『さくらん』 蜷川実花監督作品
今日はエイプリルフールにちなんで、ウソとマコトの映画を観てきました。いろいな意味で興味のあった映画でしたが、なんか映画を観たぞ〜という実感はありません。でも、非常に面白かった。もう一回観てもいいかな、あるいはDVD買ってもいいかな、と思います。
ちまたでは結構酷評されているようですが、たしかに映画的な視点、それも映画ファン的、映画マニア的視点からすれば、ルール違反や「空気読めない」ふるまいがいろいろあるでしょうね。普段は私もそういうことを思って上映中集中力を欠いてしまうタイプなんですが、今回はそれを上回る「違う」興味がありましたからね、2時間があっという間でした。
え〜、まずストーリー的な感想はこちらに書いた通りです。つまり、安野モヨコの原作マンガを上手にシナリオ化していたと思いますよ。印象に不自然な点はなかった。あえて言えばラストがベタすぎましたね。でも、あれはハッピーエンドではないでしょ。観客の何人がそれに気づいたか。もう少し示唆があってもよかったのでは。最後に散った桜の木を映すとか(もっとベタか…笑)。
さて、次はっと、え〜キャストに行きますか。これもまたお見事でしたね。原作モノで、これほど自然なキャスティングは初めて。土屋アンナ、木村佳乃、菅野美穂、椎名桔平、成宮寛貴、永瀬正敏、安藤政信、夏木マリ、石橋蓮司、市川左團次…どなたも完璧。正直やられたと思いましたよ。個人的には、土屋アンナもはまり役だったと思いますし、木村佳乃も良かったなあ、思わずドキッとする「女」でした。男性陣もそれぞれ妙に「男」っぽかったし。特に私ごひいきの安藤政信は、抑制された深い演技で、見事清次の内面を表現していました。さすが!清次、実は一番ワルの男だったりして。そんなことさえ感じました。
続いて映像面。美術も含めて。私は良かったと思いますよ。映像の構成がうまい。特に静止した空間や時間の表現はいい。さすが写真家さんですよ。私は本当に一場面ずつなめるように見回しましたけど、細部までよくこだわってました。それがまたとっても超時代的でして、今考えるとモダンだったりポップだったりしてるわけですけど、でも全然不自然じゃなかった。もともと夢物語的映画ですから、それでいいと思いました。時代考証とか言うのは、それこそ野暮でしょう。粋じゃないっす。
そう、全体として、映画的流れは全然なってないと思いますよ。でも、一場面一場面の迫力や壮麗さや芳香みたいなものは抜群だった。ああ、こうして2時間見せてしまうというのは、これはエンターテインメントとしてありだな、と思いました。だから、もう一度観たいシーンがたくさんあるんですよ。あの木村佳乃の目を観たいとかね(笑)。
それにしても、冷静に考えると、あの色彩豊かな世界を、モノクロのマンガで表現しちゃうってすごいですねえ。安野モヨコ、というか、マンガのすごさですよ。いや、そこに色彩を感じる人間のすごさかな。
さてさて、大事なことを忘れてはいけませぬ!そう、音楽です!こちらやこちらで散々期待させられてましたからね。私の興味の3割くらいはそっち行ってました。結論、一部場違い感なきにしもあらずでしたが、全体的には映像の虚構性とマッチしていたのでは。スクリーンに椎名林檎姫まで登場していた錯覚に陥ってます。それほど彼女の音楽の存在感が大きいということでしょうし、その虚構的雰囲気が映画を超えちゃってたってことかもしれませんね。あと、ヴァイオリンってやっぱり色気の楽器なんだなと。私ももっとエロっぽく弾かなきゃって思いました。ネコさん、なかなかスケベで良かったっす。長谷川きよしさんと思われるギターも熱かった。みんな大人の色気だなあ。
さあ、長くなりますが、観賞中ずっと考えてたことを最後に。さっきも「虚構」という言葉が出ましたが、今までも「モノ・コト論」の中で書いてきたとおり、フィクションは「コト」で、ファクトは「モノ」であります。虚構は人間の頭で処理されたこと。事実は私の存在とは無関係のところにある「モノ」です。遊女たちや客たちは、本来「コト」を楽しむわけですね。虚構です。しかし、そこに時々「本気」が侵入してしまう。いけないと分かっていてもはまってしまう「モノ」です。そんな時、彼女らは「マコト」という言葉を使うんです。あれ?それって本当の「コト」っていう意味じゃないの?真実じゃないの?なのに「モノ」なの?そう思われるでしょう。矛盾してると。
いや矛盾してないんですよ。これもいつか書きましたが、世の中に変らない「マコト」というのは一つしかないんです。それは世の中が「モノ」で出来ているということ。つまり、世の中思い通りにいかない、常に変化して当たり前ということだけ、それだけが「マコト」=真実なのです。それをお釈迦様も発見したし、いにしえの日本人も「もののあはれ」として大切に考えました。だから、遊廓のように「コト」を徹底して、経済にまでしようとすればするほどに、そこに闖入してくる「モノ」が際立つんですね。あるいは無意識にみんな「モノ」を欲するようになる。
それこそが、廓の楽しみなんだな。恋ってやっぱり「モノノケ」なんだな。「もののあはれ」ってそういうことか。人は因果なもので、「コト」化を押し進めようとシゴトにいそしむけど、結局「モノ」を求めている、そんな逆説の中に生きてるんだな。と一人合点しながら観てました。そうするとラストもよくわかる。その先に「死」が見えてくるわけです。うがちすぎかなあ。
それにしてもですねえ、観客が女性ばかりで驚きました。男は私一人だったのでは。私は一人で観に行ったんですが、最初のうち妙に恥ずかしい気持ちになってしまい、極度に肩が凝りました。ま、最後はまるで遊女に囲まれてる気分になってましたが…(笑)。
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