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2006.06.21

「うざい」「むかつく」…生徒の言葉遣い指導へ!?

Yyu 笑えるニュースですね。なかなかやるな我が山梨県教育委員会!でも、あんまり身内をほめると怒られるので自重します。まあ、元はと言えば文科省の音頭に躍らされているわけでして、他の県でも似たようなことやってますね。山梨県はどちらかというと踊りの輪に入るのが遅れてたんですよ。
 というわけで、あんまり露骨にほめるのはやめて、日本人得意の婉曲法で行きます。
 正しい日本語、乱れた日本語という考え方については、こちらに書きましたのでお読み下さい。で、「うざい」とか「むかつく」とか、そういう罵倒語ですけれど、日本語は比較的少ない方だと思います。それでもこういうマイナスの感情を表す語は当然昔からありました。その表現の実際も、今とそれほど変わりません。ほら、こちらをご覧下さい。ね?全然、理由とか言ってないでしょ。「あいつムカツク〜」「あいつもウゼ〜」って言ってるだけです。
 プラスの感情の言葉でもありますね。枕草子の冒頭なんかも「萌え」てばかりいる。「をかし」ですね。理由なんかない。短絡している。「雁などのつらねたるが、いとちひさく見ゆるは、いとをかし」なんてかな〜り乱れてますねえ。「…ちょーちっちゃく見えるのなんか、ちょーカワイイ!」って言ってるんですから。
 だいたい、「あなたのこれこれこういうところがこういう理由で私に不快感を与えて非常に鬱陶しいので私の前から立ち去って下さい」って言う方がずっと酷い。私はいつも思うんですよね。なんでも「コト」のせいにするのは簡単だって。「コト」の代表格「ことば」を矯正したり強制したりしても、その奥底にある得体の知れない、それこそ得も言われぬ、言葉にならない、筆舌に尽くしがたい「モノ」に対峙したり、あるいはその「モノ」を退治したりすることはできないんです。
 「むかつく」は「胃がむかむかする」というのが原義ですから、まあ不快感の比喩的表現です。そして「萌え」がある種の語感をもってある種の感情と不離の関係になったのと同様、「むかつく」の「わきあがる」イメージが、心に「モノ」の生まれる感覚とぴたり合った。ですからこうして世に定着するのはしかるべきことです。
 「うざい」は多摩方言「うざったい」の短縮形。「うざったい」の「うざ」は「うじゃうじゃ」ですかね。あるいは「むさい」かもしれない。江戸時代けっこう流行ってましたから。「む」が「う」になるのはよくあることですし。
 それぞれ由緒ある言葉なんですよ。そうした素性も考えず単に言葉狩りに走るなら、そのうち言葉の逆襲にあいますよ。てか、そんな狩りじゃあ捕まえきれないくらい日本の地に定着して繁殖してるか。
 私も仕事柄生徒によく「むかつく」とか「うざい」とか言われます。でも、それはありがたいことに「笑顔」を伴っているんですね。で、こっちも言われて笑ってます。罵倒語は定着するとこのような用法も現れてくるんです。非常に親密なコミュニケーションのための手段になりうるんですね。そういう点も見えなくなってしまうのは、もう病気です。原理主義です。私はそういうのが大嫌いです。むかつきます。
 さきほど「うざったい」は多摩方言と書きましたが、一説にはこちら富士北麓の方言が富士講経由で江戸に流出したとも言われてたような。もしそうだとすると…ますます面白い事態ですね。教育委員会さんもよく勉強された方がよろしいかと。
 こうしているうちに当地の方言についていろいろと書きたくなってきました。明日書こうかな。では、今日はこのへんでやめときます、怒られるんで。

この件に関する清少納言さんのコメント

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コメント

言葉の乱れに対する指導パンフレット・・・。お役所のやる事はすごいですね。内容に興味深々です。たぶんその指導に対して「ウザイ」って言われそうな感じがするのは私だけ?内容が変わりますが最近ニュースで気になった事を1つ。ニート・フリーター問題で国が指導施設作ったの先生知ってます?指導は親もにですって。子どもは働きたくても外に中々出ることが出来ないですって。しかもその施設にギターが置いてるんです!何に使うの?「みんなで歌でも歌うのかなぁ」って妻の天然突っ込み。税金が・・・って感想でした。

