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2006.10.07

バッハ・リヴォリューション 『デジタル・バッハ』

BACH REVOLUTION 『DIGITAL BACH』
Digitalbach この歴史的名盤がCD化されず、ほとんど手に入らないというのは実に残念なことです。ウチでも地下室からLPを引っ張り出してきたのはいいのですが、レコードプレイヤーが不調で聴けません。
 この前、丹波哲郎さん崩御(?)の記事を書いた時に、私の好きな作品として「砂の小舟」を挙げました。実はその音楽を担当していたのが、バッハ・リヴォリューションなのです。それで思い出したんですね。ただ、バッハ・リヴォリューションはメンバーの異動がいろいろあるんで(中心人物はずっと田崎和隆さんです)、時期によって活動内容がかなり違っています。あんまり情報がないので間違ってるかもしれませんけど、「砂の小舟」の頃は、田崎さんと神尾明朗さんで、環境音楽の走りのような実験的な電子音楽をされていたんではないでしょうか。それが78年くらい。それ以前にはそのお二人と鈴川元昭さんの3人で、76年に我が心いまだ安らかならずを制作しています。そして79年にはNO WARNINGを発表。この時のメンバーは田崎さんと神尾さんでしょうか。分かりません。
 で、80年1月に発売されたのがこの「デジタル・バッハ」です。ここでのバッハ・リヴォリューションは田崎さんと小久保隆さんです。このアルバムがですねえ、ものすごい出来なんですよ。超名盤。
 80年と言えば、ある意味シンセサイザー全盛期。電子音楽が最も充実していた時期です。量ではなく質での充実ですよ。冨田勲さんも全盛期。武道館で壮大なエレクトロ・オペラなんかをやっていました。YMOも全盛期ですね。姫神せんせいしょんが結成されたのも80年。喜多郎さんがNHKのシルクロードのテーマ音楽を担当したのも同年です(たぶん)。
 そんな中、当時としてはかなり先進的(今ではシロウトでも当たり前ですけど)なデジタル技術を積極的に導入して、今で言うシーケンサーによる自動演奏を中心にレコーディングしたのがこのデジタル・バッハです。収録曲は以下の通り。
1 トッカータとフーガ ニ短調
2 「音楽の捧げ物」より無窮カノン
3 「音楽の捧げ物」より四声のカノン
4 G線上のアリア
5 幻想曲 ト長調
6 「平均率クラヴィア曲集」よりNo.1前奏曲
7 「平均率クラヴィア曲集」よりNo.4五声のフーガ
8 フーガの技法
 今聴いてみても(ってちょっと実際には5年ほど前ですが)、実に完成度が高い。編曲、音色づくり、解釈それぞれ大変によくできています。ワルター(ウェンディ)・カーロスや冨田勲さんのバッハをシンセ・バッハを聴いてきた私にとって、当時この衝撃は大変に大きなものでした。バッハ(の抽象性)に傾倒しはじめた時期でもありましたし、これは一つの完成形ではないか、とまで思った記憶があります。
 特に「幻想曲ト長調」は完璧です。私のこの曲のイメージは完全にこれが基本になってしまいました。特に中間部のヒューマン・ヴォイス系の音色による「幻想的」な演奏は、これは本当に天国的です。中間部後半でバスが音階的に上昇しつつ、上声部が見事なポリフォニーを紡いでいく部分は、ホントに「みんなぱらいそさ行くだ!」って感じ(笑)です。こんな曲を作ってしまう青年バッハもすごいっすけど、この録音を残した青年(小久保さんはたぶんこの時大学生か大学院生)たちもすごいっすねえ。
 録音の権利の問題やら何やらでCD化が出来ないのでしょうが、この記念碑的(電子音楽にとっても、バッハ演奏にとっても)な作品を広く皆さんに聴いていただきたいものですね。…って私も今は聴けません。眺めてるだけです。近いうちに久々にレコードに針を落としてみたいと思います。

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コメント

初めまして。
 1年ほど前に「カメラータ・ムジカーレの部屋」経由でこのブログにたどり着き、それ以来ときどき覗きに来ている者です。
 『デジタル・バッハ』は私も持っています。これって、「歴史的名盤」だったんですか…今、二十数年ぶりに聴いてみましたが…うーん、私にはよくわかりません。
 バッハは大好きな作曲家です。ハイドンもモーツァルトも興味の尽きない作曲家ですが、年齢を重ねるとともにより古い時代の音楽に惹かれるようになってきました。
 申し遅れましたが、私、長年アマチュアオケでファゴットを吹いている者です。カメラータ・ムジカーレのような団体が近くで活動をしていたことを最近まで知らなかったのは迂闊でした。機会があれば聴きに行きたいと思っています。
 ではまた、ときどきお邪魔します。

投稿: mf | 2006.10.11 23:27

mfさん、コメントありがとうございました。
おっとmfさん、同業者なんですね。
そして音楽の同好でもある。
なんかうれしいですね。
このデジタルバッハ、実はけっこうアナログなんですよね。
ライナーノートにもあったと思いますが、結果として普通の演奏以上に「間」を意識しているところが、なんとも面白いところです。
私はこのレコードを聴いて以来、しばらく自分でもバッハの打ち込みをやっていましたが、その時意識させられた「間」は、実際の演奏にも役立ってます。
来月カメムジの定演があります。
そこでお会いできればいいですね。
坊主頭のヴァイオリンが私です(笑)。
今後ともよろしくお願いします!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.10.12 06:00

最近になって、古くからデジタル・バッハがある事
を知りましたが、イギリス組曲bwv801,bwv811を
リコーダーにして、
ドラムをたたいてみました^^;。
http://opinion.aonet.jp/music/bwv801-1.mp3
http://opinion.aonet.jp/music/bwv811-5.mp3
@ http://opinion.aonet.jp/?1251036410&1
よければ聴いて笑って下さい。

投稿: aonet.jp | 2009.09.10 05:20

aonet.jpさん、こんにちは。
楽しませていただきましたよ。
私も若かりし頃はよくバッハの打ち込みをやりました。
先日デジタルバッハの小久保隆さんにひょんなことからお会いすることになったのですが、ご自身もある意味若気の至りだと恥ずかしそうになさってました。
バッハの音楽はほとんど全て舞曲がベースですから、打楽器を入れたくなるのは当然と言えば当然です。
私は高校時代、BWV1052にドラムを重ねましたよ(笑)。
それにしても、こちらの名シーンで流れたイギリス組曲、誰の演奏だったんだろう…いまだに分かりません。
http://www.youtube.com/watch?v=75y_AHgKVbQ&feature=related
(7分40秒付近です)

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.09.10 10:28

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