『ルクセンブルクの歴史−小さな国の大きな歴史』 ジルベール・トラウシュ (原著), 岩崎允彦 (翻訳)
宿泊学習会ということで、いつもなら寝ているべき時間に起きています。もう完全に電源が落ちてます。待機電力だけでなんとか生存している感じ(笑)。と、そこに生徒が難しい質問を持ってくる…。
こんな時はユンケル黄帝液を飲みましょう。ああそうそう、ユンケルと言えば、ルクセンブルクの首相、ユーロの立役者、ジャン=クロード・ユンケルですね。で、今日はユンケル飲みながら「ルクセンブルクの歴史」を読みました(だいぶ思考が錯綜してますね)。
ヨーロッパの皆さんにも半ば忘れられた存在であるルクセンブルクについて、なんで今ごろ勉強しようかと思ったのかといいますとですね…別に意味はありません。というか、勉強しようと思ったんじゃなくて、半ば強制的に勉強しろと言われたのです。
私が担当しているコースの新入生にですね、ルクセンブルクからの帰国子女がいまして、彼女がもっとルクセンブルクについて知ってほしいということで、この本を貸してくれたのです。まあ、そう言えば名前と「小さい」ということだけは知っているけど、いったいなんでそんな小さい国家が成立したのかはたしかに知らない。また、小さい割に国力はけっこうあるというイメージでしたので、そのあたりの事情というのもたしかに気になる。こういう機会でもないかぎり、一生行くことはもちろん、一生よく分からないで終わってしまうのではないか。そんなふうにも思いましてね、それで、じゃあ読んでやりましょう、ということになったわけです。
読んでみますと、なかなか面白い反面、なかなか面白くない。面白くない原因はその歴史自体や著者自身にあるのではなく、もちろん、私の世界史嫌いに由来します。どうもだめなんだよなあ。高校時代のトラウマが消えない。
面白いのは、その激動の歴史です。これはたしかに大変だったなと。数百年の間に、もう説明のしようがないほど、周囲の国々に侵略され、翻弄されています。しかし、結果としてあのような小国(神奈川県や佐賀県と同じくらい)が立派な独立国家(大公国)として認められ、それどころかEUの立役者になったり、一人当たりの国民総所得が世界一になったりしている。これは、いったいどういうことなんでしょう。
本当に簡単に説明できない複雑な状況なんですが、とにかく、隣国のドイツ、フランス、ベルギーはもとより、オランダやハンガリー、チェコ、スペイン、オーストリアなどが、この小国を併合しようとしたり、あるいはいろいろと牽制したりしたわけですね。で、複雑すぎて、私はその流れが分からなくなってしまってるんですけど、結局のところは、その周囲の力関係が微妙というか絶妙であり、ある時は引っぱりっこをされるし、またある時はそれぞれの眼中になくなったりするんですね。それで多少の誤差はありますが、その力関係のベクトルの総和がけっこうゼロに近くなったんじゃないのか。
でも、ベクトルの総和はゼロでもエネルギーとしては相当の総和量になっていますから、それなりのテンションが生じます。それで、ルクセンブルク国内ではナショナリズムが強化されていった。
こんな感じで、あの小さな国がある意味生き残り、現在に至っていると。そして、そうした外部からの力を吸収して、独特のコスモポリタニズムや「根性」を培っていったんじゃないでしょうかね。いわば偶然の産物です。運命的と言ってもいいかもしれない。一「伯爵領」が世界を動かす小さな巨人になるなんて、中世のルクセンブルク人たちも夢にだに思わなかったでしょう。
そう考えてみますと、これはまあ周囲からの影響の極端に少なかった日本史と見事に対照的ですね。しかし一方では、(対照的ではあるが)地理的条件が両小国を救ったとも言えるわけでして、なんとも興味深いコントラストとアナロジーを感じずにはいられません。面白いですね。
自然的、人的資源の乏しい小国が、現代においてどのようにその存在意義を保っていくか。国際政治、経済、軍事などの面におけるルクセンブルクの現在のあり方というのも、もしかすると日本にとって非常に参考になるのかもしれません。小国だからこそできることに目を向けるのも大切なことなのです(まあ、日本を小国と言えるかどうかは微妙ですけどね)。あと、ナショナリズムとコスモポリタニズムの関係(共存)を考えるのにも参考になります。
さあ、がぜんルクセンブルクという国に興味がわきました。生徒もとてもいい国だったと言います。ちょっと行ってみたいような気もしますね。日本の歴史もある意味神懸かり的ですけど、ルクセンブルクのそれもかな〜り神懸かり的ですからね。なんとなくシンパシー感じるのですよ。
ああ、そうだ。あのSkype、ルクセンブルクの会社の製品なんですよ。知ってましたか?
Amazon ルクセンブルクの歴史
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コメント
家内が行ったことがあり、大変良かったといっていました。
税金の安い、金融センターにもなっていますね。
大体、ベルギーがなぜあるのかもわからないくらいですから
もっと微妙複雑な事情がありそうで、興味がわいてきました。
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.04.29 12:38
大公さま、いや伯爵さま、こんにちは。
ああ、そうですか、奥様行かれたことのおありなんですね。
うらやましいです。
ところで、ルクセンブルクのバロック音楽とか興味ありません?
場所的にもけっこう面白そうですよね。
探してみましょうか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.04.29 13:00