« 『ヨイトマケの唄』 美輪明宏(丸山明宏)〜いろいろと | トップページ | 『〈対話〉のない社会 思いやりと優しさが圧殺するもの』 中島義道 (PHP新書) »

2007.01.16

『桜庭和志スペシャル〜プロレスラー最強伝説〜』(DVD)

Saku 最近カミさんの腐女子化が進んでいます。いや、広義の腐女子ですよ。BL系ではありません。ちょっと痛いミーハーな女ってことです。これは、腐女子研究家としては嬉しいことでありまして、身近に研究対象があるというのは実にありがたい。
 で、いろいろな方面に腐っているんですけど、最近面白いのが、「桜庭和志」に対する「萌え(=をかし)」であります。
 大晦日の「秋山対桜庭」については、あえてあの日は書きませんでした。桜庭ファンとしては、いろいろ言いたいことだらけだったのですが、どうもこれはきな臭い、年明けに何か起きるな、と予感したために、あえて安易な発言は避けたのでした。
 結果、皆さんも御存知の通り、ああいうことになりました。というか、あれで終わらせていいのか!という感じですよね。しかし、いまだに騒いでいるのは2ちゃんの心ある(?)方々だけです…かと思いきや、日に日に熱くなるヤツがいるじゃないですか!
 それが、ウチのカミさんなのでした。特に、朝ズバッ!におけるみのもんたの発言、あれが彼女のハートの原子炉に火をつけてしまったのです。たしかにあの発言はいけません(一方で冷静にそれも世の中の事実だよなと思う男の私もいましたが)。あれですっかり「サク陛下万歳」になってしまった家内は、まあ同郷ということもあるんでしょうが、私以上に彼に燃え、いや萌えはじめてしまったのです。2ちゃんの関係スレに書きこみまくるわ、TBSに電話するわ…トホホ。
 こういう時の私の気持ちというのは実に複雑です。いや、嫉妬とかそういうのじゃないんですよ。桜庭に似てるってよく言われますし(笑)。なんていうか、例えばレミオロメンの時もそうだったんですけど、最初は私の方がファン度が高かったのに、いつのまにか逆転されてるってやつですね。なんか妙な気分になって、ある意味こっちは冷めてきたりして。ま、別にいいんですけど。
 で、カミさん、いきなりTSUTAYAでこれを借りてきちゃった。あ〜あ〜、総合の、それもノーカット版はたるいよ〜。プロレスしか観たことない人にとってはホント苦痛だよ〜。
 もともと、私も彼女も「プロレス派」で、総合には対してはどちらかというと否定的だったんです。ただ、たしかに桜庭だけは「プロレスラー最強」を標榜し、ただ勝利を目指すのではなく、お客さんを喜ばせる試合をするということで、好きでしたよ(そういう意味では世界最強のオタク、ジョシュも好きです)。でも、DVDまで観ようとはねえ。YouTubeで充分。
 で、いちおう観始めたんです。それもなんと、最初から実況なしで観てしまった。これにはさすがにカミさんも驚いていました。プロ野球の試合よりもアウトオブプレーの時間が多い(笑)。
 特に名勝負として名高いホイス戦なんて、有名なシーンだけ集めれば、たしかに面白いけど、その他のシーンは私には正直わかりません(ゴメンナサイ)。
 で、ほらね、でしょ?って感じで、その夜のノアの中継を観て、やっぱりプロレスは素晴らしい!ということになってしまったんです。
 ところが、ところがです!カミさんがこのDVDの真の楽しみ方を見つけてしまったのです!さすが腐女子!
 そう、副音声です。副音声というか、このディスクは、私たちが観てしまったネイキッドだけでなく、ふつうのテレビの実況や、桜庭自身による解説?が聴けるんですね。その桜庭が面白い!というか、ひどい!というか、すごい!というか…。
 なんなんですか?これは。この緊張感のなさは。ホイス戦なんか、すごいですよ。まあ、ある意味緊張の連続の90分なんでしょうね。テレビ実況はそういう感じですし。それが、まあ桜庭は全然関係ない話ばっかり。途中でラーメンの出前は届いて食べ始めるし、トイレで中座したと思ったら、ずっと帰ってこなくて、その間無音だし(笑)。
 いやあ、まさに桜庭和志ここにあり!って感じですね。いいキャラですよ。秋田の朴訥なおっちゃんです。まさにそこが彼の魅力であり、殺伐としかねない総合に湧いた泉なんでしょうね。
 かと言って、ものすごく面白いというわけではありません。途中で疲れてきます。あんまりにアホらしくて。映像がなければ単に男同士の雑談を盗聴しただけって感じですよ。進行役の山口さん!正直GJです。
 ただですねえ、私はこのくっだらない会話を聞きながら、いろいろとひらめくことがあったんですよ。モノ・コト論(物語論)的にね。
 桜庭さんや山口さんが何回か言ってました。表の実況では今ごろ「日本から海を渡った柔術が…」とか語ってるんじゃないかとか、「ここはこういう物語を作りやすいシーンですね」とか、「ネットでこう書かれるんじゃないの」とか。なるほど、つまり、当の本人がなんにも考えていないこと、つまり真実ではないことを、他人が勝手に語って(騙って)しまうんですね。
 これは、私が考える「モノガタリ」そのものです。私の定義では「モノ」は「(自己にとっての)外部」です。それを「カタル」。「カタル」というのは「コト」化する行為の名称です。つまり、(自己にとって)内部化するんですね。その時に例えば「コトノハ」というメディアを使う。
 ああ、こうして真実(マコト)ではなく、事実(コト)が語られていくんだなと。また、歴史や伝説や文学が騙られていくんだなと。なんか、腑に落ちたんですよ。
 桜庭さんの偉大なところは、ルールやスタイルにこだわらないところです。別にどっちでもいいとよく言います。それなりに面白いことをやればいいじゃんと。彼の魅力はそういうところです。他者との関わり、あるいは自己にとって想定外の「モノ」を楽しんで、新しい「物語」の素材である「モノ」を新たに産み出していく。彼はまさに芸術家、クリエーターなのでした。
 というわけで、私もすっかり彼を見直しました。腐女子の突発的な行動のおかげで、こういうこともあるわけでして、なるほど人生は面白い。心を開いていれば、なんでもプラスになるということですかな。では。

