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2006.12.01

『その時歴史が動いた〜ひらがな革命』 (NHK)

〜国風文化を生んだ古今和歌集〜
Tokihira 「その時歴史が動いた」と言えば昨年の「その時歴史が動いた」が動いた!ですね。面白かった。あの時放送されるはずだった山本五十六さんの決断が再来週再放送されます。評判良かったらしい。それをああいうふうに動かしちゃうんだからなあ(笑)。
 さて、おとといの「その時」です。録画しておいたのを今日観ました。
 あ〜あ〜、こんなふうに描かれちゃって、藤原時平さんもとんだ迷惑ですね。上は豊国による画です。歌舞伎『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』では、典型的な公家悪として扱われ、なぜか「ふじわらのしへい」と呼ばれております。公家荒れの隈取りにしっかり王子の鬘をかぶらされ、アニメの悪役よろしく見事にキャラクター化されてますね。
 純真無垢な努力家菅原道真を陥れた極悪者としてのイメージがこうして定着してしまった時平さんの、ちょっとした名誉回復の助けになったと思われるのが、おととい放送された「その時歴史が動いた〜ひらがな革命
〜国風文化を生んだ古今和歌集〜」でありました。いろんな意味で興味深い内容でしたね。
 この前のバタじゃがの記事に無理やり?登場させられた醍醐天皇の勅命による「古今和歌集」。その有名な紀貫之による仮名序についてはこちらで新解釈をほどこしましたが、真名序というのもあるんですね。漢文で書かれている。仮名序と真名序。その現在における注目度の差、つまり仮名序ばかりが有名で、真名序なんて教科書に載るはずもない、という事実。
 番組でも紹介されていた通り、「その時」までは公式文書は漢文で書くべきものだったんですね。それが、「その時」から単なる女手だった「仮名」が勢力を強めていくわけです。それは、中国の律令制を模していた政治システムの転換をも象徴します。なにしろ勅命で平仮名の歌集を作れというわけですからね、今で言えば、そうだなあ、今年の歌会始からは、作品はワープロで打つか、あるいはギャル文字で書きなさい、と今上天皇から勅命が下るようなものです(…んなわけないか)。
 そんな中、頑固オヤジの、いや古い伝統の代表格とされたのが菅原道真であり、ギャルの、いや新しい潮流の代表格とされたのが藤原時平であったというわけです。で、「その時」は、道真が左遷されたこと、また中国の呪縛から解き放たれた国風文化が発達するのを見てもわかるとおり、時平さんの勝ちだったわけですね。しかし、勧善懲悪を好み、判官贔屓の激しい江戸の町人文化では、時平さんはすっかり悪者に仕立て上げられてしまう。実直で地味なオジサン道真を、ボンボンで派手な若者時平が陥れたと。
 番組では、そんな時平のいわれなき汚名を払拭すべく、美談が語られていました。政治的基本路線は道真を継いだとか、官位を望まなかったとか、今では「漢字仮名交じり文」が一般的になった、つまり、道真と時平は永遠に手に手を携えることになったとか…。
 こうした美談はまた、江戸の語り口のカウンターみたいなものでして、あんまり鵜呑みにしちゃあいけませんが、まあ、けっこう事実に近いのかな、と思いました。たしかに時平の存在がなければ、律令制からの脱皮や国風文化の成立は遅れ、結果として、国政は不安定さを増したかもしれませんし、その後の仮名文化、すなわち、和歌の文化、たとえば源氏物語なども生まれなかったのかもしれません。
 そう考えますと、歌舞伎での「しへい」のあり方というのもまた、必要悪の記号化ということで許されるのかもしれません。本人も実は納得しているとか。時代を動かす人は、いつの世でも毀誉褒貶にまみれるものです。

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コメント

はじめまして。ひらがなに関する記事を更新する際、当エントリーの文章の一部と画像を引用させて頂きましたのでご了承下さいm(_ _)m 時代を動かす人は、いつの世でも毀誉褒貶にまみれるものです。←真理です(ノ_・。)

投稿: みたむら | 2007.01.06 22:42

みたむらさん、どうもです。
コメントand引用ありがとうございました。
みたむらさんの記事、とっても上手にまとまっていて感心いたしました。
立派な人はたいへんですよね。好かれたり嫌われたり。
凡人でよかったなあ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.01.07 09:35

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