都市のバックアップ〜小松左京の言葉から
わ〜い、いつのまにか30万アクセス達成!!塵も積もれば山となる。あっ、すみません、皆さんの有難いご訪問を塵だなんて…。ごめんなさい。本当にありがとうございます。さてさて、今日はそんな「集積」のお話など…って、全然反省してないやん。
一昨日放送されていたBSフジの「メッセージ.jp」を録画で観ました。メッセージの主はSF作家小松左京さん。いろいろと含蓄のあるお言葉をいただきいい気分です。戦後すぐの頃から骨太のSFを書き続けている小松さん。私も子どもの頃にずいぶんとお世話になりました。ここのところ、全然読んでませんね。今読めば、きっと単なるフィクションとしてだけではなく、それこそいろいろなメッセージを読み取れるような気がしました。
左京さんのお言葉の中で、なるほどそうだあ、ああこれもやっぱりあれだな、と思ったのが、名作「首都消失」にかかわる発言。首都がなくなったらどうなるか、コピーをとっとかなきゃ、みたいなことをおっしゃってました。この前、書きましたように、私は、都市化とは「コト化」だと考えています。情報を箱に詰める作業のような感じでしょうか。それで、固定していく。エントロピー増大則に従うまつろわぬ「モノ」どもを統制下に置いていくんです。人間の脳がそういうふうに出来ている。脳内でも、「コトの葉」を使って、分別して、区画して「コト化」を進めます。その欲求には限りはなくて、とにかくどんどん集積していく。それが例えば東京のような都市になっていくと。
これって、ハードディスクなんかがどんどん大容量化していって…つまり、どんどんデータを入れたくなるわけですね、一ヶ所に…、それに不思議な快感を覚えるのといっしょですね。さらに、不思議なことに、私もよく経験しますが、快感とともに妙な不安も抱く。これが壊れたらそれこそ全滅だな、今まさに壊れるかもしれない、って。だからバックアップ取るんです。
養老先生が都市化とは「脳化」であるとおっしゃっていますが、私はちょっと違った視点でそれを「コト化」と言っているのだと思います。そして、「コト化」を表す動詞が「カタル」であると。そうして、どんどん語られ、騙られていく「モノ」たち。閉じこめられた「モノ」たちが再び拡散するのが、カタルシス(語る死す…なんて、これはシャレっす)じゃなくて、クライシスですね。人間だったら、脳の損傷だったり、ボケだったり、まあ究極的には「死」ですか。ハードディスクも5年もしないうちに死亡しますね。落としても損傷しますし、ほっといてもボケたりします。
では、都市はどうでしょう。これはやはり人間の脳に近いんでしょうね。デジタル化できませんから、コピーを取りにくい。完全なバックアップは不可能です。しかし、左京さんの言うように、似たものをいくつか作っていろいろな所に配置しておくというのは、実際ありかもしれませんね。首都移転ではなくて、首都複製でしょうか。
ま、こんな妄想をいろいろとしてしまったんですが、たしかに小松左京さんの先見の明は素晴らしいし、洞察力の深さ鋭さは尋常ではありませんね。久々に読み返してみたくなりました。近い内に必ず。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- キャンディーズ 『哀愁のシンフォニー』(2021.03.03)
- 『曼荼羅』 石堂淑朗 脚本・実相寺昭雄 監督・冬木透 音楽作品(2021.02.28)
- 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品(2021.02.27)
- いろいろな「二・二六」(2021.02.26)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
「自然・科学」カテゴリの記事
- 『コロナ後のシン・ニホンとは?』 安宅和人・落合陽一・宮田裕章(2021.03.06)
- 保守とリベラル、全ての多様性を奪ったSNSの功と罪【東浩紀×ホリエモン】(2021.02.24)
- 『レモンのような女 第2話 私は私―アクチュアルな女―より』 実相寺昭雄監督・岸恵子主演作品(2021.02.20)
- 福島県沖でM7.3(2021.02.13)
- 『妙な線路大研究 東京篇』 竹内正浩 (実業之日本社)(2021.02.01)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 保守とリベラル、全ての多様性を奪ったSNSの功と罪【東浩紀×ホリエモン】(2021.02.24)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
- 『放浪記』 成瀬巳喜男監督作品(2021.02.15)
- これからは音声配信の時代!?(2021.02.05)
- (続)これからは音声配信の時代!?(2021.02.06)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- (マイナスな)コトタマは恐ろしい…(2021.02.25)
- 「歴史ミステリー 関ヶ原の勝敗を決めた細川ガラシャ」…麒麟は家康だった?(2021.02.10)
- これからは音声配信の時代!?(2021.02.05)
- 田中緒琴(初代・二代)の八雲琴演奏(2021.02.03)
- 『「生きる力」としての仏教』 町田宗鳳・上田紀行 (PHP新書)(2021.01.20)
コメント