『きょうの猫村さん1・2』 ほしよりこ (マガジンハウス)
ちょっと遅ればせながら読んでみました。最近ヒッキーでコモラーな生徒が貸してくれました。やつが貸してくれるマンガはワタクシ的にはずれがない。もっといろいろ見つけてきてくれ…てか、学校来い、って業務連絡してどうすんだ(笑)。
さて、これ。たしかに面白かった。理屈抜きに楽しめました。世の中では「癒し系」と分類されてるんでしょうかね。たしかに癒されると言えば癒される。でも、もうちょっと正確に言いますと、ノスタルジーですね。時代設定だと思うんですよ、基本は。ツッパリ尾仁子や、その友人のスタイルを見て分かる通り、70年代後半から80年代はじめの風俗ですね。結局、そういった高度成長後の安定成長期ですかね、あの独特のまったり感に対して感じる郷愁なんじゃないかなあ。少なくとも私はそういう世代なんで、そう感じましたね。
猫の家政婦「猫村ねこ」さんが派遣された犬神家(この響き自体ノスタルジーですね)は、けっこう複雑な家庭事情です。まさに絵に描いたような問題を抱えた金持ちさんです。そのステレオタイプな時代的歪みを体現する「家族」に、異様に純粋で人情味に溢れ、ちょっとおせっかいな猫が家政婦として侵入してくるんですね。
で、結局その「猫」は、ちっとも「猫」ではなく(まあ姿はまんま猫だし、挙止動作は猫っぽいけれど)、もっと古い佳き時代の「人」なんですね。それが具体的にいつの「人」なのか分かりませんが、自分のことを二の次にして万人に尽くす、全ての人を信じる、そして淡い純粋な恋心もあったり…そう、なんとなく時代劇のヒロインみたいなんですね。私たちはこのマンガを時代劇を見るように読むわけです。
ところで、この作者の絵はどうでしょうか。私は読み進むうちに、すっかりとりこになってしまいましたよ。これは下手とかヘタウマとかいう次元ではない。巧いっす。この人はちゃんと勉強した人でしょう。顔や上半身はわざと崩し気味に描いてますが、足が巧いですよ。猫の足、それも二足歩行させるわけですからね、けっこう難しいと思うんですが、実に巧みに描いています。人間の足も見事。つまり、絵のベースがしっかりしてるので、全体として安定して見えるんですね。構図なんかの工夫も実は緻密に行われているし、なかなかの巧者ですな、ほしよりこさん。
あと、コマ割りというのがありませんし、フォントも鉛筆手書きだけですから、非常にシンプルなんですね。こういうマンガは久々です。昔の4コママンガを見るような、そういう郷愁というのもありますね。
このマンガは、ネット上で1日1コマずつ公開されているらしいのですが、やはりこういうふうにちゃんと紙の本として手触りとともに楽しむのが一番でしょうね。デジタル世界が生んだアナログ的名作というわけですか。気に入りました。
Amazon きょうの猫村さん1
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