『つっこみ力』 パオロ・マッツァリーノ (ちくま新書)
ノーストレスで読めますよ、との触れ込みでしたが、私にはちょっと屈折したストレスが…。
そう、こやつなかなかやりおるなあ、正直負けてる…というストレス。あと、まるで自分の文章(の理想像)を読んでるようできつかった。マッツァリーノの文章、私の同様、ですます調講演体だし、内容もちょっとふざけつつ毒舌を利かせるタイプの文章なんです。で、それが一冊まるまる続くわけで、そりゃあ辛いですよ。お笑いのネタも数分で終わるからいいようなものを、あれが何時間も続いたら、ちょっときついっすよね。
最近、このブログにも文章が長いとの苦情が多く寄せられます。昔みたいに短くしてくれないと読む気がしないとのこと。すみません。文章が長くなるというのは、たいがい悪い前兆でして、調子に乗りすぎるほど日常が健康的か、自己添削(というか「削」だけですね)能力が欠落するほどに日常が病んでるか、どちらかなんです。どちらも結果はよくない。
マッツァリーノ氏もおそらく同様の状況と思われます。どちらかは自分同様分かりませんが、もしかすると自分同様両方なのかもしれません。とにかくもの書きとしては、あまり望ましい状態ではありません。
しかしそれでも、ホントに面白くて、悔しいけれど、自分が言おうとしていたこと、やろうとしていたことを、完全にやられてしまった。さらにそのレベルが、どう考えても自分の想定したものよりハイアーなので、もう完敗を認めるしかないですね。
パオロ・マッツァリーノ…似非イタリア人という設定自体、似非坊主と同様に「痛い」寸前です。その彼が、おふざけしつつ、ひそかに熱く語っているのは、もちろん「つっこみ力」についてです。「ボケ」と「ツッコミ」の「つっこみ」です。つまり、「メディア・リテラシー」「リサーチ・リテラシー」「論理」なんていうものを使って、いかにもお堅く、相手の間違いや欺瞞を減点発想で批判するより、それらを加点思考で笑っちゃった方がいいと…うん、そうその通りだと思います。
マッツ氏はこうも語ります。わかりやすく面白くなければ誰も振り向いてくれない、正しいことを難しく述べているだけでは、喜ばれるどころか嫌われると…うん、その通り。教師なんかやってると、ホントこれですよ。本文に「民主主義とはおもしろさのことである」とありますが、これもいつも私が言っていることそのものです。政治家に必要なのは演劇性です。何人を振り向かせるか。
「つっこみ力」を構成するのは、「愛」と「勇気」と「お笑い」だそうです。相手を不快にさせない「愛」と、権威にはむかう「勇気」と、正しさを面白さに変える「お笑い」。そして、それが目指すのは、究極のところ、お互い「てきとうな」平和な社会だと読み取りました。うん、かなり私の理想に近いですね。
テレビのテロップや、出版物の誤植などを見つけると、すぐに抗議の電話をする人がいます。私なんかは、「やった!」とばかり喜んで、その天然ボケをネタにしてツッコミを入れるんですけど、この両者の違いはいったい何なんでしょうね。私のごく身近にも、青筋立てて人の過ちを糾す方がおられますが、私は不思議でなりません。彼らからすると、私やマッツ氏の、こうしたフニャフニャな姿勢こそが人としての誤謬であり、かの怒りを増幅させる原因そのものらしいんですが(笑)。どうも何か根本が違うようですね。おそらく自分の「怒り」が自分にとってあくまで不快なものなのか、それともある種のカタルシスを生むものなのかの違いのような気もします。
それにしても、マッツ氏の経済学嫌いは相当のものですね。ちょっとやりすぎなくらいの徹底的批判です。つっこみのつもりで書き始めたけど、ついつい興奮して御自身のお嫌いな「批判」になってしまった。けっこうなヴォリュームのあるその部分は、正直読んでいて不快になりました。「愛」が足りない(笑)。
後半のデータ信仰、データ原理主義につっこみを入れるコーナーは面白かったのに。何か違うんだろう。結局、そのへんのさじ加減の難しさでしょうね。つっこみが行きすぎて、あるいは具体的になりすぎて、その矛先に「個人」を感じさせるようになると、途端にこちらは不快になるようです。
そのあたりは、このブログでも同様ですね。気をつけねば。からかいや揶揄と、いじめや中傷の境目というのは、実に微妙で難しいものです。
と、こんな具合で、なんとなく自分をいつもと違う角度から見たような読後感が残りました。そういう意味でも、非常に楽しくためになる読書であったと思います。この本は、読者を選ぶだろうなあ。拒否反応示す人もたくさんいそうだなあ。
あっ、そうそう、この本でも齋藤孝さん、ネタにされてました。人気あるなあ。
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» つっこみ力、読んでみた [わたしはわたしはわたしは・・・]
パオロ・マッツァリーノと名乗るこの著者は、似非イタリア人なんだそうだ。 読み進めるうちに、だんだんと嵌ってきて、一気に読めてしまう。 独特の講演調の語り口も軽妙で好感を持てるし、1章で読むのやめようと思ったが2章以降はおもしろかった。 あえて言えば、この本..... [続きを読む]
受信: 2007.03.28 11:42


コメント
コメントもいつも長くてすみません。
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.25 21:13
いえいえ、コメントはもっともっと長くて結構ですよ。
楽しみにしています。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.26 11:41