追悼ロストロポーヴィチ 『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲』(DVD)
失意の内にも学校行事は淡々と進んでいきます。新入生歓迎球技大会が終わり、そのまま宿泊学習会へ。文武両道を目指すとは言え、あれだけ運動したのち夜半まで勉強する生徒たちのパワーには、感心させられるとともに、こんな折には勇気づけられますね。
そんな中、また哀しいニュースが入ってきました。カザルスに匹敵すると言っても過言ではない偉大なるチェリストが亡くなりました。ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ…私は彼の演奏を一度だけ生で聴いたことがあります。もう25年以上前のことでしょうか。どこで何の曲を聴いたか、ほとんど覚えていません。ただ、プログラムの前半にカール・フィリップ・エマヌエル・バッハのコンチェルトがあって、それがものすごくカッコよかったという記憶だけが残っております。そして、チェロの音ってこんなに大きいのかと。
その後の記憶と言えば、やはりあのベルリンの壁崩壊の時の、その壁際でのバッハ演奏でしょうか。ニュース映像か何かで観たのだと思うのですが、それまでの彼の受けてきた政治的仕打ちのことを考えると、涙が止まらなくなりました。
さて、今日おススメするのは、ベルリンの壁崩壊後に録音、撮影されたDVDです。ここにはバッハの無伴奏チェロ組曲全曲が収められています。私はテレビで放映されているのを観ました。それがいつのことだったか、それもまた定かではありません。しかし、不思議と心に強く残っているのです。演奏のスタイルは、私の好むオーセンティックなものとはかけ離れていますから、正直音楽としてはあまり楽しめなかったのですが、そこで語られるいろいろなエピソードや、演奏上のヒントはとても面白かった。
冒頭にカザルスに匹敵すると書きました。実際、カザルスにバッハの無伴奏を教えてもらった時の様子も、この映像作品の中で語られていたと記憶します。そのような音楽的な面だけではなく、ロストロポーヴィチは、ある意味カザルスの後継だったとも言えましょう。平和活動の面においてですね。それを良しとしない勢力からは、二人ともに反動的だととらえられ、亡命を余儀なくされました。音楽を通じて平和や自由のために闘う…一面においては音楽を政治的手段としたとも言えますが…という姿勢は、まちがいなくカザルスからロストロポーヴィチに受け継がれたのでした。
そういう激動の人生の中で、数えきれないほどの音を奏で、そして亡くなっていったロストロポーヴィチ。彼は今の世界についてどう思っていたのでしょう。
最後に印象に残っている彼の言葉を一つだけ紹介します。
私たちが考えなければならないことはただ一つ、「自分は神に近づく階段を昇る行為をしているのか、降りる行為をしているのか」ということだ。
ご冥福をお祈りいたします。
Amazon J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
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