『暇つぶしの時代−さよなら競争社会』 橘川幸夫 (平凡社)
昨日は一昔前のカリスマ予言者の言をとりあげました。今日はある意味現代のカリスマ予言者の本を紹介しましょう。
王仁三郎にせよ、橘川さんによ、未来を言い当てるという意味においては予言者です。しかし、それは超能力とか、そういうものであるとは限りません。ただ、時代の様々な事象を鋭く読み取り、それに基づいて正確な予測をしているのだ、とも言えます。
橘川幸夫さんは常に時代の数歩前を行く人です。マスコミへの露出度が低いので、一般庶民にはなじみが薄いかもしれませんが、企業人にとってはまさに「神」レベルの人です。大企業の研修や講演にひっぱりだこ。
なんとなくリラックスした風情や独特のユーモア、わかりやすい語り口など、たしかに王仁三郎風かもしれませんね。尊敬するとともに「おもしろい!」と思える人です。
さて、そんな橘川さんのこの本、まさに過去・現在・未来を冷静に見つめた好著です。今日は学校の図書室で読みかえしました。3年ぶりですかね。
『次のステージは「モノ」がテーマではなく、「コト」がテーマである。「モノ」は具体的な存在だが、「コト」は時間との関係性の中で発生するイベントである。物質ではなく時間であり、時間の中での人間の振る舞いが重要になってくる』『「生産・消費」(モノヅクリ)のための社会の上部構造に、生産とは無関係な「時間消費」(コトヅクリ)を許す社会』
つまり『暇つぶし』社会が、これからの社会だと語ります。それは農業社会の上に築かれた成熟した農業社会としての工業社会の、さらに上に築かれる成熟した工業社会だということです。なるほど。
そのとおりだなあ、と首肯しつつ、わざと違うことを書きましょう。私の予言(?)です。
「コト」の時代は終わった。これからは「モノ」の時代である!
このブログを読みつけている方は、ああ確かにいつもそういうことを言ってるな庵主は、と思われることでしょう。たしかにしつこく「現代におけるモノの重要性」を言ってばかりです。じゃあ、橘川さんとは真逆じゃないか…と思うのは早計ですよ。実はですねえ、「モノ」と「コト」の定義がまるで違うんです。だから、同じことを言っても逆のように感じられちゃうんですよ。
ちなみにどちらが一般的な定義かと申しますと、もちろん橘川さんの方です。橘川さんの方が大正解です。私はアマノジャクですので、かなり特別な定義をしています。たぶん、私だけでしょうから、全く一般性がありません。なにしろ、現代語としての「モノ」「コト」をほとんど無視して、古代語の「モノ」「コト」からアプローチしてしまっているので。そりゃあフツウの現代人には通用しないわな。
いちおうまとめてみましょうか。
一般論…「モノ」=(手に取ることのできる具体的な)物質
「コト」=(手に取ることのできない抽象的な)事象
庵主説…「モノ」=(変化し、自分の思い通りにならない)物質や事象、情報など
「コト」=(変化しない、自分の思い通りになる)物質や事象、情報など
ほらね、一般論の方がわかりやすいでしょ。当然です。ワタクシの説はかなり変です。でも、ワタクシの脳内辞書にはそう書いてあって、その根拠まで記されてるんで、仕方ありません。
で、私は「科学や工業の力によって、なんでも自分の思い通りになる(と思い込んでいた)コトばかり追い求める時代は終わって、自らの思い通りにならない(に決まっている)モノの本質を知り、それとうまくつきあっていく時代が(再び)来る!」って言ってるわけです。我々にとって永遠に思い通りにならないモノの代表格は「時間」です。だから、結局橘川さんと同じでしょ。ごめんなさい混乱させちゃって。
というわけで、結局、王仁三郎の言う「霊主体従」を目指そうってことですね。今までは「体主霊従」だったと。また、「物づくりの喜び」の時代は終わったと思うんです。結局つくられた物たちは「モノ」の性質に則って壊れ捨てられていった。私たちは「モノ」を作ったのではなく、エセ「コト」を作ったのでした。だから、今度は「物(エセコト)づくりの哀しみ」を感じなければならないのでしょう。いや、もう感じてるのかも知れませんね、「もののあはれ」を。
近代とは、壮大なマスターベーションであったと。その事後(エセコト後)の虚しさ、哀しさに、なんとなくみんな気づき始めていませんか。では、次はどうすればいいのか。
橘川さんが本書の中で何度か使っていた「ライブ」という言葉。これは大切でしょう。ある種の繰り返しの中に生じる微妙な変化、些細な差異に心を動かされ、そして満足する、そういう生き方をしていけば、きっとそれは地球にも自分にも他者にも優しい生き方になっていくでしょう。「ライフスタイル」じゃなくて「ライブスタイル」かあ。名言ですね。
そう言えば、王仁三郎さん、こんなことも予言してました。橘川さんより80年くらい早く(笑)。
『将来の労働時間は一日三時間内外になる。その余暇を人間性の開発や公のための時間に使うようになる』
これこそこれからの「暇つぶし」ですね。ふむふむ。
Amazon 暇つぶしの時代−さよなら競争社会
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