『言葉図鑑 全10巻』 五味太郎 (偕成社)
五味太郎さんのぶっとび具合については、以前こちらに書かせていただきました。はっきり言って大好きです。その五味さんの代表作の一つ言葉図鑑を親戚からいただきました。ありがたや。
「子どもと大人のための日本で初めての言葉の絵事典」というだけあって、これは本当に面白いし勉強になります。いちおう言葉を専門にしている私も、いろいろと発見させられましたし、なにしろ笑えました。さすが五味センセイ!
全10巻の内容は次のようです。
1 うごきのことば(動詞約570)
2 ようすのことば(副詞約470)
3 かざることばA(形容詞約260)
4 かざることばB(形容動詞約260)
5 つなぎのことば(助詞47)
6 くらしのことば(感動詞・接続詞など)
7 たとえのことば(比喩に使う語)
8 かくれたことば(暗示・省略などの機能)
9 しっぽのことば(助動詞と連語)
10 なまえのことば(名詞)
私たちが言語を習得していく過程を考えてみると、視覚の記憶との連合が大きな役割を果たしていることがわかります。ですから、言葉を絵で説明するという発想は昔からありました。実際、そういう事典もいくつか発売されています。外国語の学習の際にも、この方法はよく用いられますし。
しかし、この図鑑はちょっと違いますね。なにしろ五味センセイですから、一筋縄に行くわけはない。とにかくその言葉の選択と、それに対応する一つ一つの絵の面白さたるや、もうたまりません。言葉の数だけ笑いがあるわけですよ。笑いがあるということは、そこにそういうストーリーがあるということです。その物語を想像して、そして創造して笑うわけですから、当然その言葉は生きた記憶として脳に刻み込まれるわけです。子どもにとって、その教育効果は絶大でしょう。
基本的には、その物語は大人が作って子どもに聞かせてやるという形をとるでしょうね。あるいは一緒に考える。いすれにせよ、大人にとっては、ついつい忘れがちな「モノガタリ」という行為を思い出させてくれる効果があります。「モノガタリ」せずにはいられない、そう、「コト」になりそうな「モノ」の状態を提示される感じなんですね。ついつい語っちゃうわけです。これこそ、硬直化した大人たちに対する五味太郎的教育だと思います。私もかなり教育されました。
これは高校生の教材としても使えますね。今度やってみようかな。
最後に私のお気に入りの部分(の一つ)を紹介します。4巻のあるページ。絵は紹介できませんが、想像してみてください。
「どんなふうふ…」
えんまんなふうふ
おしゃれなふうふ
きちょうめんなふうふ
きみじかなふうふ
げひんなふうふ
じょうひんなふうふ
じみなふうふ
たっしゃなふうふ
ちぐはぐなふうふ
びんぼうなふうふ
ふとっぱらなふうふ
おうようなふうふ
しみったれなふうふ
いなせなふうふ
ほがらかなふうふ
ひかえめなふうふ
Amazon 言葉図鑑 全10巻
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