『もえたん3』 もえたん製作委員会 (三才ブックス)
魔法少女の帰還 Return of the Little Witch
今日は、東京デビューに向けて歌謡曲バンドの練習がありました。まあ、いつもの通り、半分は呑みですけど。
このバンドでギターを担当しているのが、マッペリのベーシストくんの兄貴です。私が最初に卒業させたクラスの生徒。そして、彼が仕事として大きくたずさわったのが、今日おススメする『もえたん』です。
練習の前に、彼から『もえたん』誕生・製作秘話などを聞き、私も大いに萌えました(笑)。いやあ、すごいな。POPさんのイラスト以外の美術は、ほとんど彼の手によるのでした。ちょっと業界裏話的な部分もありますので、多くは書けませんけれど、なるほど、こうやってこういう本が出来上がっていくのか!と、正直感動いたしました。ある意味こんなところまで、彼の手が加わっていたのかって感じ。
しっかし、一冊の本作るのって、ホント大変ですねえ。気が遠くなるような仕事です。それを短期間でやらなくてはならないんですからね、たしかに寝てるヒマないわ。
まあ、そんな内輪話抜きにしても、この本は実に面白い。面白くない人には全然面白くないでしょうけど、面白い人には死ぬほど面白い。で、私は残念ながら(?)死にそうになりました。聞けば、やはりそういう意図で製作されたと。ある種壮大なネタであると。
え〜、御存知ない方のために簡単に申しますと、表面上のコンセプトは、「萌え」という積極的な感情を利用して、消極的になりがちな英語学習を効果的に前進させよう、というものです。しかし、その内容は例えば次のようなもの。あえて日本文だけ記します。さっと開いたところ、えっと「とっさのひとこと3」か。
「ナマ言ってすみませんでした」「正直すまんかった」「燃えつきたよ…まっしろな灰にな…」「ノーマネーでフィニッシュです」「もうだめぽ」
もう、こう列挙するだけでも、引くか萌えるか、はっきり分かれると思いますよ。一般人?には、まず日本語がわからんでしょ。これらがそれぞれ絶妙な英語に訳されてるんですけど、それ以前に標準日本語訳が必要だ。このあたりのセンス、日本語、英語双方の例文のセンスはホンモノです。教え子くんの話によると、それもそのはず、日英ともかなりのオタクさんによるものだとのこと。たしかにこの絶妙のニュアンスは一朝一夕で体得できるものではない。なんて、それがある程度わかってしまう私って…。いやいや、私は(教え子くんも)自らをオタクとは認定していません。あくまでオタク世界にたずさわっているだけです(ホントか?)。
というわけで、やはりこれは壮大なネタ本であるということです。しかし、しかしですねえ、彼とマジメに語ったんですけど、これってまさに伝統的な日本文化そのものだと思うんですよ。江戸の出版事情に非常に近い。もちろん浮世絵的、つまり記号的な「萌え絵」という意味でもそうですけれど、その製作の分業具合とかですねえ、粋で洒落てるコンセプトや、不真面目と真面目の境界線上での揺れ方とか、細部の美的センスへのこだわりとか、とにかく江戸の文化そのものです。もちろん根底にあるのは、「萌え=をかし」的感情です。
で、彼にも進言したんですけど、やはりこれは欧米に打って出るべきだと。浮世絵の受容と同様に、我らのサブカルチャーが彼らのメインカルチャーに食い込む可能性は非常に高い。もうすでにそういう兆候が表れていますよね。やっぱり特にフランスで。フランス語版作るとかね。いや、あえて媚びない方が歴史に則ってるかな。
そういうような視点で読んだり、見たりすると、この本の本質的な面白さや美しさがよくわかると思います。実際、大変に美しい本だと思います。POPさんのイラストはもちろん、教え子くんの細部にわたるデザインも、正直非常に美しい。きっと百年後には「文化」として語られるでしょう。間違いなく。こんな作品にかかわれる彼に、ちょっとジェラシーを感じてしまいましたよ。
Amazon もえたん3
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コメント
初カキコです!吉田のユキです。
『もえたん』…実は読んだことがあります…
(自分で買ったわけじゃなく)
その衝撃といったら…もう爆笑でした。
それでいいのか?!と思いつつ、
なるほど、と思わされてしまう!といった感じ。
3まで出るとは、さすがです(笑)
投稿: ユキ | 2006.09.04 12:08
ユキねえさん,どうもです。
もえたん3いいよ〜!
笑えるしきれいだし、ぜひ本屋さんで見てみて下さい。
てか、ユキねえもこっちの世界がわかる人ってことね。
いいことです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.09.04 14:24
もえたん持っています!
もえたん試験の最高年齢参加者は私のはず。それらしいペンネームを見つけてくださいね。
投稿: 貧乏伯爵 | 2006.12.29 15:56
貧乏伯爵さん、さっそくどうもです!
うわ〜、もえたん試験…それも最高齢!?
さすが貧乏伯爵様であります!
ちょっと感動ですね。教え子も喜んでくれますよ。
そんな話も含めて、近いうちにゆっくり語りましょう!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.12.29 17:22