責任で利己的な「評判」とどうつきあうかです。私もこのブログで、それこそ無責任で利己的な批評をたくさん書いていますよね。私の戯言なんかそれほど影響はないでしょうが、塵も積もればなんとやらですし、第一今の経済システムにおいては、表現者の生活はその「評判」一つにかかっているわけですからね。非常に微妙な関係です。自分のやりたいことと、他人の要求するものが一致することは、芸術の分野に限らず、たいへん稀なことです。
で、私からアヴリルへ(あるいは全ての表現者へ)アドバイスですが(笑)、やっぱり「やりたいこと」より「やるべきこと」を優先すべきだと思いますよ。ある意味、そこには「自分に対するウソ」が生まれるのでしょうが、いつも言っているように、他者との「縁」によって生起する自分の方に、実は本質的な「自己」があるからです。
…と、とんでもない説教が始まってしまいましたね。すみません。
とにかく、ザクザク感、トゲトゲ感、カゲカゲ感(?)の減ったアヴリルもまたアヴリルということで、私たち聴く側も上述した様々な事情を考慮しつつ、「過去」のアヴリルに固執することなく柔軟に他者を受けいれて行きましょう。「過去の他者」に固執することは、すなわち「過去の自分」に固執することですので。
…と、また説教になってしまった。
Amazon Best Damn Thing
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