冥王星の本当の気持ち &『日本の星−星の方言集』野尻抱影(中公文庫)
世界中で大騒ぎ。冥王星の降格の件。
私たち天文ファンの間では、けっこう前から「ちょっと違わねえか?」みたいな雰囲気はあったんですよね。小さいし、軌道はへんちくりんだしね。でも、ティティウス・ボーデの法則にはあてはまってる。そっちで言えば海王星がおかしいんですよね。まあ、宇宙なんて人間の思い通りにはなりません。
今回の件も、地球人の勝手な分類によるものですから、宇宙的視野に立てば、別にどってことない事件です。ディズニーが象徴するアメリカ文化にとっては、ちょっとショックかもしれませんが。
私は知ってるんですよ。冥王星の気持ちを。正直ホッとしてますよ。辛かったんです、彼も。
「オレなんてさあ、たんなる太陽系のくずみたいなちっぽけな星だったのによ〜、アメ公の野郎がオレを見つけて、それで早とちりして惑星のチームに入れやがったんだよ。ちきしょう。それで、どんなにオレが気まずい思いをしてきたことか。みんなも分かるだろ?自分だけ素人で、あとみんなプロみたいなもんだぜ。それで9人で野球やれって言ってるようなもんだよ。もともとオレにそんな才能ないっつうの。チーム内からも疑問の声は上がってたんだ。だって、オレなんか守備範囲さえよく分からないようなもんだから、ついつい海王星の前に行っちゃったりして、はっきり言ってチームワーク乱してたんだよ。そのたびに、いろいろ言われてさあ。まじ辛かったよ。ようやく、肩の荷が下りた。長かったなあ。手違いで76年だぜ。参ったなあ。オレをスカウトしたアメ公たちは、まだブーブー言ってるけどな。逆に損害賠償請求したいところだよ。もう、とにかくほっといてくれ。しばらく休みたいんだ。いやあ、いやな予感はしてたんだよね。日本でさあ、野尻抱影のおっちゃんが、オレに『冥王星』なんて縁起でもねえ名前つけやがって。なんで『天』『海』と来て『冥』なんだよ。ブツブツ…とにかく『降格』とか言うなよ!降格なんて言うと、なんかオレの努力不足みたいじゃねえか。ようやく当然のポジションに落ち着けるんだから」
なるほどねえ、やっと分相応の矮小惑星の称号を戴けるわけですからね。ホントご苦労様でした。まあ、冤罪裁判で無罪になったようなもんか。大変でした。
というわけで、ぜひ彼の気持ちも察しやってほしいところですが、彼の談話の中に出てきた野尻抱影さん、私にとっては「星学」の師であります。天文学ではなくて星学。野尻さんが傾倒した星の民俗や方言、神話などの研究は、ほとんど彼の創始にして、彼で完結しています。そして名文家。山梨にもゆかりがある。
小学生のころ、師の本を読みまくりました。そんな中から、星に対してはもちろん、方言を中心とする言語や民俗学にも興味を持ったのだと思います。素晴らしい著書ばかりですよ。
野尻さんは、作家大佛次郎さんのお兄さんです。大佛さんもけっこう星好きだったとか。また、それ以上に猫好きとして知られています。かなりの猫狂いのようで、私はそのあたりに共感します。そんなわけで、この兄弟は私にとって非常に重要な存在です。
今日は、野尻抱影さんの著書のうちこの本を紹介しておきましょう。文句なくいい本です。そんな野尻さん、どんな意図で「冥王星」という名づけをなさったのでしょう。もしかすると、プルートの悲運を予感しての命名だったのかもしれません。そんな気もします。
あっ、ちょっと蛇足になりますけど、野尻さんの本に刺激を受けて、中学の時作った俳句を思い出した。「みつり」というのは、オリオン座の三つ星の和名の一つです。
はざのまにてらしてひくしみつりかな
(稲架の間に照らして低し三連りかな)
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コメント
こんばんわ。
そうか、そうだったのか、冥王星のホントの気持ち。(笑)
スマン、そうとは知らず、今回の秋の除目、すっかり恨みをのんで怨霊になっているかと思っておりました。
もう決して「降格」「降格」とは申しません。(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2006.08.27 21:06
かわうそ亭ご主人様、どうもです。
ああ、秋の除目ですねえ。
左遷されて安心する方もいらっしゃるわけです。
もう、そっとしておきましょうよ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.08.27 21:27