『The Beatles in Australia』 Mark Hayward (New Holland pub.)
先週2年生がオーストラリアに修学旅行に行ってきましてね、おかげで職員室はコアラの形をしたチョコの山が出来ています。みんなそれぞれ楽しみつつ、異文化交流を果たしてきたようでして、なんともうらやましい時代ですよね。私なんか高校でも京都・奈良でした。それはそれで楽しかったけどね。
さて、あるビートルズ・マニアな女の子が買ってきたのがこれです。彼女は熱狂的なポール・ファンでありまして、まあ今どきの子にしてはちょいと珍しい。こんな写真集を見つけて買ってきちゃったわけです。へえ〜、来豪時の写真集か、来日時の写真集もいろいろあるしな、お〜オレが生まれた年か、なんて思ってよく見たら…ありゃりゃ、なんだこりゃあ!?知らない人がいる!(笑)そして、リンゴがいない。
いやはや、知りませんでした。真のマニアにはホントに基本事項なんでしょうけど、ジミー・ニコルという名前すら知らなかった(ザ・スプートニクスは知ってましたけど…笑)。
なんでも、この時、リンゴは扁桃腺炎かなんかを患い、40度の熱と闘っていたようであります。で、ジョージ・マーティンが代役を彼に頼んだと。今なら普通にキャンセルだよな。いきなりやらされたジミーも大変でしたね。でも、ビートルズのコピーをやっていたようなんで、ほとんど練習なしで大丈夫だったようです。そして、まるで本物のビートルズのように、ファンに手を振っている。どういう心境だったんでしょう。
この写真集の面白いところは、当地でのインタビューが掲載されていることです。あんまりしゃべらないジミー・ニコルにけっこうきつい質問が飛びます。「喋っちゃだめって契約なのか?」みないな。インタビュー全体は、まあいつものビートルズ風なんですが、微妙にメンバーがリンゴをからかったり、ジミーに気を遣ったりしてるのが面白い。ま、英語苦手な私はその雰囲気くらいしかわかりませんがね。
もともと、メンバーは代役を立てることに反対だったようです。「ピート・ベストは偉大なビートルズのドラマーだったが、リンゴ・スターは偉大なビートルだ」…う〜ん、いい言葉だ。ん?ピート・ベストの立場はどうなるんだ?まあいいか。そういわれるだけでもすごいっすよね。最近、何かで「リンゴのドラムは実はコピーしにくい」みたいな話を聞いたばかりだったので、なるほど、この言葉はお世辞ではないのかも。
で、ジミー・ニコル版ライヴの映像も出回っているようですが、私はもちろん観ていません。マニア的には、リンゴじゃない版ビートルズの演奏というのにも興味を持つことでしょう。
このジミー・ニコルさん、その後はお呼びはかからなかった(つまりリンゴは元気だった)ようですね。そして、翌々年の66年、スウェーデンのエレキ・バンド「ザ・スプートニクス」のドラマーとして来日しています。このスプートニクスについては、ベンチャーズと並ぶエレキ・バンドとして、私の記憶にしっかりと刻まれていました。日本向けの曲(日本人作曲による曲)もたくさん演って、けっこうヒットさせていたんですよね。
さて、ちまたは、ジョージ・マーティンとその息子による快挙あるいは暴挙(The Beatles『LOVE』)によって、大騒ぎになっております。ちょっと聴きかじった感じでは、ビートルズだからこそこれもありだと思いましたが。なにしろ、こんなので大喜びしてるくらいですから、私のビートルズはどうコラージュされても、アレンジされても、やはりビートルズです。そこがバッハ同様すごいわけですから。私は原理主義者ではないので。それよりやっぱり、リンゴのいないビートルズがどっさり、にびっくりしましたよ。
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コメント
先生ご無沙汰です。久ぶりにBEATLESネタで書き込み致します。
このジミーでの映像、私持っております。っと言っても1964年6月6日の映像でオランダ公演の物です。曲は「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」一曲だけの映像ですが。このジミー首を上下に振りながらのドラミングでかなりキモイ!約2週間ジミーが代理で海外ツアーに出た様です。リンゴは6月15日にメンバーと合流したため、13日で役目を終えたようですね。
投稿: もりへい | 2006.11.25 21:12
もりへいさんお久しぶりです。
なるほど、映像お持ちですか。そしてやはりキモいですか(笑)。
この写真集でもけっこう微妙な感じですよ。
でも、2週間にせよ,ビートルズとしてツアーしたんですからね、すごいですね。
もうお亡くなりになっているらしいんですが、彼の人生にとって、この体験はどういう意味があったんでしょうかねえ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.11.26 07:38