投稿: もりやま | 2006.06.22 12:32

まったくねえ、立派なもんです。
ジョブカフェとか自立塾とかですかね。
ギターっていうのが実にいいですねえ。
みんなでビートルズを唄うのもありかと。
乱れた日本語にせよ、ニートにせよ、はじめに言葉ありきで、
それが流行して事実のような気分になるんですよね。
そういうのに流される大衆にはなりたくありませんなあ。
不思議な世の中ですよ。
せめて学校ではちゃんとした視点を教えていきたいのに、
世の先生方は…。トホホです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.22 13:43

こんにちは!
「うざい」という言葉を見て、私は中学生の頃のことを思い出しました。
中学入学と同時に、富士吉田から八王子に移り、初日に同級生に話しかけられ、訛り丸出しの答えを返したら、とても笑われた事などを思い出しました。
同級生の話している言葉で、最初に全く意味が分からなかったのが、「うざってー」、「ひゃっこい」、「おちょくる」でした。
「ひゃっこい」は「冷やっこい」ということが分かりましたが、「おちょくる」がどうして「ばかにする」という意味なのか、今も知りません。
ブログの内容とは直接関係のないコメントになりましたが、ちょっと住んでいる場所が離れただけでも、言葉が通じにくくなり、不便でもあり、面白くもあるなと感じていたような、いなかったような中学生時代でした。
もう一つ、方言かどうか分かりませんが、小学生の頃、地元ではよく、「でっきゃーバカ」とか、それを略して「でっきゃー」、あるいは「でっきゃーポン」などといいましたが、姪に聞くと、今は使われていないといっていました。今は普通に「おおばか」だといっていました。


投稿: kobayashi | 2006.06.22 20:40

kobayashiさん、おひさしぶりです。
なるほどねえ。所変わればですね。
おちょくるはけっこう全国区だと思います。
どちらかというと関西系だったような記憶が。
最近学校でも方言が急速に廃れています。
でっきゃーとかでっけーとか言う生徒はほとんどいません。
巨大なバカって、けっこう好きだったんですけどね。
なんか淋しいですよ。
「〜ちょ」とかも聞かなくなりましたね。
「べえ」や「ずら」さえも使用頻度が減りました。
あと、一時期河口湖を中心にはやったvery muchの意味の「しか」もほとんど絶滅しました。
方言にも流行があるんです。
そういえばkobayashiさんはきれいな標準語ですね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.22 21:22

はじめまして。
単語で複雑な感情が表現できるというのはある意味では洗練されているのだと考えます。ある子が「むかつく」と言い、ソレを周りが理解するときはその後ろにあるもろもろの感情もある程度理解しているわけなんだと思います。
まぁ、ソレをさして閉鎖的だということもできますが、割と日本人は隠語とか符丁の好きな文化の中で生きているのでは……と思います。
そういった言葉が変わっていくのはある意味では当然のことではないかと思います。時と場合に合わせて使い分けられるようになれば、ソレはそれで本人にとっては有益だろうとは思うのですが。
……役所の中の人がこういうことを言っては遺憾のかしら(笑)
個人的には最近仕事でボランティアに行かれる中高生さんの感想文を拝見することがあったのですが、字の癖が気になります。なんというかいまどきの女の子(ボランティアに参加する子は女子が多いですねぇ、はい)の字で、わざとだろうとは思うのですが、あまり字が綺麗でない自分としては、先々困らないといいがと、余計なお世話に思い至ります。

投稿: tomo1y | 2006.06.22 22:06

tomo1yさん、コメントありがとうございました。
そのとおりだと思います。
子どもたちは意外にTPOをわきまえてますよ。
メールやBBSなんかで、空気を読むクセがついているようです。
しかし、たしかに字については使い分けができてませんね。
そのへんの指導は私たちがすべきなんでしょう。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.23 05:35

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