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2007.03.24

コキリコ社 『FIRST ALBUM』

Gd562 夜、明日のコラール・コンサートで御一緒する渡辺敏晴さんが到着。明日コンサートなのに、いまだ一回も合わせず、そして呑み始めてしまった私たちって…。ま、もう長いおつきあいですし、(せっぱ詰まるという)経験の豊富なワタクシたちですから、こうして、呑みながら呼吸を合わせていくのも大切な準備の一つです(?)。
 さて、呑みながらの話題は、と言いますと、これまた明日のことはさておきまして、長谷川きよしのこと、椎名林檎のこと、レミオロメンのこと、歌謡曲バンドのこと…むむむ、私たち古楽人ではないのか!?
 そう、私たちにとって、活動のフィールドとして、たしかに古楽というのは重要なんですが、どうもあの独特の狭っくるしい世界に違和感を抱いているのも事実。古楽器を演奏しているからこそ分かる、古楽界の現状というのもありましてね。まあ、そんな話もいたしました。
 その…、最近渡辺敏晴さんのグループ「コキリコ社」がお出しになったCDは、古楽器をフルに使いつつ、既成の古楽のイメージからは大きく逸脱した、とっても健康的な内容になっています。今日は、ひいき目なしにこの素晴らしいCDをおススメいたします。
 まず、メンバーと楽器、そして曲目をどうぞ。

渡辺敏晴 ヴィオラ・ダ・ガンバ、パルデュッスー
鈴木理恵 リコーダー
立野政幸 リュート、バロックギター
大滝眞 ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックギター
渡辺かの子 ヴィオラ・ダ・ガンバ

1ブフォンズ 2新しいサルタレッロ 3昔のサルタレッロ 4タランテラ 5コントラダンス 6ジャヌゾンプリ 7新しいタランテラ 8サリーガーデン 9古いイギリスのダンス 10聖母とその子 11彩雲追月 12うみ 13竹田の子守唄 14初こひ 15さくらさくら 16ラメント 17アルマンド・ラ・ノネッタ 18プレリュードとチャコーナ 19リッリブルレロ 20ミヌエット 21リガドン 22イタリアングラウンド 23バッハのアリア

 ご覧になって分かる通り、本来の西洋古楽の作品も取り上げられていますが、中には日本のうたや、中国の曲、そして敏晴さんのオリジナル曲も数曲入っております。編曲はほとんど敏晴さんが担当されているとのこと。独特の世界観に基づいた無駄のない編曲はさすがです。
 さて、このCDの印象ですが、敏晴さんは一言「癒し系」とおっしゃていましたけど、私はその言葉には収まりきらない空気を感じましたね。呑みながらの対話の中にも何度も出てきましたが、西洋的なリズム感やテンポ感とは違う、東洋的な日本的な「呼吸」感。伸びたり縮んだりするし、濃くなったり薄くなったりもする。大きく深呼吸した時の胸の広がりと、自然見上げられる空の広がり。地球の風が胸にすうっと入ってきて、自分に溶け込んでいくような、そんな感じの音楽なんです。「いき」です。「いき」というのは、「息」であり、「粋」であり、「意気」であり、「生」である…。
 敏晴さん、いちおう専門はチェンバロなのかな?明日はオルガンを弾きます。でも、このCDでは鍵盤は弾いていません。ギターやヴィオラ・ダ・ガンバ、日本の胡弓、それに中国の琴、なんでも弾けるスーパー・プレイヤーなんです。このCDでは歌も歌ってる。なんでもできるんですね。しかし、ただ弾けるとか、そういう次元ではないんですね。それぞれの音楽をよく御存知だし、ある意味それらのボーダーがない。スケールが大きいんです。
 私が聴いた中で、象徴的だなあ、と思ったのは、「さくらさくら」で「やよいのそらは」の「い」の音が、ガンバとリコーダーで見事に半音違うんですね(敏晴さん曰く、半音よりちょっと狭いらしい)。私はそれを大変美しいと思った。ぐっと来ました。私もちょっぴり日本音楽に関わったことがありますし、どちらかというとよく聴いてきた方ですから、たとえば雅楽におけるそうした不協和音の美しさというのを、比較的理解できるのではないかと思います。それでも、西洋古楽器でこれをやられたら、それこそ「やられた!」と叫びたくなります。これは勇気のいることだったのかもしれません。頭の堅い人だったら、間違ってる!とかヘーキで言い出しそうですし。
 その他にも、世間の偏った常識からすると、「障り」と分類されそうな音や響きがしっかり録音されています。私にはその「さわり」こそが美しく感じられましたが。こういう姿勢、私は完全に賛同いたします…って言ったら、次回作には私のパートも作ってくれるって!イェ〜イ!!ああいう呼吸の中に入って風のような音楽を奏でられたら、うれしいなあ。
 純粋に聴いてみたい、あるいは最近心がささくれ立ってるなあ、という方は下記までどうぞ、とのこと。
 近い内にフランスでもオンエアされるそうです。これは、かなりのインパクトを与えるのではないでしょうか。東洋からの風はたしかに届くものと信じます。

お問い合わせ、ご注文
office@kokirikosha.com
370ー0864
高崎市石原町1327ー1
「コキリコ社」
電話 027(326)1052

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コメント

弥生の空はの「い」。きなしに口ずさんでみると、すごく低くなる音ですね。びっくりです。

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.27 22:05

いや、お世話になりました。完全なる居候状態で、ごちそうさま!!
家についてブログを見てみたら、なんと我が「コキリコ社」がついに登場しているではありませんか!!うれし〜、おどろき〜。。
と、すこし腐女子的喜びに満ちあふれました。ありがとうございました。
またコンサートやりましょうね。。

投稿: 渡辺敏晴 | 2007.03.28 01:02

伯爵さま、どうもです。
そうですね。
私もいちおう琴やってましたが、調弦自体、あそこは低めにします。
コキリコ社のはすごいですよ。
西洋音楽的に言えば、かたや短調、かたや長調で弾いてるって感じですからね。
でも、それも考えてみれば、こちらの音楽ではしょっちゅうあることです。
ってことは、この前の私たちの演奏、調性まちがえたりしましたけど、実はあれで良かったとか(笑)

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.28 06:09

敏晴さん、お疲れさまでした!!
そして、本当にありがとうございました。
お留守番までしていただき(笑)。
とっても楽しい二日間でしたよ。
そして、このCDホントにいいですよ!
私もガンガン宣伝いたします。
またいろいろ企画してやりたいですね。
例の芸大の件も、よろしくお願いいたします。
その件で近い内にまたこちらに来ていただくかもしれません。
その時は演奏会の場も作りますので、よろしくです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.28 06:18

優柔不断な私は、しばしば長調にするか短調にするか決めかねて第三の道を選択してしまいます。つまり、どちらでもない音程です。冗談はさておき・・・。
CD注文しました。とても楽しみです!

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.28 22:31

いやいや、伯爵さま、どちらでもない音程こそホンモノですよ!
どうも、最近の古楽界はデジタル化してますね。
私たちも頑張って(生暖かい?)風を吹かせましょうよ(笑)。
CDホントにいいですよ。お楽しみに。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.29 05:46

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