『忘れえぬことば』 大村はま (小学館)
今日は恩師大村はま先生の100回目のお誕生日です。本当に残念ながら、先生は昨年4月に天に召されました。1年以上経った今でも、本当に本当に残念でなりません。あれだけのことを学ばせていただき、そして自分の今の人生の基礎を築いていただいたにもかかわらず、私はいったいどれだけの恩返しが出来ているのでしょう。直接お会いして御礼を述べる機会は、永遠に失われてしまいました。そして、それもそうなんですが、ある意味それ以上に、国語教師としての私の有りように情けないものを感じてしまうのでした。恐れ多くも大村先生と同じ仕事を志したものの、あまりに中途半端で不甲斐ない自己の姿に、思わず顔を隠してしまいたくなるのです。恩返しどころか失礼なことをしているのでは。
しかし、最後に先生にお会いした時(私は大学生でした)にいただいた言葉、「普通のつまらない国語の先生になっちゃダメよ」は、今でも毎日肝に銘じているつもりです。その言いつけだけは守りたい。この言葉は、私にとっての「忘れえぬことば」となっています。
そして、大村先生にとってのいくつかの「忘れえぬことば」と、そのエピソードが語られているのが、こちらの本&DVDです。これは2004年の白寿記念講演会の模様を記録したものです。2004年秋のこの講演が、大きな会場での最後の講演になったと聞いています。しかし、お亡くなりになる数ヶ月前とは思えないほど、実に矍鑠とした、そして力強い大村先生の言葉が、ここには記録されておりました。
四半世紀前、中学校の図書室での、あの言葉の響きそのままです。先生のお声とお姿に接し、本当に当時のいろいろな瞬間がよみがえってきました。あの緊張感。心地よい緊張感。一言も漏らすまいとする、若い私の心の張りのようなもの。自然と背筋も伸びます。
DVDを見終わり、そして本を読み終えた私の胸に去来したものについては、とてもここで一言では表現できません。ただ、それらが、私にとって最高の励ましであったことは確かです。「しっかりしなさい」と。
私は、大村先生が私だけに与えてくださった、あの「忘れえぬことば」の、深く豊かな意味をもう一度考えながら、自分なりに国語教師の道を歩んでいきたいと思います。
今日はお誕生日。きっと多くの教え子たちの祝福を受けていることでしょう。私からも一言、「大村先生、百歳のお誕生日おめでとうございます」
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