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2007.03.19

『宇多田ヒカルの作り方』 竹村光繁 (宝島社新書)

Utadahikaru 懐かしい顔ですねえ。800万枚も売れたんですか!?今じゃありえませんね。で、ずいぶんと古い本ですが、図書室で目についたので得意の即読をしてみました。なかなか面白かったし、勉強にもなりましたよ。
 この本は今では絶版となっています。まあ、これは「旬」のある出版物の典型ですね。しかしですねえ、私としては、彼女の日本デビュー・アルバムを客観的に聴くことのできるようになった今だからこそ、この本の面白みも増すと思うわけです。ちょっと前に離婚(やっぱりね)で世間を騒がせましたし、最近の彼女の楽曲はまたずいぶんと変わってきましたしね。今まで読むのを我慢してきて良かった(って忘れてただけ?)。
 この本を書いた竹村さん、紹介には音楽関係のお仕事で活躍されているようなことが書いてあるんですが、正直どのようなことをされていた(いる)方か存じません。第一、この本で業界の裏話(まあ常識とも言えますが)をこれだけ暴露しちゃったら、その後来る仕事も来なくなっちゃったかもしれませんね。日本の音楽業界の、アーティストに対する金銭的冷遇をずいぶんと強調していますけど、この本の売り上げと、ご自身の音楽的なお仕事と、どちらがお金になったのでしょう。ある意味、仕事を失う覚悟で書いたとも言えますけれど、今彼はどう思ってるのでしょうね。
 この本は大きく三つの部分に分かれていまして、まずは当時彗星のごとく現れ、天才と評された宇多田ヒカルの、どこがすごいのかを分析する部分。と同時にここでは、安易な称賛に関してはちゃんと一蹴しておりまして、なんとなくですが同意できる部分が多かった。決して深くてオリジナリティーに溢れた論は展開されているわけではありませんが、面白くないことはない。特に、(当時の)ほかの音楽や音楽家に対する辛口批評は、当時の私の感覚にも近いものがありますし、7年くらい経った現状からしますと、結構正しいことを言っていたりします。なにしろ懐かしい名前が並んでるんで、それだけでも楽しかったっす。
 特にビジュアル系に対する揶揄、嫌悪は異常なほどで、竹村さんが非ビジュアル系であることがうかがわれます(笑)。ちなみに私も非〜ですので、当時は竹村さんと同じ立場だったんですが、その後は食わず嫌いはやめまして、たとえばこんな記事書いたりするまでになりました。きっと剃髪してある意味ビジュアル系になったからでしょう(笑)。
 さて次に、竹村さん、ビジュアル系の存在のみならず、本当にいろいろな面において日本の音楽業界に苦言を呈していまして、たしかにその一つ一つが、たとえばアメリカのそれに比べてひどい状況だということはよくわかりましたよ。特に、実際の著作権使用料計算書の写しまで載せて、JASRACと音楽出版社がいかにボロもうけしているかを糾弾しているところは、ここまでとは知らなかったので、けっこうビックリしました。いやあ、音楽で喰ってくのは大変だなや。
 あと、面白いし当たらずとも遠からずだなと思ったのは、売れっ子プロデューサーに対する評価ですね。小室哲哉と佐久間正英についてはA級戦犯扱いです。そして小林武史に対しては王道派としてけっこう高く評価しています。私は佐久間さん、そんなに嫌いじゃないんですけどね。でも、たしかに現在進行形で言いますと、小林武史が一番地道に仕事してるかも。私のブログへの登場回数も圧倒的に彼が多いですね。
 最後は、日本の音楽教育への疑問が書かれています。絶対音感信仰や早期教育信仰の間違いを指摘していて、うんうんとうなずかれます。非常にまっとうな意見でした。結論も「バカ親ではなく親バカになれ!」で、まあ正しいわな。
 昨日、東京へ行く車中でNHK-FM「日曜喫茶室」を聞いていましたら、「アレンジの妙 カバーの粋」というタイトルの下、70年代の日本音楽はすごかったという話で盛り上がっておりました。お客様は、シャンソン歌手のクミコさん、作編曲家の渡辺俊幸さん、常連さんの轡田隆史さんです。マスターは、言わずもがな、はかま満緒さまです。その中で、特に印象に残ったのは、フォークソングバンドのドラマーから、さだまさしさんのプロデューサー、そして世界的な作編曲家になった渡辺さんのお話と作品でしたね。ミュージシャンの才能や楽曲の魅力を何倍にも増幅する仕事をしていらっしゃる彼の、その人柄が感じ取れるトークと音楽でした。
 ああ、音楽ってやっぱり出会いだなと。昨日の記事とも関連しますが、アンサンブルにせよ、曲作りにせよ、ある程度人にまかせることができるというのも、ミュージシャンの才能の一つであるような気がします。誰かとつながる方が世界が広がることだけは確かですから。ただ、誰と出会って誰とつながるか…これは運命なのかもしれません。宇多田ヒカルが今度は誰と出会うのか。別れは出会いの始めでしょうし、今後の彼女の活躍にも期待しましょう。あと、竹村さんの御活躍もひそかにお祈り申し上げます…。

Amazon 宇多田ヒカルの作り方

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