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2006.10.02

『妖怪ハンター』 諸星大二郎 (集英社文庫)

408618391901_scmzzzzzzz_ 昨日の座禅会の際、お借りいたしました。そして一気に読破。ちなみに私よりも先にモロボシマニアのカミさんに読まれちゃいましたが。そう言えば、カミさんのモノノケ性に気づいたのは、結婚前、彼女が諸星大二郎の「孔子暗黒伝」を「かわいい〜」と言いながら読んでいるのを見た時でした(笑)。思い出した。
 諸星大二郎と言うと、私は「神話」「伝説」「怪異」「伝奇」「古史古伝」「説話」「民俗」などという言葉を連想します。ま、それが普通かな。ワタクシ流に申しますと、彼は「モノガタリ」の再構成の能力がずば抜けているんですね。日本各地に古来伝わる「モノ」を集成して新たなる「モノ」を語るわけです。そういう意味では、彼は伝統的な「語り部」であると思いますね。たまたま語るメディアがマンガであったということでしょうか。
 考えてみるとマンガというメディアは、こうした「モノ」を語るのにふさわしい。文字以上に感覚的ですし、実写映画よりも自由です。物の怪を語ったマンガは…あえて例を挙げるまでもありませんね、とにかくたくさんあります。
 だいたいそういう物の怪系漫画家の画風は、もうそれ自体がモノノケ的なわけですけど、この諸星さんは特にすごいですね。有名な話ですけど、どんな絵も描けると豪語した手塚治虫が、「諸星大二郎だけはマネできない」と言ったとか。いったいどういう意味だったんでしょう。たしかに、あれだけ毎度顔が違ってちゃ、マネのしようがないか。ある意味ヘタウマの元祖の一人かもしれません。しかし、そんな諸星さんが、手塚賞と手塚治虫文化賞の両賞を受賞したというのは面白いことですね。
 今回は「地」「天」「水」全3冊をお借りしました。ここでおススメするのは、真ん中の「天」です。東北のキリスト伝説に興味のある私としては、「地」収載の名作「生命の木」も大変興味深かったのですが、やはり、「天」の前半、富士山を舞台とした「花咲爺論序説」「幻の木」「川上より来たりて」「天孫降臨」の連作ですね。
 私、この長大な物語の断片的なファクターについての知識はかなり豊富な方だと思うんですが、それらをこうして結合、いや統合されると、もうカブトを脱ぐしかないですねえ。それが確かに自然な流れになっているわけですから。天才でしょうか。創造力と想像力の勝利。
 物語の中心にも屹立している「柱」の存在は圧倒的です。それは「生命の木」であり、「高木」であり、「ユグドラシル」であり、「扶桑」であり、そして「立石」である…。本当に一本筋が通っている。物語の大黒柱がどーんと立っていて、ものすごい迫力になっています。名作ですね。
 そんな話の幹からすれば、少し枝葉末節になりますが、今回読んでいて「あっ」と思ったのは、当地に多い浅間神社の祭神「コノハナサクヤヒメ」と「イワナガヒメ」の対比です。よく知られているように、妹の木花開耶姫は美貌だが短命、姉の磐長姫は醜悪だが長命。まさに花と岩のコントラストです。これって「モノ」と「コト」ですよね。天孫ニニギはミコトとして「コト」を選ぶべきだったのに、ついつい「モノ」を選んでしまった。そこで、我々日本人の運命は決まってしまったわけです。なにしろ天皇家のルーツがそっちを選んでしまったので。ミコトがモノになっちゃった。変化して消滅する性質になってしまった。だから、ひ孫の代にはすっかり「人」になってしまった。初代人皇神武です。面白いですね。
 というわけで、久々の諸星体験、非常に刺激的でした。私知らなかったんですけど、「生命の木」って映画化されたんですね。ちょっと観てみたいと思いました。いや、あの絵だからこそいいのかなあ。やっぱりあの絵が重要ですよ。たとえば同じ物の怪を扱っている「蟲師」なんか、あれはあれで良かったんですけど、こちらを読んで(見て)しまうと、なんというか洗練された都会的なモノノケというか…。マンガにとっての文体ってやつなんでしょうかね。

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» シンポジウム「マンガと人類学」 [Junk In The Box / Paradise Garden]
妖猿伝再開よろしくお願いします!  精華大学が母体になっていると思うのですが、烏丸御池に京都国際マンガミュージアムがあり、そこで本日、「マンガと人類学」というシンポジウムがあったので行ってきました。案内サイトはこちらにあります。ごらんになればおわかりの通り、諸星大二郎さんがシンポジストとして上京されたことが(こういう文脈で上京という言葉を使うのは不適当?)聴講した理由です。  諸星さんについては、つい先日も「スノウ・ホワイト」について書きましたように、私の大好きな漫画家さんのひとりです。単に私がア... [続きを読む]

受信: 2006.12.18 22:08

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