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2007.03.08

『ヴィオラとアコーディオンによる古楽』 (今井信子/御喜美江)

Bach / Dowland / Isaac / Machaut: Antiquities 
Nobuko Imai, viola / Mie Miki, accordion
Bi1229 アコーディオン奏者の御喜美江さんのCDは、以前チェンバリストの森洋子さんにお借りして聴いたことがありました。それはバッハのフランス組曲とコテコテのフランスものだったんですが、それはまあすごかったのなんのって。うわぁ、アコーディオンってこんなに表現力があるんだ、という以上に、森さんがおっしゃるとおり鍵盤楽器によるバッハ演奏として中身が濃い!たしかに勉強になりました。軽やかな装飾やアーティキュレーション、舞曲のリズム感など、バロック・ヴァイオリン弾きにも大きな刺激になります。この人は音楽家として本物だ、と思いました。
 一方の今井信子さん。もう言わずと知れた世界一のヴィオラ奏者ですね。今井さんもまたバロックに造詣が深い。バッハの無伴奏チェロ組曲全曲をヴィオラで弾いたCDは、そこらのチェリストによるものとは比較にならないほどに豊かな音世界を展開していました。こちらもジャンルを超えた本物中の本物。
 今日はその二人のデュオを聴きました。最初はこのCDの存在も知らなかったんです。たまたま出会ったというか、運命的に出会ったというか。
 授業でどこかの入試問題をやっていたら武満徹の文章が出てきた。それがいつものとおり非常にいい文でして、私はですねえ、いつも武満の文章を読むと彼の音楽を聴きたくなるんですね。それで、ナクソス・ミュージック・ライブラリーで何曲かピックアップして聴いていたんです。その中に今井さんが弾いた「鳥が道に降りてきた」があったんです。武満が今井さんのために書いた晩年の傑作ですね。それがものすごく良かった。ジ〜ンときちゃった。当たり前と言えば当たり前ですが、今井さんのヴィオラがいいんですよ。それで、急に今井さんのほかの録音も聴きたくなっていろいろ探していたら、このデュオがあったわけです。
 これもまた驚嘆すべき非常に興味深い演奏でありました。今井さんはヴィブラートを抑え、古楽器的な響きで演奏します。もともとヴィオラってモダンとバロックの違いを感じさせない楽器なんです(なんて、私自身のバロック・ヴィオラ?がSUZUKIブランドだったりするんで…)。今井さんのそれもまた、まるでディスカント・ガンバのような響きです。そして、御喜さんのアコーディオンはストリート・オルガンやミュゼットのようにも聞こえます。古楽としてごく自然だということですね。演奏されている曲は以下の通りです。

G.d. マショー
 Motet 23: Felix Virgo/Inviolata/Ad te suspiramus
 Rondeau 14: Ma fin est mon commencement
J.S. バッハ
 Concerto in the Italian Style, BWV 971, "Italian Concerto"
H. イザーク
 Amis des que
 A fortune contrent
J.S. バッハ
 Violin Partita No. 3 in E major, BWV 1006
J. ダウランド
 Lachrimae Antiquae
 Can she excuse my wrongs
 If my complaints
J.S. バッハ
 Gamba Sonata No. 1 in G major, BWV 1027
 Befiehl Du Diene Wege, BWV 244 - Herzlich tut mich verlangen, BWV 727

 お二人の共演ももちろんいいのですが、興味深いのはそれぞれのソロによる演奏です。御喜さんのイタリア協奏曲は圧巻!もしかして今まで聴いたイタリア協奏曲の中で最高かも。1、3楽章の、このドライヴ感はなんなんでしょう。そして2楽章の陰影の豊かさは…まさに筆舌に尽くし難い!完全にノックアウトされました。そして、今井さんのソロ。なんとヴァイオリンでバッハの無伴奏パルティータ弾いてらっしゃるじゃないですか!えっ?ヴァイオリンで弾くの当たり前じゃないかって?いや、そうなんですけど、そういう意味じゃなくて、ヴィオラ奏者である今井さんのヴァイオリンは初めて聴いたんですよ。ヴァイオリン弾きがヴィオラを弾くというのはよくありますし、またよくある状況に陥りがちなんですが、その逆だとこういうふうになるんですね。ちょっと新鮮な感じがしました。モダン・ヴァイオリンでもこういう音楽作れるんじゃん(笑)。
 あと、ちょっと個人的に運命的なものを感じたのは、最後に収録されているコラールの編曲です。今月の25日にまさにこういうコンサートをやる私としては非常に刺激になりました。同じことを考えて同じような編曲をしている人がいるんだ。そして、私たちもBWV244から「Befiehl Du Diene Wege」をやるんですが、BWV727の存在は忘れてました。これもやりたいな。楽譜を探してみます。いやあ、あまりのナイス・タイミングにちょっと鳥肌が立ちました。

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コメント

 ミュゼット(ハーディガーディではないほう)のCDを持っています。さらに、フランス系ばかりでなく一般にアコーディオンは自然にイネガルをしやすいようで、リズム的にも古楽の耳には心地よいですね。御喜さんの演奏もそうなんでしょうね。
 ヴィオラがモダン楽器と古楽器との差を感じさせないということにも全く同感ですし、今井さんのヴァイオリン演奏にも興味あるなあ。

 このCDからさらなるインスピレーションを得てのコンサートに期待しております。
 

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.09 12:37

伯爵さま、こんにちは。
このCDはぜひお聴きいただきたい。
今井さんもうまいけど、なんといっても御喜さんが…。
なんだかアコーディオンやりたくなっちゃう。
持ち運べる鍵盤楽器であれだけのことやられちゃうとですねえ、現代のピアノとか何なの?って感じですw

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.09 14:10

ようやく注文していたCDが到着しました。
全部良かったのですが、イタリア協奏曲には圧倒されました。実は、バッハの中では私、なぜかこの曲にだけは興味が薄く、いまままで、なぜ傑作といわれるのかわからないでいたのですが、この演奏でそのすばらしさをようやく実感しました。
 勿論奏者の才能にも寄るところが大とは思いますが、アコーデオンという楽器が、鍵盤を押した後からでも、音に心をこめることができるからでもあるのでしょうか?

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.04.30 20:31

あのイタリア協奏曲、すごすぎですよね!?
私も全く同じで、この演奏に出会う以前は今一つ感動できなかったんですよ。
ヴァイオリンもああいうふうに弾けたらいいですよね。
最近、全然違うジャンルの音楽家や違う楽器から、古楽のヒントを得ることが多いんです。
なんとなく行き詰まっていたので、救われた気がしています。
久々に自分から、弾きたい!という気持ちになってきました。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.04.30 20:47

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