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2006.07.07

自分探しの旅に出よう!?

Hide112 今日は七夕。年に一回、本当の自分に出会える日…なんちゃって。
 そうそう、今週のサラリーマンNEO冒頭のNEOエクスプレス、実にタイムリーでしたよね。「世界初 自分探しの旅に成功!」という話題でした。あるOLが「自分探し」の旅に出て、モルドバの田舎町で奇跡的に「自分」を見つけたという(ウソ)ニュースでした。報道夫キャスターの不審そうな表情、「なんにも見つけてないんじゃないですか?」というツッコミ、それに対する容赦ないネオミ嬢の「つまらない人間」攻撃…。非常に面白かったし、なにしろ超タイムリーでした。
 というのは、あの放送日の前日、「自分探し」の旅に出た人がいたからです。そう、中田英寿さんですね。みなさんはヒデのあの文章を読んでどう思われましたか?
 多くの方が、感動した、とおっしゃってました。多くの学校の先生がプリントアウトして生徒に配り、感想を書かせたとか。生徒はどんな感想を書いたんでしょう。教科書会社も飛びついたらしいし。
 まあ人が感動することに対してとやかく言うつもりはないんですけどね(以前、感動禁止!に対してこんな苦言を呈してますし)。なんか違和感があったんですよ、私は。
 いや、ヒデの文章は非常に良かった。いい文章ですし、いろいろなことを考えさせられる重みのあるものでしたよ。だからまあ感じて動かされるという意味では感動だったのかもしれない。では、どっちに動かされたかというと、私はいわゆる「よし!オレも頑張るぞ」とか「オレも本来の自分を探すぞ!」とか、そんな方向じゃないんですよね。
 NEOエクスプレスでも言ってましたけど、たいがいの「自分探しの旅」は「観光旅行」で終わってしまう。いや、たいがいではなくて全てでしょう。だからああいう揶揄ニュースを作ったわけですよね。我々凡人が考える「自分探し」なんてのは、そんなもんです。
 たしかに日常から逃避することによって、何か違う風景は見えるでしょう。でも、仮にそこで「自分らしきもの」を見つけたとして、旅から帰り再び日常に戻ってしまうと、まあせいぜい「夢はあるのに努力しないだらしない自分」という、再発見したくもない自分にまたまた出会っちゃうことになる。
 つまり、こういうことなんですよ。私たち凡人は、「宝探し」に行っちゃうんですよ。元々手元になかった「自分」…なんかとっても美しく輝いているらしい宝物のようなモノ…を探しに旅に出ようとする。そんなもん、モルドバにも落ちてませんよ(笑)。埋蔵金を探すより、地道に働いた方がたぶんもうかります。
 でも中田は違うわけです。彼は自分の築き上げた財産がいろいろな事情で収拾つかなくなっちゃったんですよ。遺失物を探しに行くんです。もともと自分のものですから、当然探す権利もありますし、見つけたら自分のものにしていいでしょう。だから彼が「自分探し」と言うのには何の異論もありません。
 私は彼の文章を読んで、実に痛々しく感じました。そして反省すらしてしまいました。なぜなら、彼の築き上げた「自分」を勝手に消費して、勝手に散らかしてしまったのは、ほかでもない私たちなのですから。彼が背負った他人の「期待」や「失望」がどれほど膨大なものであったか。才能も努力も反省もない多くの凡人たちが、彼によってたかって、その財宝を荒らしまくったわけですよ。そのことに気づいた時、そう簡単に「感動した!」なんて言えない自分(つまり日常のだらしない自分ね)を再発見してしてしまったんです、私は。
 私は教室で生徒に「中田もこんなに悩んで苦しんで自分探しをしてるんだ。みんなも頑張れ!」なんてとても言えませんよ(笑)。それこそNEOと同じノリでなら言えるけど。
 ただ、気をつけなくてはならないのは、中田の築き上げた「自分」というのも、結局は他人の評価によって、他人との関係によって、固成されたものだということです。養老孟司さんも言ってましたが、本来「自分」なんてものはない。全ては縁によって生起し、変化し、消滅していくもの。絶対的な自己、アイデンティティーとかいうものは、実にわがままな幻想だし、それこそ都合のよいフィクションであると思います。
 「自分を捨てる旅」「無我・空を探す旅」だったら出てもいいかなって思うこの頃の私です。仏陀への道は遠いか。
 今日は、こちらの記事にコメントしてくださったお二人の意見にインスパイアされて、こんなことを思いました。お二人に感謝します。そう、こうして誰かのおかげで「自分らしきもの」が生起する。やっぱりね。

