リフキン 『バロック・ビートルズ・ブック』
Joshua Rifkin 『The Baroque Beatles Book』
最初に申しておきます。このアルバムはすごすぎます!でも主題に入る前に少し長めのイントロを。
今朝の「題名のない音楽会」は、前田憲男・佐藤允彦・羽田健太郎の3名による3台ピアノユニット「トリプルピアノ」がいろいろなお題で対決するという内容でした。童謡の編曲合戦はそれぞれ次のような感じで、大いに笑わせていただきました。
羽田健太郎: ショパン風 「浜辺の歌」
佐藤允彦: バルトーク風 「ちいさい秋みつけた」
前田憲男: バッハ風 「故郷」
つまり、こういう趣向というのは、まあユーモアでありまして、まじめに聴くたぐいのものではありませんね。しかし、私はなんとなくそういうちょっと下手(ゲテ)な世界が好きでして、特にビートルズとバロックの融合みたいなのに、異常に執着してきました。なんでか全くわかりません。というか、今考えたら、やはりビートルズにバロック的な何かを感じていたんでしょうね。それはまあ正解とも言えましょう。
さて、そのユーモアにもクオリティーというのがありまして、私はそのクオリティーにこだわってきました(なんなんだ?いったい)。おそらく最初はこちら「ビートルズ・オン・バロック」、池辺晋一郎さんのお仕事でしょうか。これはこれでまあまあの出来でしたが、池辺さん自身「バロックは好きじゃない」と豪語しているだけあって、なんとなくやっつけ仕事な感じもありましたね。その後もこちらとかこちらとか、いろいろと聴いてきまして、また最近では、こういう完全コピー盤も登場したりして、ああこういう妙な願望は私のみならず結構普遍なのかな、なんて思うようになりました。
さあ、そうすると、いったいこういうおバカなことを最初に考えたのは誰なんだ(ビートルズ自身という説もありますが)、ということが気になり始める。で、調べたら、大変なことになりました!そして、それがCDとして再発売されたんです!
な、な、なんと、その張本人は、あのジョシュア・リフキンじゃないですかあ!正直ぶったまげました。単なる私の勉強不足だったのかもしれませんが、ある意味尊敬する、そして現代を代表するバッハの演奏家、そして研究家の彼が、こんなアルバムを出していたなんて…。
リフキンさん、私のブログにも何回か登場しています。まず私の最も好きなバッハ作品として紹介した「ロ短調ミサ」。これは名盤です。続いて「結婚カンタータ復元コンサート」。彼の編曲についていろいろと書いていますね。あとこちらではリフキンさんをオタクのように言っていますね。そして、こちらでも彼の復元センスについて一言書いてます。
いや、これらの記事を書いた時は、まさかこんなことになるとは思っていなかったんですよ。でも、今思うと、なかなかするどいことを書いているのかもしれません。編曲、復元、バッハの語法、オタク…。
そうです、なんと、リフキンさん、1965年ころ、彼が20歳かそこらのころ、そしてビートルズがバリバリ現役のころ、こんなアルバムを出していたのでした!もうその事実だけでもビクーリだったんですけど、届いたCDを聴いて二度ビクーリ!!なんだこのクオリティーは〜!!!
やばいですよ。リフキンさん天才ですよ。もうハタチの時にはこのクオリティーですか?バロックの語法を完璧にマスターしています。いや、ホント完璧です。彼、バロック時代に生まれてたら、ぜったい音楽史に名を残す作曲家になってましたよ。だって、ここに収められている曲、ビートルズがテーマだと言うことを忘れてしまうくらい、質の高いバロックの楽曲になってるからです。ある意味完コピの逆をついてる。
管弦楽組曲やら、チェンバロによる変奏曲やら、トリオソナタやら、そして、なんとカンタータまで、もうユーモアやパロディーなんていうレベルをはるかに超えちゃって、本気で曲作りしちゃってます。いやあ、このカンタータ、バッハの真作じゃないの?いや、でも、コラールやレチタティーヴォやアリアの歌詞が「PLEASE PLEASE ME」や「HELP!」や「I'LLBE BACK」だ…(笑)。あり得ねー。
いやはや、リフキンさんにこんなキャリアがあったとはね。なんかますます好きになっちゃいました。ちなみに彼、スコット・ジョプリンのラグ・タイムやタンゴなんかも録音してるんですね。バッハオタクかと思ってたら、意外に芸域が広かった。でも、やっぱりオタク的仕事だったなあ、ビートルズ。ただ、このアルバムが発売されたのが、1965年ころですからね、ビートルズのあの曲もあの曲もあの曲も、まだこの世に生まれてなかった。中期、後期のあの名曲も料理してほしかったなあ。古楽器のバッハ・アンサンブルで実現していただけないでしょうか。非常に興味があります。お願い!
ま、とにかく下のリンク先で試聴だけでもどうぞ。あ〜、面白かった。最後はなんと「SHE LOVES YOU」「THANK YOU GIRL」「HARD DAY'S NIGHT」のクオドリベットだもんなあ…オタク道きわまれり。
Amazon The Baroque Beatles Book
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コメント
はじめまして、私もビートルズを敬愛するひとりです。
「バロック」は私も大好きですね~!
彼らの音楽は国境や人種、宗教を越えて、これからも人々を魅了していくことでしょうね!
私も今回ジョンについて記事にしました、よかったら遊びにいらして下さいね~ではまた!
(トラバさせていただきました)
投稿: ルーシー | 2006.10.10 17:38
ルーシーさん、コメントどうもです!
いやあ、ルーシーさんイラスト上手ですねえ。
すごい!
昨日はジョンの誕生日でしたので、ジョンにまつわる記事を書こうと思ったのですが、私事でうれしいことがあったので、ボツにしてしまいました。
(今日書こうかな…)
私にとってもビートルズ、特にジョンは神様です。
私の人生の何十パーセントかは彼で出来ています。
今後とも彼らを愛し続けましょうね!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.10.10 18:06