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2007.04.08

『スーダラ伝説~植木等 夢を食べつづけた男~』(NHKハイビジョン特集)

自らの軌跡を語るロングインタビュー
Uekiya 今日は花まつりにしてイースター。つまり、お釈迦さまのお誕生日にして、イエス・キリストの復活の日(第二のお誕生日)であります。私もご近所のお寺や教会にてそれらを祝いました。
 そして、本当に今日という日にふさわしい番組を観ることができました。涙、涙です。私にとっても今日は何回目かの誕生日かもしれません。先日「追悼 植木等」という記事を書きましたけれど、今日の番組によって、新たな植木等が私の中に生まれました。イエスの復活もこういうことなんでしょうね。
 今日の夕方、2005年に製作されたハイビジョン特集「スーダラ伝説〜 植木等 夢を食べつづけた男~」が、教育テレビにて再放送されました。もちろん追悼番組としてです。私は本放送を見逃していましたので、これが初見です。
 本人の6時間に及んだというインタビューを中心に、関係者の皆さん(そうそうたる方々ばかりですし、ここ2年でお亡くなりになった方も…)やご長男で作曲家の比呂公一さんのお話も交えた2時間番組。彼の生い立ちや音楽的な才能についても初めて知ることが多かったのですが、やはり本人のインタビューが素晴らしかった。いや、その内容はもちろん、パフォーマンスとしてものすごく良かった。それは完璧な芸でもありましたし、そして老師の説教のようでもありました。ひきつけられ、心動かされましたね。彼を支える、仏教と音楽…まさにこれらがそのインタビューを作り上げていました。
 インタビューですから、当然アドリブです。彼の一言一言は全て上質な即興芝居になっていました。インタビュアーの言葉は全てカットされていましたからね。一人芝居です。完全なるアドリブ力と、そしてリズム感。インタビューが一つの芸にまでなるんだ!驚きでした。
 内容については、本当にいろいろと引用したいところですが、私が最も感銘を受けたこの部分だけにしておきますね。

『生まれてからこんにちまで、僕が出会った人は、全員僕の…もう…言葉に表せないぐらい世話になった人…そういう人ばっかりに会ってきたっていうね…ありがたいことだなあって思いますよ』

Uekiya2 この言葉を聞いた時、この人は仏様だと思いましたね。植木さんは、特別周囲に恵まれた人だった、ラッキーな人だったというわけではありません。彼が全ての人に対して、つまり私たち凡夫であったら敵だと思ったり、嫌ったりするであろう人にまでも、感謝の気持ちを持ったということです。実際に世間的には悪いヤツもいたでしょう。そういう世界ですからね。しかし、植木さんは素直に「全員、世話になった人」と言える。これは、彼自身の心が限りなく開いているからです。我執や利己から無縁のところにあるからです。
 彼の人生をふり返ってみますと、彼からいろいろとアイデアを出したり、先導したりということはほとんどないように感じられます。たいがい周囲からの依頼や提案で動いているようです。インタビューの中でも語られていましたが、だいたい人から何か言われると「ん〜」と考えたのち、「はい、わかりました」「いいですよ」と言う。あるいは逡巡していると押しの強い人が彼を連れてドンドン行ってしまう。ある意味他力にまかせいるわけです。
 で、彼のすごいことろは、一度引き受けたら、その依頼主の期待以上のことをしようと考えたところです。おそらくそれは、高尚な考えやプライドから生じたことではないでしょう。単にそのことに「なりきった」だけで、つまり、自分自身やるからには楽しもう、自分を全部発揮しようということだっただけだと思われます。
 そうして、「縁」によって生じた自分、変化した自分を肯定し、自らを生かし、人をも生かしていったのです。だから、彼を憎んだり、怨んだり、嫌ったりする人はいなくて当然です。そうして感謝、報恩の気持ちだけが残る。常に心が開いていれば、自然とそうなるわけで、私は、仏教の目指すところはそこであると常々思っています。
 いやあ、本当に感動しました。私もそうやって生きていければいいなあ。いや、生きていこう。今日は、私にとっても新たな誕生日です。
 最後に再びインタビューから。究極の言葉です。

『人生ってやっぱり、僕は、縁だと思うんだよね』

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コメント

植木等さんは私の亡くなったおじいちゃんに似ていたこともあり、ずっと好きな俳優さんでしたが、亡くなられてからあらためてクレージーキャッツのDVDを見まくり、更にその歌やコメディの奥の深さや、それを見事にセンスよく演じきられる植木さんに涙が出ました。内面の素晴らしさが、表情に声に振り付けにスタイルに・・・全てに現れていますね。クレージーの中で一緒に踊っていても、その微妙なダンスセンスの違いは歴然で、見とれるほどでした。このNHKの番組って、もう再放送されないのでしょうか。是非見たいです。。もっと詳しく内容が知りたいです。。 

投稿: ひとちゃんファン | 2007.04.12 10:44

ひとちゃんファンさん、コメントありがとうございました。
植木さん、本当に人としてもタレントさんとしても尊敬すべき方でした。
民放も含めてたくさんの追悼番組が放送されましたが、このハイビジョン特集が圧倒的に良かったですね。
再放送は当分ないかもしれません。
最初の15分ほど録り逃してしまいましたが、あとは録画してあります。
もしそれで良ければ…。
のちほどメールにて連絡いたしますので、しばしお待ちを。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.04.12 11:27

最近たまたまクレイジーキャッツのレコードを集めて聴いていまして、そのさなかでの訃報でびっくりしたのでした。
4月8日も何気なくつけたテレビをみてたら、クレイジーキャッツのジャズバンド時代の映像が流れていて、「ほ~、やはりただのバカ騒ぎのバンドではないな」なんて思っていたら、あれよあれよと映像に引き込まれていって・・・。

びっくりしたのが、私も「なんか仏様みたいだなー」なんて思いながら観ていたこと。インタビューの一言一言をこぼしたくなかった。バカなことと、真面目なことは表裏一体なんですね。
「スーダラ節」の歌入れのエピソード、「日本一の男の中の男」の演出、歌番組での「ハイそれまでヨ」。ドキュメンタリーでひとりで大笑いしたのは初めてでした。

再放送が観たいですね。もし録画されていたら、ぜひ私も観たいです。
いい番組だった。

投稿: なかなかむら | 2007.04.19 02:35

なかなかむらさん、おはようございます。
コメントありがとうございました。
バカなことと、真面目なことは表裏一体…
そのとおりだと思います。
私も泣きながら大笑いしてました。
彼が亡くなってから大切なものに気づく自分…。
のちほどメールさしあげます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.04.19 07:48

植木さんの「スーダラ伝説」をみたいと思いさがしましたら
この書き込みをしてしまいました。彼の、そして彼の父親の生き方には大変に関心をもっています。この映像をお貸しねがえたらと思い、ぶしつけながらメールしました。是非おねがいします。

投稿: なかけい | 2009.11.17 23:58

なかけいさん、コメントありがとうございます。
私もこれを機会にもう一度観てみようと思います。
のちほどメール差し上げます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.11.18 12:52

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