『世界最強の男はこうして生まれる〜バーリトゥードの世界〜』 (NHKハイビジョン特集)
おいおい!いきなり「あはれ」対「をかし」、つまり「武士道」対「オタク道」、すなわちノゲイラ対ジョシュかよ〜!!NHKでこの試合を観ることになるとは…。その後もショウグン対中村、シウバ対桜庭など、PRIDEのリング満載です。いやはや、こういうオープニングになるとは、ちょっと想像してませんでした。タックル狙ってくるかな、今日は様子見から入ろうと思ってたら、いきなりゴングと同時にいいパンチ数発いただきました。NHKにKO負けですね。どうもきな臭い事情から地上波から姿を消したPRIDEが、こういうふうに国営放送で復活するとはね。ハイビジョン特集は地上波でも再放送されることが多いですから、それこそ地上波復活と相なるかもしれません。
今日はですねえ、格闘技ファンにとっては非常に忙しい日だったんです。K-1GPもありましたし、ノアの武道館大会もあった。その他にも新日本プロレス、DRAGON GATE、大日本プロレス、DDT、みちのくプロレス、大阪プロレス、K-DOJO、JWP、修斗などが重要な興行をしました。特に困ったのは、テレビで何を観るかです。今日はスカパーの無料開放日だったので、ノア好きの私は当然G+を観るべきなんでしょうが、裏の大イベント、すなわちこのハイビジョン特集「世界最強の男はこうして生まれる〜バーリトゥードの世界〜」が夜7時からありましたんで、後で地上波で観ることができるであろうノアはあえて観ずにですねえ、というか、途中まで観ちゃうとつい全部観たくなっちゃうんで、7時まではGaoraの全日本プロレスを堪能していました。ああ、もうこの時点でかなり複雑な事態、私としてはかなり無理のある事態です。デジタルチューナーは一つしかありませんからね。一方は録画して…というわけにもいかないのです。
ということで、無事?この番組に突入いたしまして、そして冒頭に書いた通りのKO負けでした。全体としてやはりNHKらしい作りとなっており、非常に勉強になりましたし、いろいろと考えさせられる内容でしたね。ある意味総合格闘技に対する偏見も多少は消えたかもしれない。
番組のナビゲーションは戦うカメラマン井賀孝さん。前半は、なぜブラジルから総合の強者が生まれるのか、その理由を400年前までさかのぼって解説してくれました。なるほど、アフリカからの奴隷たちの反抗の形としてカポイエラが生まれたんですね。そこに日系移民の持ち込んだ柔道や、その他外国から入ってきたレスリングやボクシング、ムエタイなどが融合してゆき、現在のような「なんでもあり」のバーリトゥードに成長したと。
途中、寝技関節技中心のブラジリアン・トップ・チームや、立ち技打撃技中心のシュート・ボクセの道場、グレイシー・バハなどの様子が紹介されます。ふだんどうしても選手だけに注目しがちな私、例えば前出の道場でいえば、単純にノゲイラとシウバというそれこそ寝技と打撃というコントラストとしてしか彼らを見ていなかったんですか、それぞれの練習風景や人生観、格闘技観などが語られると、なるほどこれは今まで表面しか見てこなかったんだな、ということを痛感させられるのでした。そんな間にも相変わらずノゲイラ対ミルコなどPRIDEの映像(音声もそのまま)が挿入されます。そこに宝田明さん(!)の解説が乗るんですから、これはたまりませんなあ。
後半は、世界一を夢見る若手、BTTの新星ホジマールに焦点を当てます。彼の生い立ちや普段の生活、練習風景、試合風景を通じて、彼らがなんのために闘っているかを学ぶことができました。
神に祈り、神に感謝し、母に報いようとし、兄弟や恋人のために闘う。私は、そこに美しい精神性も見出しましたが、ある意味それ以上に、日本を夢の島のように思う彼らの心の構造に、なんというんでしょうかね、本当の弱肉強食でしょうか、資本主義の原理や世界の不条理というようなものが見え隠れしているような気がしました。ちょっと複雑な心境ではありましたね。成功したほんの一握りの人々には華々しい未来が待っているかもしれない。しかし、それ以外のほとんどの夢は夢のままですし、成功者の現実の栄華もほんの一時のもので、再びうたかたのように消えていくということも、実際私たちは知っています。10年前の、いや5年前のヒーローが今何人この世界で生きているでしょうか。ホジマールの実力は相当のものと見ました。彼も近い内に日本のリングに上がるでしょう。彼を応援したいな、という気持ちにはなりましたが、一方で変に心配になってしまったのも事実です。ハイリスク、ハイリターンの世界はこわい。
この番組を観たあと、深夜ノアの中継を観ましたが、う〜む、やっぱり私はプロレス的世界の方がいいかな。60歳まで現役でいられるプロレスに、私は単なる弱肉強食ではない「優しさ」を感じるのでした。それにしてもさすがNHK、いろいろな意味で考えさせる番組を作りますね。ある意味NHKは市場の外にあるからですな。
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コメント
あやうく見逃すところだった、この番組。
まずは番組表から見つけてくれてありがとう!
サク研究開始から2ヶ月(あ・・浅!! orz)、
貴重な資料であります。落ち着いた作りが
良かったですね。さすがNHKです!
投稿: 庵主セコンド | 2007.03.05 12:50
うん、なかなか良い番組でしたな。
サクも向こうでいろいろ学ぶんだろうが、きっと向こうの人もサクからいろいろ刺激を受けると思うね。
ま、サクもそろそろ本来のプロレスの方で活躍してもらいたいな。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.05 13:08
見逃しました。残念!
宝田明さんとは!NHK様!脱帽です!
メキシコの留学生にメキシコのほうがアメリカよりずっと競争社会だと聞きました。4千人入学させて、卒業生200名、しかもその業界でいいポジションを得るのは30名というすさまじさです。それでも、ルチャリブレがあるし。
いったいブラジルには、そういうの全くないんでしょうか。あれば救いですね。
阿吽の呼吸が通用しない社会はさぞ辛い社会でしょうね。阿吽の呼吸でコネ、談合というのも頭に来ますが、日本もこの先、角を矯めて牛を殺さないようにしないといけませんね。
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.05 13:14
そうなんですか!?メキシコってルチャのイメージから、もっとノホホンとしてるんだと思ってました。
でも、ああやって現実とのバランスとってるのかもしれませんね。
それにしても、角を矯めて…ペコちゃんじゃありませんが、牛いじめもほどほどにしないと、なんか息苦しいですよねえ。
やっぱり音楽みたいに緩急両面のバランスなんでしょうかね、何事も。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.05 13:25
あ、「未来世紀ブラジル」の題名は曲名に由来したのではなくて、実はブラジルが厳しい疎外社会だということをテリー・ギリアムがほのめかしていたのかもしれませんね。
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.05 15:00
なるほどなるほど。
たしかにあの映画の違和感は、ブラジルに対する我々の勝手なイメージに起因するのかもしれません。
ところで、あの映画で音楽を担当したマイケル・ケイメンですが、メタリカと共演!してるんですよね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.05 15:48