Amazon 桜庭和志スペシャル

不二草紙に戻る

|

« 『ヨイトマケの唄』 美輪明宏(丸山明宏)〜いろいろと | トップページ | 『〈対話〉のない社会 思いやりと優しさが圧殺するもの』 中島義道 (PHP新書) »

スポーツ」カテゴリの記事

モノ・コト論」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

 いやー。私も秋山には疑念を持ち続けています。継続して追及していかねばなりません。
 ところで、雌伏たった一日にして、庵主様、エネルギーが溜まりまくっているご様子。次々に繰り出される連続技に、目もくらむ思いでございます。しかもきれいにモノ・コトから卍がためでフィニッシュ!
 プロレスは連日興行が原則ですね。どうか体力を温存なさってください。
 まったりとした総合ペースというのもまたよいかと。
 
 

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.01.17 17:23

伯爵さま、どうもどうも。
いやはや、医科歯科の小論文指導などしていた時に、先方からコメントが(笑)
グッドタイミングすぎです!
なるほど〜、総合は案外まったりなのかもしれませんね。
こちら連日興行、それも毎日武道館って感じです。
多少地方大会風なのも入れたいんですけどね。
どうも毎日アドレナリンが…笑
まだまだ力の抜きどころが分からぬ新人ってとこですかね。
10年くらい続ければ多少は…。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.17 17:52

うわあああああああんん。・゚・(ノД`)
て、すいません、いきなり。。
貧乏伯爵サマ、いつもお立ち寄り下さりありがとうございます。
大晦日以降、一連の苦しい流れの中、ワラをもすがる思いで借りた(変なコーナーに隣接してたので借りるのに必死でした)DVDに道を求めていた私でしたが・・先ほど桜庭さんのお元気そうな姿と、ファイトマネーの一部をチャリティーに寄付、というのを提案したこと、それとグローブのことは全くわかりませんでした(という程、強い。。)という
ことにまた痛く感動してしまった次第です。この件は終わっていないのかもしれませんが、上に挙げたことには喜びに似た、胸が熱くなるものを感じました。うん、やっぱり
素晴らしい もののふ であることに常に違いはないのだと・・・。

投稿: サクのセコンド@妄想内(家ではサク似の庵主のセコンド) | 2007.01.17 19:46

うわ〜!なんか来た。きもい!
勝手にセコンドになるな!
みなさん、すみません。
異臭放ってw
上のコメントはうちのカミさんです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.17 20:59

奥様、楽しい方ですね~(´∀`)
何度読んでも『???』だったモノとコトの違いが、今日は少しだけわかったような気がします。
よかった~。

投稿: カズ | 2007.01.17 22:42

カズさん、おはようございます。
すみません、変なコメント読ませちゃってw
まさにウチのカミさんは「モノノケ」です。
「モノ」ってつまりそういうものですよ。
理解不能なヤツ。
それを排除するか受け入れるかってことですね。
「モノ・コト」はまだまだ試論でして、自分自身もいろいろ揺れてるんで、今後ますますわかりにくくなるかもしれません。
いずれ一冊にまとめてみようと思ってます(いつのことになるやら)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.18 06:06

 いい奥さんですねー。あこがれちゃうなあ。うちのもちゃんと教育しないと・・・。今後ともなにとぞよろしくお願いします。
 さて、総合-まったりは素人目で見たときの動きの無さということです。うまく説明できませんでした。すみません。もちろん、すごい駆け引きがあって、一瞬で関節とられて終わりになる、激しい戦いが繰り広げられているのですよね。

投稿: 貧乏伯爵 | 2007.01.18 12:49

伯爵様、
もったいないお言葉・・いや、すみません、ただ痛いだけの女です(自覚!)(^^;
総合の見方を知らない私でしたがいろいろ勉強になりました。仰るように
すごい駆け引きがあるんだなあと。
それにしても、もちろん、ルールがちゃんと守られた上で、ですよね。

投稿: サク似の庵主のセコンド | 2007.01.18 13:06

おっと、セコンドに先にコメントされてしまった。
いい奥さんだなんて…
腐女子を超えて貴腐人になりつつありますよw
ところで、総合がまったりっていうの、逆説的に真だと思いますよ。
つまり、相手を信用しないと(相手の良いところを引き出さないようにすると)、結局何も起きない可能性があるってことですよね。
起きるとしても、あっという間に終わるから、結局「無」の時間は減らない。
第一、年に何回かしかやらないんだから、他の日は何も起きてないわけで、言い方によっては「無」が充満してるのでありまして。
まったりと言えばまったりなのかもしれません。
もちろんプロレス特有のまったりとは全然違いますけどね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.18 13:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/13537687

この記事へのトラックバック一覧です: 『桜庭和志スペシャル〜プロレスラー最強伝説〜』(DVD):

« 『ヨイトマケの唄』 美輪明宏(丸山明宏)〜いろいろと | トップページ | 『〈対話〉のない社会 思いやりと優しさが圧殺するもの』 中島義道 (PHP新書) »