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2006.12.28

『モーツァルトの真実〜自筆譜が明かす素顔〜』(NHKハイビジョン特集)

Moz12 さてさて、いつものように振れ幅が大きいですよ。昨日の吉井和哉から今度はモーツァルトです。古今東西・硬軟聖俗なんでもござれ!ですので。私にとってはこれが日常です(笑)。
 今日午前中放送されたハイビジョン特集です。池辺晋一郎さんの演奏付き解説を中心に、モーツァルトの自筆楽譜を材料として、天才と言われ続けていたモーツァルトの素顔に迫るという企画でした。モーツァルト・イヤーももうそろそろ終わりなんだなあ、という感慨。
 「天才」という言葉、私もよく使ってしまいますけど、ホントこれって無責任な言葉なんですよね。そういう意味では、吉井さんも「天才」とか「神」とか言われてしまう。そういうふうに片付けるのは、片付ける方としては手っ取り早いし分かりやすいですからね。でも、本当のファンなら、その一言で片付けたくないという感情もまた一方にあったりする。彼の生き様、特に苦悩というものを少しでも知れば、あまり安易にそういった「ほめ言葉」は使えなくなるものです。
 モーツァルトなんかそういう安易な言葉による「コト化」被害者の最たる存在でしょうね。天才とか神童とか、そういう冠をかぶらされて、どうなんでしょうね、本人は嬉しいんでしょうか。私はもちろんそんなものかぶったことがないんで、ウソでもかぶってみたいし、実際かぶったらけっこう気分よくなりそうですな(笑)。
 たいがい、「天才」とか「神」とか言われる人は不幸です。才を天与された幸福よりも、おそらく苦労を人界から与えられることの方が多いのでしょう。そう、天才は「モノノケ」なので、「ことわざしげき(事業繁き)」世の中では生きにくいんですね。天才にして幸福になるには、バカボンのパパ並みの根性が必要です(?)。いや、彼も決して幸福ではないのかも…。
 で、この番組では、モーツァルトの残した自筆譜などから、そういう苦労を読み取るわけですね。そうすると、今までの彼のイメージが当然変ってくるわけです。彼は「作曲家」である以前に「演奏家」であったとか、彼は「芸術家」というより「職人」であったとか、「天才」というより「創意工夫」の人であったとか。
 全くそのとおりであって、こういう番組がなければ、私たちは先人たちの「ことわざ(事業)=コト化=カタリ」の結果を無反省に無検証で信じ込み、追体験や実感のないまま、モーツァルトを、そして彼と自分たちの関係を硬直化してしまう。いかんなあ。
 で、誰が悪いって、私たち教育者なんですよ〜。もともとそういう実体験に基づいていない「コト」を平気で「語る(騙る)」傾向があるんで。語り手としても聞き手としても、自分にダメ出ししときます。
Moz23 というわけで、なかなか面白く拝見いたしました。特に嬉しかったのは、ちょっと前に紹介したロバート・レヴィンさんが登場され、モーツァルトの即興の秘密に迫ったコーナーですね。まあ、秘密というほどのことではなかったのですが、彼自身がモーツァルトの残した「即興風」の曲を演奏してくれたのはラッキーでした。たしかにモーツァルトの即興シーンを彷彿とさせましたね。
 音楽の即興性というのに関しては、ここでも何度も言及しておりますように、私は非常に重要視しております。しかし、私は脳内即興はできますけど、それを現実化する能力と努力に欠けるため、実際にはダメダメ音楽家であります。どちらかというと言葉の即興は得意なんですけどね。ただ、レヴィンさんもおっしゃってましたが、即興をできる人はたくさんいる、でもその中で聞く(読む・見るナド)に値するのはそうそういないのでありました。
 ああ良かった。凡人で。不幸な(あるいは短命な)天才より、幸福な(あるいは長命な)凡才の方がいいんで…といういかにも俗っぽい結論(笑)。

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