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コメント

こんにちは。
私は最近の感動症候群の日本に少し疑問を持ってるほうです。特にスポーツは何でもかんでも泣かす!(笑) 
以前は歌謡賞のTV番組だったような。。。
中田英寿は以前から好きでしたが、あの文にはTVで報道されてるような感想は浮かびませんでした。
少々こそばいと言うか、優等生ですよね。
野茂秀雄ならどう書くだろうと考えましたね。
中田英寿だからOKのような気もします。
自分探しなんか彼のような賢い人なら、サッカーしながらでも十分出来てるんじゃない?探さなくてもそこにあるのが自分そのものです。私のような一般ピープル(凡人)は逆に隠れた才能がまだあるかも(笑)。だって毎日同じ事の繰り返しで他の才能がある何なんて感じてる暇ないですもの。(笑)
学校でもクラブの掛け持ちなんて皆目無理だったとき、私は先生にアメリカのようにシーズン制にして!と言ったことがありました。短い学生生活の間に自分が何に向いてるかを知るにはアメリカ式が良いと13歳の頃に思ってたのでした。
ところが日本人は一つに集中する事がお好き!
二兎を追う者は一兎をも得ず、ということでしょうね。
それでこの年までいくつかのスポーツを体験してきましたが、どれもあまり才能はございませんでした(笑)。結局学校の先生は正しかった?あの時掛け持ちしてたら息切れして両方やめてたかな。。。と言う事でひとつをやり遂げたら中田君のように次ぎへ自分探しがいいのかも。
何を書いているのかさっぱりわからなくなってきました(笑)。
でも、埋蔵金を探すより地道に行くほうがいいと私も感じる近頃です。こうして富士山蘊恥庵庵主さにお出会い?できたことは私が超苦手な文章を書く意欲を引き出させていただいてる宝だと思って感謝しています。
長々と主旨から外れた内容で失礼いたしました。

投稿: あんりまー | 2006.07.08 17:57

あんりまーさん、こんばんは。コメントありがとうございました。
いやあ、私もみなさんに刺激されて毎日書いてるようなものですからね。
そう、凡人は凡人どうし協力しあって行きましょうよ。
私もあれもこれもタイプでして、結局何一つ大成していません。
このブログもそんな感じですね。
でも、楽しくて仕方ないですよ。
いろいろやっているとホント出会いが多いんです。
それで自分の想定外の楽しみまで舞い込んでくる。
幸せです。
よく思います。このエネルギーと時間を一つのことに費やしていたら、もしかすると歴史に残る天才になったかもしれないって(笑)。
でも、それは性格上無理です。
もう、最近ではこれが自分なのかなって思うんです。
こうやっていろんな人とかかわって、いろんな人の世話になって、ちゃっかり楽しませていただく。
それで充分なような気がします。
というわけで、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.07.08 20:22

はい。
というわけで、インスパイアしてしまった一人です。(笑)

ふと思い出したのが「ぼくときみ」って歌。(NHK教育、おかあさんといっしょよりw)

ぼくときみはちがうから
きみをすきになるのかな?
ぼくときみはちがうから
みんなをすきになるんだね


これって当たり前のことなんですよね。
これが個性ってやつなワケで。
とかく個性というと、勉強が得意だったり、スポーツが得意だったり、面白かったりって陽な部分だけを捉えてしまいがちですが、
おとなしくて引っ込み思案だったり、暗くて付き合いにくかったりっていう陰の部分も個性なわけですな。

たまたま中田はみんなに認められるような、陽の個性を持っていた。
でもそれは、突き詰めていけば、ちょっと人と違っていたってことなんですよね。

違いが明確になることで、みんな好きになる。

それが自分を認めることになり、自分を認めてもらうことになる。

中田には違いってものを明確にしてもらったし、
おかげで自分を見せてもらったのでしょう。

どんぐりの背比べであっても、違いは違いなわけで。

違いがわかれば、自分がわかる。

結局、みんな他人様が居ないと生きていけないのですよ。(笑)

というわけで、今後ともよろしくお願いします。

投稿: たこたよ | 2006.07.13 18:10

そうそう、オンリーワンなんて当たり前のことなんですよね。
みんな同じとか平等とか気味悪いっすよ。
ところで、BOSCHですか?

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.07.13 18:41

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