『ヨイトマケの唄』 美輪明宏(丸山明宏)〜いろいろと
日テレ『極上の月夜』ご覧になりましたか?そして、美輪明宏さんの『ヨイトマケの唄』フルヴァージョンお聴きになりましたか?ウチでは、カミさんと私、号泣でした。感想を言葉にするのもおこがましい。2年前、ディナーショーで感じたことと同じです。そちらをご参照ください。
ああやって、テレビで本当の歌を、本当の芸をどんどん見せてやって下さい。歌番組とかでもっとやっちゃってほしい。おそらくあれを観て聴いて心動かされない人はいないでしょう。世代や時代を超える歌と言葉、そして存在そのもの。美輪さんもよくおっしゃっていますが、とにかく本物に触れなければ。教養とはそういうものでしょう。そして、それは人を輝かせる。オーラってそれだと思います。
丸山明宏の「ヨイトマケの唄」が作られたのが、私が生まれた年です。ちょうどその頃から「ヨイトマケ」は消えていった。高度経済成長によって、機械化によって、あのかけ声は消えていった。
「ヨイトマケ」という言葉に私が初めて出会ったのは、たぶん中学生の時だと思います。太宰治の「斜陽」に出てくるんですね。意味がわからなかった。女性の仕事のことだろう、ということくらいしかわからなかった。もうその頃は死語となっていたんですね。古き悪しき時代の象徴のような言葉だったのでしょう。丸山の唄も長いこと民放では放送禁止だったとか。土方、いじめ…ただそういう言葉に対する隠蔽だけがなされた。あの歌の、その背後にある、普遍的な無条件の母子の愛、労働の尊さは無視されて。
そう、「ヨイトマケ」とは、地ならしのために、大きな杭のような丸太のようなものを、みんなで綱を引いて持ち上げて落とす作業です。主に女性がそれに従事した。その時のかけ声が「ヨ〜イトマ〜ケ」。のち、その仕事自体を「ヨイトマケ」と呼ぶようになったとか。
もともと、「よい」というのは何か力仕事をする際のかけ声によく使われます。あるいは、みんなで息を合わせる時に。「よいしょ」「よいこらしょ」「よいやさあ」「よいとな」…。「よーいどん」というのも「用意」ではなく「よい」の要素もあるのです。かけことば。手打ちの「よ〜」や「えいっ」とか「えいやさ」とか「じょいやさ」なんていうのも派生系だと思われます。パンチのための「引き」「吸い」「ため」です。
音楽で言いますと、アウフタクトというやつですね。バッハの好んだ「♬|♪」というリズムは「よいしょ」です。ブランデンブルク協奏曲の3番なんてずっと「ヨイショ、コラショ」って言ってます(笑)。いや冗談じゃなくてそういう呼吸の曲ですよね。それを意識しないとダメ。
だいぶ話がそれてしまいましたが、考えてみると、こういったかけ声をかけて、みんなで力仕事をすること自体、極端に機会が減っているような気がします。もちろん、子どもたちがそういう大人たちの仕事ぶりを見る機会もほとんどありません。音楽に限らず、「息を合わせる」というアンサンブルの醍醐味が、この世の中からどんどん消えていくのかもしれません。共鳴、共振、増幅…そこに感動や愛情が生まれるような気もするのですが。
| 固定リンク
「育児」カテゴリの記事
- 【戸塚宏】令和の今、体罰を語る(2024.08.20)
- 『日本の鉄道車両 完全図鑑 2024ー2025年』 (GAKKEN MOOK)(2024.04.17)
- COTEN RADIOショート やなせたかし編(2024.04.15)
- 秋山歌謡祭2024(2024.03.27)
- 桜田小学校跡にて(2024.03.05)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2024.08.11)
- 凪良ゆう 『流浪の月』(Audible)(2024.06.25)
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「芸能・アイドル」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- こども歌舞伎「勧進帳」(2024.06.22)
- 冨田靖子 『グッドバイ夏のうさぎ』 山名兌二 監督作品(2024.06.18)
- 『彼岸花』 小津安二郎 監督作品(2024.06.16)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 全日本プロレス祭 アリーナ立川立飛大会(2024.08.17)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
「文学・言語」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
- 上野三碑(こうずけさんぴ)(2024.08.06)
- 東北のネーミングセンス(2024.07.28)
コメント
先生こんばんは。
ヨイトマケは、“ヨーイトマーケ”だったんですね。。なるほどー。
美輪明宏さんは、なんであんなに、普通の人と違うのでしょうね。
まるで・・マナティとか、すごい野生生物のようです(最高のほめ言葉です)。
8年ぐらい前にコンサートに行き、また、テレビで歌う姿を見て、見入りました。
知っている言葉が少ないので“すごい”としか表現できませんが。。
ステージ上は、生のお花で埋めつくされていて、「花から発する何かよいもの(気?)は、そのパワーは大きくて、造花などには真似ができない」というような意味のことをおっしゃっていました。
最近私もやっと植物の力を感じるようになってきました。
もっと感じられるように、なれればいいなあ。
投稿: カズ | 2007.01.17 23:46
美輪さんはホントに神に近いですね。
尊敬しています。
おそらくあの方は常に心が開いているんだと思いますよ。
自分からいろいろな境界線を引いたりせずにいるから、たとえば花からのメッセージも受けとれるんではないでしょうか。
そうなりたいですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.18 06:11