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2007.01.20

『ぼく。−桜庭和志大全集』 桜庭和志 (東邦出版)

Boku 昨日の記事が大いに盛り上がり、さて「草枕」でも読み直すか、でもセンターも解かなきゃなあ、と思っていたら、なんだよ〜、えっ?これ読めって?…そう、この前の記事でも書きましたが、カミさんのにわか桜庭熱が異常です。いつのまにか、絶版になっているはずのこの本の新古本を手に入れているではありませんか!そして、無理やり読めと。
 プロレス好き、また桜庭好きの私としては、そりゃあ読みたいですよ。でも、今はちょっと忙しいんで、また今度…。それでも、カミさんは攻撃の手を緩めません。こちらが「タイム!タイム!」と言っても、「試合中タイムと言われてやめる選手はいない!」とばかりに(あっこれはヌル山の発言か…笑)ラッシュをかけてきます。
 で、仕方なく読み始めたら…面白い!そして感動!
 今、私の気持ちはすっかりプロレスラーです。いろんなところで生まれ変わったらプロレスラーって言ってきましたけど、その憧れは今決意に変りました!
 この本を通じての私の印象、心に残った言葉は、「うんこ」「いいですよ〜」「楽しい」ですね。これはある意味私の座右の銘とも一致します。
 天才たちの自伝には「うんこ」「おしっこ」譚が溢れています。いちいち例を挙げませんが、これは古今東西を問わずたいがい共通している。不思議です。それについては、いずれ分析、解釈してみたいと思います。
 「いいですよ〜」というのは、誰かに何かを頼まれた時の反応です。どんな、面倒なこと、想定外のことを要求されても、一瞬「えっ?」と思ったとしても、必ず「まっ、いいか」「いいですよ〜」となる。これは素晴らしいことです。今の彼を作っているのは、そういった彼の姿勢なんですね。私も何度か書いていますけれど、想定内のことでは自分は成長しないものです。「えっ?」ということ、たとえそれが「無理だよ〜」ということであっても、あるいは(たまにしかありませんが)「やった〜」ということであっても、とにかく想定外のことが自分を変えていくんですね。彼はそういうサジェッションをものすごくたくさん受け入れている。そして、自分を想定以上に大きくしてきた。
 実は私も「頼まれたことは断らない」という方針で生活してるんです。仕事上も、私はものを頼みやすい雰囲気があるのか、いろいろなことが飛び込んでくるんですが、そのたびに「あっ、いいですよ〜」って言うことにしてるんです。いや、まじでそのおかげでいろいろと出来るようになったことがありますよ。だから、「無理無理」と言っていろんなことを避けている人を見ると、ああかわいそうだなあって思います。
 私、よく桜庭に似てるって言われるんですよ。顔がね。でも、もしかすると、そういうオーラも似てるのかもしれない。もちろん格が違いますが、もしそうだとしたら、ものすごく嬉しいことです。
 「楽しい」…これも重要です。「楽しい」には、自分にとっての「楽しい」と、相手にとっての「楽しい」があります。彼はその両方を人並みはずれて重視している。自分の好きなことだから練習は「楽しい」。どんなきつい練習もいやだと思わないと言います。そして、究極はお客さんを楽しませるというプロ根性。それは本当に徹底しています。総合の試合でも、ああやってある意味メチャクチャな動きや表情をして、お客さんを楽しませる。ある意味勝ち負けだけの、殺伐とした世界になりがちな中で、ああやって自分も楽しみながら、お客さんをも楽しませる。これぞ「プロレスラー」ですよ。ま、対戦相手はむかつくでしょうけどね。
 私もこういう仕事がしたいですね。今の仕事でもある程度それを実行しているつもりですが、やっぱりリングの上がいいじゃないですか!ああ、来世が今から楽しみですよ。とりあえず、現世ではそのための修行をして…と。そんなこと言ってたら、カミさん、今からでも行けるんじゃないの?だって。なるほど!たしかにプロレスの世界は広く深い。スーツにネクタイにメガネ、ヒョロヒョロのレスラーでも何でもありですから。年齢も関係ないし。お客さんを楽しませるためだったら何でもしますよ。
 ま、それは半分(!?)冗談として、とにかく彼の人間性の大きさには驚きますね。こだわりがあるようで、実は我執がない。そして、「今の自分があるのは相手の選手のおかげ」と素直に言える、あの心のポジションと構え。ああ、この人は心が開いてるんだなと。
 最後の最後の言葉が感動的(?)です。引用します。
 『なんでもそうですけど、限界とか底とか、そういうものはないと思うんで。風船みたくどんどん膨らんでいくもんだと。水だとコップに入れれば、いずれは溢れちゃう。まあ、風船も割れちゃいますけど』
−じゃあダメじゃないですか。
『ああ、そっか、最後にいい話をしようとしたのに…』
 というわけで、想定外に押しつけられたこの本に、いろいろなことを教えられ、インスパイアされました。やっぱり「コト(内部)」より「モノ(外部)」だな(また出ちゃった)。

Amazon ぼく。−桜庭和志大全集

追伸 クラッシャー・バンバン・ビガロ選手がお亡くなりになったとのことです。久々にこの本で名前を見て、いいレスラーだったな、元気かな、と思った矢先の訃報でした。45歳。レスラーって本当に太く短くです…。冥福を祈ります。

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コメント

タイム要求されてるのに強制してしまいすみませんでした!!今度は
直接目を見て謝りたいですw (←なーんて、誰でしたっけ?)
人生はチャレンジだ(By 鶴田)!ぜひともネクタイとメガネの格闘家になってください!!!

投稿: サク似庵主のセコンド | 2007.01.21 17:36

じゃあ、その時はセコンドお願いしまつ。
鈴木健想と鈴木浩子みたいな関係が理想ですな。
てか、なんで身内で会話してんだ?

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.21 17:49

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