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2006.08.07

平次原風穴(鳴沢村)

Heijibara 今日は某国営放送のテレビ取材を受けました。実際放映されるかどうかはわかりませんので、詳しい内容については、放映された日に書きたいと思います。番組名などは放映されることが決まったら告知します(めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど)。
 で、その取材の一つの目的が、この「平次原風穴」でした。この風穴は、今から19年前に富士北麓の鳴沢村で発見された、日本で105番目の溶岩洞穴です。ちなみにその発見者というか、発見にあたって測量や調査をしたのが、どういうわけか私であったのです。
 細かく話すと長くなってしまいますので、ごく簡単に申しますと、私の奉職する学校の野球部の室内練習場を建築した際、工事の最中にいきなりドッカンと地面に穴が空いたんです。で、当時「穴マニア?」として認識されていた新人の私に、校長先生から「工事の人たちは危ないから埋めると言ってるんだけど、とりあえず見てこい」との至上命令が下ったのでした。私は実際穴マニアだったので、当然大興奮。新発見に立ち合えるというのもありましたけれど、それ以上にマニアの頭の中は、それこそマニアックな妄想で大爆発していたのでした。
 と言いますのは、その練習場は、青木ケ原溶岩流ではなく、鳴沢溶岩流の上に建築されていたからです。マニアの頭にはそういうマニアックな地図がインプットされてるんですよ(笑)。で、その鳴沢溶岩流だと、なぜに大興奮かと言うとですねえ、えっと、それまで発見されていた、いわゆる有名な洞穴は、みんな青木ケ原溶岩流の上というか中にあるんですね。それは864年の貞観の噴火の際に流れ出した溶岩流なんです。今から1140年くらい前のもの。一方ですねえ、その鳴沢溶岩流は今から5000年くらい前のものだと推定されていたんです。だからめっちゃ古くて貴重である可能性が高かったんです。富士北麓ではその時代の洞穴は全く発見されていませんでしたので。そりゃあ大興奮ですよ。
 それで、さっそくすっ飛んで行ってみましたら、まあ予想通りだったわけです。私の見立てではね。それでも、もう工事の人たちは埋める算段をしている。これはなんとか阻止しなくちゃ!ということで、私は火山洞窟学会の当時の会長さんであった故小川孝徳先生にいきなり電話しちゃったんです。私のような頼りない若造の言では、工事の猛者たちを止めることはできない。
 数時間後、小川先生はお弟子さん一人を連れて、すっ飛んで来ました。マニアの行動力はすごい。私も負けじと大学時代のケービング仲間を呼びつけ、結果4人の穴マニアがそこに集合したというわけです。さあ入洞開始…いや、実は私は彼らの到着の前に半分くらい潜っていたのでした。本当は単独入洞などもってのほか、特に新しい洞穴はどんな危険が待っているかわかりません。でも、そんな、新しい(しかし古い!)穴を目の前に、マニアが我慢できるわけないじゃないですかあ。だって、人類史上初めて入るんですよ(たぶん。もしかすると縄文人は入ったかもしれないけど)!!
 というわけで、数日かけまして、4人でいろいろと測量やら調査やらしました。だいたい私の見立てどおりの、大変貴重な風穴であることがわかり、パラレルラインという美しい紋様や新種の生物も発見されたりして、学会でも大きな話題になりました。そして、その土地の字名を取って、「平次原風穴」と名づけられたのでした。結果、めでたしめでたし、この穴は埋められることなく、逆に崩落の危険のある箇所に補強の工事までしていただき、さらには、室内練習場の中から入洞できるように立派な入り口まで作っていただけたのでした。猛者さんたちありがとう。
 本当にたまたま私がその年の春に就職したから、無事こうして保存されたわけでして、不思議な縁を感じます。また、私にとっても、学術的な調査をさせていただく機会を得たり、また、盗掘屋(高値で取引きされる溶岩などを狙うヤカラ)や興味本位で入洞する人々から穴を守るために、現地に寝泊まりしたりして、本当に貴重な経験をさせていただきました。
 ま、そんなわけで、私にとっては非常に愛着のある風穴なのであります。なんとなく自分の穴だと勝手に思ってたりしてね。実際、ある意味有名になったのちも、入り口が室内にあるために自由に入ることができず、幻の洞穴とも言われてましたし。
 で、今日はそこにテレビカメラが初めて入ったというわけです。私も久しぶりに、最奥部まで入りました。本当に神秘的ですし、美しかった。自然の芸術ですよね。みなさんがよく入る青木ケ原の洞穴とは全く違った雰囲気です。やはり5000年の時を経てますからね。それなりの風情というか風格があるんですよ。
 今日は、安全のことも考えて火山洞窟学会の方々にも一緒に入っていただきましたが、皆さんもかなり満足されたようです。なんとなく嬉しいような、自慢したいような(笑)。自分の息子、いや娘か、いずれにせよ子ども(5000歳だけどね)をほめてもらったような。
 いやあ、人生いろいろ楽しいですなあ。新しい御縁もできましたし。ありがたや、ありがたや。めでたくテレビ放映された際には皆さんもぜひ御覧下さい(とは言っても山梨のローカルですけど)。

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コメント

こんにちは!
学校在職中、1度だけ入り口を見せてもらったことがありますが、そんなにすごいものとは知りませんでした。
なんと言っていいか分かりませんが、とても夢があって良いなとおもいます。とにかくおめでとうございます。

投稿: Kobayashi | 2006.08.08 20:35

Kobayashiさん、こんばんは。
そうなんですよ。
実は貴重なものなのでした。
あのタイプのパラレルラインは世界で2例目とか。
本当に不思議な縁でした。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.08.08 22:05

えっ!!そんな貴重な洞窟だったんですか?
当時、先生が興奮して話してたのは記憶にあるんですけど。今度、入り口だけでも見せてほしいなぁ。

投稿: hw | 2006.08.09 01:50

そう、実はそうだったんだよ。
みんなに見せたいのはやまやまなんだけど、
入り口の場所が場所だし、危険もあるので、
私の一存では「いいよ〜」とは言えないのでした。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.08.09 07:57

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