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2007.01.13

『無伴奏ヴァイオリンの為のソナタとパルティータ(バッハ)』 エレーヌ・シュミット

J.S.BACH「Sonatas and Partitas for Solo Violin」 Helene Schmitt, violin
Sei Solo a Violino senza Basso accompagnato
Alpha082 バッハの無伴奏かあ。いろいな意味で厄介な曲ですね。これぞというおススメ盤がなかったせいもあって、この、私にとっても、世界にとっても、いや宇宙にとっても最も重要な音楽作品について書くことがあまりありませんでした。
 ちょっとひねくれて、Vito Paternosterによるチェロ版を紹介したりして。いや、あれはあれですごいんですけどね。あと、無伴奏チェロの方の「おかしさ」については、こちらに書きました。チェンバロ版はアスペレンの演奏が素晴らしかった。別の作曲家の無伴奏に至ってはこんな調子(笑)。
 てな感じで、ストレートに書いたことがなかったんですね。聖書について語るのは勇気がいります。でも、今日はほんの少しだけ書けそうな気がするんですよ。
 今まで比較的よく聴いたレコーディングは、アーヨ盤、クイケンの新旧両盤、クレーメル盤でしょうかね。ほかもいろいろ聴いてるんですけど、どうもしっくり来ないものが多かった。だいたい、しょっちゅう聴くようなものじゃない。あんまり楽しくないですよね。一方、怖い物知らず、恥知らずの高校時代なんかは、私もよく弾いていて、近所や学校内に公害をまき散らしてましたが、物心ついてからはほとんど弾いていません。てか、弾けません、たぶん。まあ、こんな具合でした。これはもう頭の中で理想的な演奏を響かせるしかないのかな、と思っていたんです。
 ところが、最近、ちょっと瞠目というか傾聴に値するレコーディングを聴くことができたんです。それがこのシュミット盤です。2005年に発売されていたんですね。ちょっとマイナーなレーベルALPHAから出ています。私は例によってNMLで聴いたんですけど、非常に自分の感性にぴったり来た。おお、やっと出会えたという感じだったんです。
 どうも、バロック・ヴァイオリニストの傾向といたしまして、ひたすらモダン楽器のカウンターとして「滋味」や「古雅」を目指す派と、ウルトラ・モダンとでも言いましょうか、ひたすら自由さを強調する派とにクッキリ二分されているような気がしていたんですね。もちろん、そんな簡単に言ってしまってはいけないんですけどね。あえて分かりやすく。で、自分の演奏も含めて、現代日本における西洋古楽器の意味と価値って…なんてことは考えませんが、なんか迷いがずっとあったんですね。とにかくしっくり来ない。
Alpha090 特に無伴奏に関しては、楽器の特性や奏者の技術的問題もあるのか、なかなかこれだ!と呼べるものが出てこなかった。表現の幅と言いましょうか、鬼気迫る迫力でモダンに完全に負けてしまっていた。これはもうどうしようもないのかな、などと思っていました(昔はゲーベル盤を期待してたんですけどね)。
 ところが、このシュミット盤はどうでしょう!もう楽器うんぬんとか、様式感うんぬんとか、そんなことを超えた感動をもらたしてくれたのです!冷静に聴けば、オリジナル楽器らしい柔らかく繊細な音色と響きとも言えましょう。でも、やっぱりそんな言葉では表現しきれない、なんというか、作品と楽器と奏者と、そして私が一体となって、教会の聖堂に響き渡るような感覚。
 フランスの女流バロック・ヴァイオリニスト、エレーヌ・シュミットについては、私はあまりよく知りません。ただ、このALPHAに録音しているいろいろな作品を聴きますと、非常に「語り」の上手な奏者であることが分かります。ここでも、一言一言かみしめるような、比較的ゆっくりとしたボウイングでバッハを語っていきます。勢いにまかせるようなところは微塵も聞かれません。先ほど述べた総体としての響きがしっかり立ち上がるのを確認しながら運弓、運指しているようです。ですから、よく陥りがちな、重音の数が増えるとそのまま音量も増すというような、子どもじみたことにはなっていません。音楽の流れのままに強くなり弱くなり、早くなり遅くなり、駆け抜け立ち止まり、そして舞踏し瞑想する。
 どの楽章、舞曲もいいんですけどね、やっぱりシャコンヌでしょうかね、特長が出ているのは。引き込まれますね。ちょっと試しにエアギターならぬエアヴァイオリンをやってみたんですよ。そうすると、彼女がいかに豊かなボウイングをしているかがわかりますよ。はたから見れば怪しいでしょうけど、なんとなく目をつぶってエアしてると、自分が弾いてるような錯覚に陥ります。これもまた共鳴の一つのあり方なんでしょうか。
 ただ、シャコンヌでは、彼女そうとう入れ込んでまして、キース・ジャレットみたいに声をもらすんです。呼吸だけでなくて喘ぎ声(失礼!)がもれちゃうんです。こいつを聴いた途端、私はすっかり目が覚めてしまいましたよ。さすがにそこまではエアできなかったっす(笑)。
 とにかくお聴きになられることをおススメいたします。好き嫌いは人それぞれでありましょうが、歴史的な名演奏であることは絶対にたしかです。MNLにご加入の方は、ALPHAにある彼女の他の録音もぜひお聴き下さい。カルボネッリかっこいいですよ。
 
Amazon 第1集 第2集

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コメント

 私もようやく、肩の力を抜いて何度も聴く事のできる無伴奏の録音にめぐり合いました。すっと直接心に入ってくる演奏なんです。フランソワ・フェルナンデスの演奏しているFlora盤です。
 彼の音色は、美しいし、品もあるし以前から好きだったのですが、技術的に困難な曲だと、なにか聞き手をも不安にさせてしまうところがありました。しかし、どうやら新境地に到達したらしく今回の録音ではそれは完全に払拭されています。
 でもシュミットもよさそうだなあ。CD物欲の煩悩が消えることのない私は、買ってしまうでしょうね。声も聞きたいし・・・。

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.01.15 14:52

ああ、そういえばフェルナンデスの聴いてません。
今でも、ルビオの楽器使ってるんでしょうかね。
私の楽器はフェルナンデスと同じのにしてくれってルビオに頼んだんです。
結果として同じかどうかはわかりませんけど。
フェルナンデス盤探して聴いてみますね。
シュミットは「萌え」です!ぜったいいいですよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.15 16:24

今度、アレグロミュージックが招聘するようです。
レオンハルトの演奏会で、アレグロの人がこのCDを売っていました。なかなか2枚そろって見つからなかったので購入しました。いいですね。音色が私にとっては肉感的です。音域によって音色が変わるところもあって、これは美空ひばり的かな?
そうそう、レオンハルト様も弾きながら、声を漏らしてましたよ。ホール中央でしたが聞こえてきました。

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.06.27 21:40

伯爵さま、おはようございます。
レオンハルト、良かったみたいですねえ。
うらやましいです。
シュミット、たしかに美空ひばり的かもしれません。
いいですよね、彼女。
生で聴いてみたいな…声…じゃなくて音楽をですよ。
私たちも声を漏らしてみましょうか(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.06.28 08:18

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